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起死回生

個人的な理由で投稿を控えていました。音沙汰なく申し訳ございません。

 原動室へとサラの記憶を便りにジンとホルスは迎え出るドローンを対処しながら進んでいた。

「無理はするな」

 心配してジンに声をかけるホルスだが、返ってくる言葉もなく首を竦めた。

 光線により貫かれた左腕の流血を抑えているとはいえジンの顔色は悪い。それなのにホルスと共にドローンを撃ち落としているのだ。左腕に力が入らないが右腕は動かせる。有無を聞く前に勝手にやっているのだ。

 やるなとも言えないし言える状況ではない。仮に言ったところで聞かない事を知るホルスはジンが無茶をしないように心がけていた。

 ホルスならこれだけでいい。

「ジンさん、絶対に無茶はしないでください!」

「だから分かっていると言っただろ」

 サラはそうはいかない。

 自分のせいでジンが負傷した事に責任を感じているのだ。しかも、負傷しているのにドローンを対処していて自身は何も出来ないでいる。全てを2人に任せてしまっているためになおさら責任を感じている。

 だから、ジンがドローンを撃ち落とす度に声をかけている。

 最初は反応を示さなかったジンだが何度も心配を口にする言葉をかけられては答えない訳にはいかない。それが何度も繰り返している。

 その様子にホルスは現在の状況に不謹慎と感じながらもやり取りをおもしろいと思っていた。

 ふと、ジンが鋭い視線をホルスに向けた。

 その視線を感じたホルスは視線を剃らして何も考えていないとポーズを取った。内心では悟られていると思いながら。

「とにかく、先を急ごう」

 まだジンからの視線を感じたホルスは原動室へと促した。

 その道すがらサラは背を向けて歩き出したジンを見て自身の無力感を感じていた。視線は背から腕や腰のホルスターに納められている銃へと移っていた。


 何も出来ずに無力感を感じているのには理由がある。

 サラにはガーディアンに対抗する手段がない。唯一、コロニーについての知識が2人よりもあるだけで力が殆どないと言ってもいい。

 ガーディアンに対抗するのは元より、自身の身を守る手段がないのだ。今回もドローンの対抗をジンとホルスに任せてしまっている。責任を感じるよりも無力を感じている方が強いのである。

「ぼさっとするな!」

 ジンの突然の叫びにサラは何事かといつの間にかうつ向いていた顔を上げた。それと同時に二発の銃声が響いた。

 顔を上げて目にしたのは、ガーディアン4体の内1体が撃ち落とされ、3体が光線を放ちながら近づいて来ていた。

 後方から近づいてきていたガーディアンは殿をしていたジンに気づかれ、サラがうつ向いて考えている時にホルスに声をかけて同時に発砲。1体を撃ち落とす事に成功はしたが残り3体が隠れる場所も逃げる場所もない中で容赦なく撃ってきていて今に至る。


 3体から放たれる光線を避けながらホルスが苦しい表情で呟いた。

「まずいな……」

 呟いた先は進行方向。そこから新にドローンが2体迫って来ていた。

 退くにも退けない。進むにも進めない。全て撃ち落とすしかない。

「とりあえず、こっち頼めるか?」

「何故だ?」

 サラを庇いながら避けるジンが言葉の意味を尋ねた。

「こっちの方が数が少ない。多い方は俺がやる」

「お前がやれ」

「怪我してるジンに多く相手させるわけにいかないだろ!」

「なかなか撃ち落とせないのに無理してやろうとするな。現に、俺が撃たなければ落ちなかった!」

「ああ、ジンが撃たなかったら打ってた」

 その言葉に目前のドローンに弾丸を撃ち込んでいたジンの表情が強ばった。

 結局、話の最中にお互い目前のドローン、ジンは後方、ホルスは前方のドローンを対処する事になっていた。

「壊す気か?」

「壊すつもりはない。もし壊れたら余興って事で」

「《壊し屋》……」

「《壊し屋》違う!《芸能人(エンターテイナー)》だ!」

 余裕ではないが余裕そうなやり取りをするジンとホルス。そんな中でジンが早くも1体撃ち落とした。

 サラは撃つ(・ ・)、壊すが何故余興なのか分からず頭に「?」を浮かべていた。

「そもそも、ジンがそれ軽く口に出していいのか?あの人の二つ名だろ?」

「お前が壊しすぎているからだ。言われたくなければ壊すな」

「それは壊れなくなった時に言ってくれ!」

 そう言ってホルスも1体撃ち落とした。これで前方1体、後方2体、計3体になった。

 一方で、サラは何を壊す、壊さないのか分からず頭に更に「?」を浮かべていた。

 そんな事を考えているいると、ジンが対処しているガーディアンの1体が光線を放とうとしているのに気づいた。ジンは別のガーディアンに対処していて気づいていない。

 声をかけては間に合わない。そう悟ったサラはジンの腰に掛けられているホルスターに手を伸ばし、銃を引き抜いた。

「おい!」

 突然違和感を感じたジンが見たのはサラがホルスターから銃を引き抜いているところだった。

 驚いて声を上げるも、サラが行った動作があまりにも滑らかすぎて次に出る言葉が出なくなった。

 サラは急いで握った銃は思った以上に重いと感じた。

 だが、感想をよそに両手で銃を握るとガーディアンに狙いを定め、引き金を引いた。

「きゃ!」

 バーンという音と共にサラが短い悲鳴を上げた。

 発砲した際の反動が大きくたたらを踏み尻餅をついてそのまま後へ転倒した。

 サラが放った弾丸は見事に光線を放とうとしていたガーディアンに命中して落ちた。が、命中したタイミングとほぼ同じくしてドローンが置き土産と言いたいように光線を放っていた。

 放たれた光線は尻餅をつこうとしていたサラの頭上を過ぎホルスが対処していたドローンを撃ち抜いた。

 一部始終を見ていたジンは呆然と立ち尽くしてしまった。

 一方のホルスはジンに声をかけようとしたが、ドローンが1体残っているのに気づいてライフルの引き金を引いた。

 その発砲音に正気に戻ったジンだが、ホルスはライフルの持ち手を柄から砲身に掴み直しながら先程撃って落ちようとしているドローンへかけだし、そして、

「そおい!」

 いい音と悪い音両方を響かせながらドローンを遠くに打ち飛ばした。

「よっしゃ!」

 そして、ガッツポーズをとった。右手に折れたライフルを持ちながら。

 その時、両方に銃を握ったまま倒れていたサラがそのままの体制で口を開いた。

「撃てました……」

「え!?さっきのサラちゃん撃ったのか?初めて撃って撃ち落とすってどうなんだ?」

「お前、やっぱりライフル壊したな!!」

 呆然と呟いたサラの台詞に反応するホルス。そのホルスに予想通りの行動をした事に突っ込むジン。

「それは余興って言っただろ?」

「余興じゃねえ、迷惑だ!」

 反省の様子を見せないホルスに更に突っ込んだ。


 サラは起き上がると折れたライフルの被筒(ハンドガード)を手に取り観察を始めた。恐らく銃身は熱いから。

「ただの筒?」

 銃身の中を覗き込くと至って普通の筒であった。サラは今思い出せる知識を思い浮かべた。

(確か昔の銃身の中は弾道を安定させる為に螺旋状に溝が刻まれていたはず)

 いわゆるジャイロ効果と言う物体が自転運動をする事で姿勢を乱されにくくする現象である。

 だが、ホルスが使用しているライフルの銃身にはジャイロ効果を利用する為の螺旋が刻まれていない。

(もしかして!)

 ある事に気づきジンから拝借した銃の銃身を覗き込んだ。

「おい」

 そんなサラからジンは銃を取り上げた。

「自分を撃つ気か!」

 危ない行為をしたサラに一喝した。


 銃には弾丸が誤って発射されないように安全装置(セイフティー)が備わっているのだが、殆どの探求者(ハンター)は一度ドローンに会うか弾丸を補充する時に安全装置を全て外した状態で移動をしている。

 ジンも例外ではない。いちいち安全装置を外してから撃っていてはその時間(ロスタイム)がもったいないと言うのが探求者共通の考えである。

 だからと言うべきか、サラがジンの銃を拝借してドローンに撃つ事が出来たのはそのためである。

 言ってしまってはなんだが、今回は完全にジンのミスであるが、現状はいい方向へと向かった。


「ジンさん、ジンさんが使っている銃身の中には螺旋状の溝は刻まれていますか?」

 全く反省の色を示さずにジンに尋ねるサラ。

 人の話を聞いているのか?と言う表情をしばらく向けていたがホルスへと顔を向けた。ホルスは首傾げた。2人供意味が分からないらしい。

「とりあえず、それ後でいいか?」

「あ、はい」

 まだ追及しそうなサラにホルスは先に向かう為に一声かけた。

「そうだジン、ジンのライフル……」

「どのみち使うつもりはねえ」

 そう言ってずっと肩にかけたままだった支給品のライフルを渡した。ホルスが自身のライフルを壊した時に持って来ていたのだ。これでやっと肩が軽くなったという気持ちだ。

「よし、次使う時はこっちで……」

「壊すつもりだな!!」

 意気揚々と呟くホルスにジンは間髪入れずに突っ込んだ。

 一方で、サラはライフルの銃身を観察した結果を独自にまとめていた。

(銃の穴が大きくて溝がない。これって狙いを定めても当たらないかもしれないって事ですよね?それに、遠くにも飛ばないはず……もしそうなら、ジンさんの銃も同じなのでは?)

 ジンが取り上げた事でよく見ていない事もそうだが、銃身の穴が小さくよく見えなかった。だが、銃とライフルの銃身が同じなのではと考えていた。

(ジンさんとホルスさんの銃で数発撃ってようやく止まる。もしこのまま原動室へ行けても弾切れになるのでは?)

 不安がよぎる。2人が所有する弾丸がどのくらいか分からないが仮に尽きたとしたらメインコントロールルームに行けなくなる。

 前回、ジンと脱出する時、あの時は気づかなかったが今と様子がおかしかった事を思い出す。もしかしたら弾丸が尽きかけていたのではと思いつく。

「行くぞ」

 一悶着の後、一応の決着がついたジンがサラに声をかけた。

 このままではいけない。サラはホルスとジンの後を歩きながら案内の他に何が出来るのか考え始めた。


 知識。コロニーに関する事。ガーディアンに関する事。違う。重要度が低い。

 今必要なものは何かと必死に考える。


 その様子に気づいていないジンはサラが銃を撃った時の事を思い出していた。

「どうしたんだ?」

 何か考えていると感じたホルスがジンに尋ねた。

「あいつが銃を撃った時を考えていた」

「ああそれ。驚いたな。声が聞こえた時は撃たれたかって思ったけどジンの銃で逆に撃っていたとは思わなかったな」

「流れが自然だった」

「……は?」

 ジンが意味するのがよく分からない目を丸くしてホルスは説明を求めた。

「あいつは、銃を持った事があるかもしれない」

「いやちょっと待て、俺達の銃は狙いが定まりにくいんだぞ!初めて撃てて当たった事にも驚いているのに持った事があるって……」

「当たった事は偶然だと思うが、構えて撃つまでの流れが素人ではなかった」

 ジンの説明にホルスはどのように言葉を言えばいいのか分からなくなっていた。

 一方でジンはサラと会ってから感じ続けている違和感について考えていた。

(あいつは銃を撃った事も持った事もないと言っていなかったな。いや、俺が勝手に思っていただけか。なら何故言わない?やっぱり……)

 そう考えて結局は同じ答えへとたどり着いてしまう。それを確かめる術はない。だが、その様に思いついてしまう。

「古代人ってすげぇーな……」

「何がすごいかは聞かないが、そんな感想が出るのは多分お前だけだ」

 考え込んでいたジンの耳にぽつりとホルスの呟きが聞こえ、呆れながら言い返した。


  * * *


 原動室へと続くエレベーターに少しずつ近づいていた。

「この先を真っ直ぐです」

「けっこう長くなかったか?」

 サラの言葉にホルスがぐったりとした様子で呟いた。

「原動室までは一般人が立入禁止なので入る事が出来ない奥にあるんです」

「それで、そこに行く事が出来る手段が……」

「点検用に使われているエレベーターと階段。それからメインコントロールルームがある最上階まで続いているエレベーターです」

 原動室に向かう前に聞いた言葉を再び確認し合う。

「確か、今から向かうのが点検用でいいのか?」

「そして、原動室を稼働させ最上階まで続くエレベータに乗る。」

「はい。ですが、稼働させたら恐らく……」

 サラが次を述べようとした時、ホルスが遮った。

「それはいい。そこからは俺達がやる事だから」

 簡単に言ったホルスだが内容は簡単な事ではない。むしろ、稼働させてからが本番なのだ。ジンとホルスは今以上に気を引き締めなければならない。

 サラは何度目になるか分からない罪悪感を感じていた。

 そんな話をしていると、3人はエレベーターの前へと着いた。

 だが、その前で3人は立ち尽くしてしまった。

 行動をしない中、ホルスが勇気を振り絞って呟いた。

「どうやって乗るんだ?」

 目の前は変な小さな出っ張りがある以外は普通の壁である。昇降する箱と聞いて期待したのに目の前は壁。期待ぶち壊しである。

「あ!こうするんです」

 ホルスの言葉に自分がやらないといけない事を悟ったサラはどうしてやり方を知らないのだろうと思いながら急いで壁に付けられている出っ張りを押した。

 そして、少し上を見てエレベーター本体が今何処にあるのか確認した。

「エレベーターは原動室にあるみたいですがすぐに上がってきて開きます」

「それだけ?」

「はい」

 短い工程にホルスはもう少しないのかと思ったがすぐに異跡だからと片付けた。

 そうして、ふと開くという単語が頭に引っ掛かりジンに尋ねた。

「そういや、ジンはどうしてエレ…ベェーター?ってのに乗れたんだ」

 エレベータを言い間違えていないか確認しながら尋ねた。

「開いていた」

「はあぁぁ!?」

「えっ!?」

 ジンの言葉にホルスは元よりサラも驚いた様子で声を上げた。

「だから開いていたと言ったんだ!通路が先に続く様な風景に騙されて飛び込んだらそのまま閉じ込められたんだ」

 驚く2人にありのままに話すジン。正直言って、エレベーターには苦い思い出しかない。

「ボタンを押したのでは?」

「ボタンはその出っ張りか?ないな。正面から飛び込んだんだ。どうやったら押せるんだ?」

 ボタンを押したわけでもないのにエレベーターが開いていた。人がいないのにその様な事があるのかとサラは頭を悩ませた。

 その時、無音で壁が開いた。

「うおぉあ!?開いた!?」

 初めて境目が見当たらない扉が開いた現象に驚いたホルスが叫んだ。

「これがエレベーターです。この中に入ると昇降するんです」

 驚くホルスにサラは説明した。

「中は明るいんだな」

 ホルスは恐る恐る入りながらエレベーター内部が明るい事を呟いた。

 ホルスの言葉を聞きながらジンもエレベーター内部を見ながら入った。

 エレベーターには2回乗っているが、1回目は状況が理解出来ず混乱していて、2回目はサラが気になってしまいエレベーターについて考えていなかった。だから、3回目で初めてエレベーターをじっくり観察する事が出来た。

 2人が入ったのを見るとサラはエレベーターの扉を閉めた。

「うおぉ!?」

 手で閉めずに勝手に閉まった扉にまたも驚くホルス。そして、

「さ、下がっているのか!?」

 突然下がり始めた事に驚く。

 ホルスが連続して驚く様子にサラは不思議に思いジンに尋ねた。

「ジンさん、エレベーターってこんなに驚く物なのですか?」

「驚くな。昇降する箱ってのがないからな」

 それを聞いてサラは驚いた。エレベーターがない事に。

 その時、ドン、ドンと音が聞こえた。

 何の音かと振り向くと、ホルスが跳ねていた。エレベーター内部で。

「ホ、ホルスさん!?」

 予想外の行動をしているホルスに顔を青ざめたサラが叫んだ。

「何やっているんだお前?」

 意味の分からない行動にジンは尋ねた。

「いや、どのくらい丈夫なのかと思ってな」

 そう言ってもう一度跳ねた。

 着地した瞬間、エレベーターが急停止した。

「うわっ!?」

「きゃ!!」

 突然の急停止に3人は体勢を崩した。そして、アナウンスが流れた。

「揺れを感知しました。安全が確認されるまでしばらくお待ちください」

 流暢なアナウンスを聞きながらジンは怒りを込めて、サラは怨めしそうにホルスを睨んだ。

「えっと……」

 睨まれたホルスはたじたじであった。急停止した元凶が自分だからだ。初めての事にはしゃぎすぎてしまった。

「スミマセン……」

 謝罪の言葉が虚しく響いた。


  * * *


 5分後。

 原動室に備え付けられているエレベーターの扉が開き、ジンとホルスがサラを庇う様に銃を構えていた。

「ロス分しっかりやれ!」

「だからごめんって言ってるだろ!そりゃ頑張るけど……」

 ジンの追及に頭にたんこぶを付けたホルスがもう許してくれと言う表情で叫んだ。


 エレベーターが急停止してから再び動き出すまでの間、ホルスはジンから拳骨を一発食らい、サラからエレベーターについての常識と言うものを聞かされていた。

 それによると、エレベーターは揺れを感知すると止まる仕組みになっているのだと言う。

 跳び跳ねてみて丈夫なのに何故と言う疑問がわいたが見事に無視された。

 それからサラが必死になってエレベーターの起動にのりだし、ようやく動いたのだ。

 本来、再起動は外部から行う為に時間がかかる。それをサラは端末を使いエレベーター内部から操作して5分もかけずに再起動させた。普通ではありえないのだが、普通を知らないジンとホルスは追及をしていない。むしろ、再起動した事に安心している。

 もし動かなかったらと考えると寒気がする。

 サラが端末で再起動を試みている間、ホルスはジンから散々説教を食らっていた。


 ジンとホルスはエレベーターから出るとドローンがいないか左右を見渡し始めた。

「そっちは?」

「いない」

 声をかけて確認し合う。

 未知の場所である事とサラを失えば行動自体が無駄になる事が2人に警戒感を持たせていた。

 ホルスが手招きでサラを呼んだ。

 サラはエレベーターから出ると2人に合流した。

「それで、原動室ってのは?」

「左です」

「マジかよ……」

 サラの言葉にジンとホルスは目を疑った。

 左側には長い橋が掛けられているだけ。

「この先に原動機を操作する場所があります。」

「それじゃ原動機は?」

「橋の下に広がっているのが原動機です」

「広っ!?」

 広範囲に橋の下にあるのが原動機と聞いて驚く。だが、そんな事は今どうでもいい。

「どう行くかだな」

 問題を戻して解決策を考え出す。

「とにかく、渡らなければならないだろ」

 考えても無駄と言うようにジンが述べた。

「おい、ジン……」

 それを聞いて青ざめるホルス。確かに橋は渡るがそれは向こうへ渡る方針が決まってからだ。

「俺が先に行く」

「だからそうゆう事じゃない!」

 確かに決めている時間はないが急ぐなとも言いたい。だが、ジンは制止が言い渡される前に橋へと足を踏み入れた。

 その時、何かに思い出して気づいたサラが叫んだ。

「ジンさん、戻ってください!」

 サラの叫びに足を止めたジン。それと同時に橋を挟むように左右から大量の小型ドローンが現れた。

「おいおいおいおい!ちょっと待てぇぇぇぇ!!」

 ドローンの多さに叫ぶホルス。これは、どのように向こうへ行く方法を考えたとしても無意味であると痛感させられた。

 ジンもドローンの数に驚き、後退しながら引き金を引こうとして……

「ダメです!原動室で撃っては!」

 サラに止められた。

 意味が分からない。何故撃ってはならないのか。

「ホルスさん!」

「分かっている!」

 サラの言葉にホルスはジンを助ける為に原動室前からライフルを構えて引き金を引いた。

 ドローンに弾丸が当たる音を聞きながらジンは急いで2人の場所へと戻った。

「何故撃つなと言った?」

 戻って早々、ジンはホルスと同じ位置に立つと大量のドローンに対抗する為に銃の引き金を引きながらサラに尋ねた。

 そのサラはというと、壁とは違う材質の何かをいじっていた。

「ジンさんとホルスさんが使っている銃には火薬と言う物が使われていますよね?」

 それが一体何だという表情を浮かべるジン。

「原動機はものすごくデリケートなんです。そこで煙や引火が起こると……」

「あの時の二の舞か!」

 言いたい事を理解したジンは第28異跡で起こった爆発を思い出した。

「だが、こうやってドローンを撃ち落としているんだが、いいのか?」

「ガーディアンには引火物はありません」

「それずるくないか?」

 サラの発言にどうでもいいような、けれども追い詰める発言に突っ込む。

 何故なら、ドローンはどこでも撃っていいのだが、探求者は原動室で撃ってはならない。避ける場所がない、撃てない事は探求者にとって初めての事である。しかも、

「弾は?」

「49!」

 探求者には弾数と言う制限があるのだがドローンには制限がない。

 ジンとホルスは大量のドローンに交互にとはいかず、同時に対処しているが、大量のドローンか現れた時点で2人共詰んでいる。


 一方でサラは壁に備え付けられている通信パネルを外す事に成功した。

「外れた!」

 そのまま奥に隠されていた扉を開ける為にボタンを急いで押した。

 そして、解錠された扉全開したそこにあった物を手に取ると、ガーディアンに向けて引き金を引いた。


 突如として背後から光線が放たれドローンを一撃で撃ち抜いた事に驚くジンとホルス。

 一体何かと振り向くと、サラが見たことのない銃を構えていた。

「それは……?」

 ジンが呟いたのも束の間、ドローンの一斉射撃に3人は急いで隠れた。

「サラちゃん、何だそれ!?」

 ホルスが慌てて尋ねた。

光線銃(レーザー・ガン)です」

「レーザー?」

「これが……!」

 サラの言葉にレーザーと言う言葉を聞いた事がないホルスは呟き、一度聞いた事があるジンは現物を見て呟いた。

「それってもしかして、ドローンが撃つのと同じやつか?」

「はい。これで原動室の中でも撃てます」

 そう言って、隠し格納庫から残りの光線銃2丁をジンとホルスに安全装置を解錠して威力を調整した上で渡した。

 まさか、ドローンと同じ攻撃手段を持つ事になるとは思っていなかった。

 そんな事を考えている間も原動室にいる大量のドローンは3人へと迫っていた。

「よしやるぞ!」

 気合いを入れたホルスは光線銃を原動室へと向けるとドローンに引き金を引いた。

 銃口から放たれた光線は探求者が狙うドローンの銃口からやや外れたが命中。本来ならもう数発放つところだが、たったの一撃でドローンが落ちた。

「すっげぇ……」

 命中場所が銃口ではないのにたった一発で撃ち落とす事が出来た。そして、威力にも。

「……軽い」

 ジンも光線銃を撃ちながら感想を呟いた。撃った時の衝撃が少ない。いや、殆ど感じないと言ってもいい。

 手にしている光線銃の癖を感じながらもジンとホルスはドローンを撃ち落とし、その度に光線銃のすごさに驚いていた。

 しかし、撃っても撃ってもドローンの数は一向に減らない。

「きりがない!」

 同じ武器を手にしていながらも数には勝てない。徐々に追い込まれる。

「ジンさん、ホルスさん、避けてください」

「避けるって……なっ!?」

 サラの声にジンが振り返ると、サラが膝を付けて光線銃を構えていた。そこまではいい。だが、光線銃が普通ではない。見た感じは分からない。だが、サラの雰囲気が普通ではない。直感が警告を発する。

 本来なら食いついていただろうが素直に急いで避けた。ホルスも同様にジンと同じくサラを置いて避けた。

 次の瞬間、サラが構える光線銃から太い光線が発射された。

 光線は瞬時に大量のドローンを貫き、あっという間に全て消滅(・ ・)させた。

 その光景にジンとホルスは言葉を失った。


「ふぅ……」

 サラは深く行きを吸いて短く吐いた。

「今の何?」

 やっとホルスが一言だけ発した。

 サラは振り返ると仕掛けを明かした。

「光線銃の高出力(オーバーワーク)を使ったんです。威力はここで調整します。高出力は威力が少なくなるのですが幅が広がるんです」

 光線銃の装置に指差して説明するサラ。

「サラちゃん、1ついいか?」

「はい?」

「これ危なすぎだ!!」

 説明を聞いたホルスが光線銃の危険性を心の底から叫んだ。


 原動機制御装置を前にサラは慣れた様子で操作をしていた。

「旧字体なんだな」

 操作装置のモニターに映し出されている文字を見てホルスが呟いた。

「意外だな。お前が旧字体を知っているとは」

「俺の婆ちゃんが少し使っていたからな。てか、意外ってなんだ意外は!」

 旧字体をネタに余談を交わすジンとホルス。

 光線銃の危険性はサラが放った高出力のインパクトが強く重々承知している。それでもドローンを対処しやすくなった反動か安全が確認された場所で今まで以上に気を抜けていられる。

 それでも気の抜きすぎは命とりに繋がる。あくまで探求者の感覚である。

「状態確認。安全確認。稼働時間確認……」

 そんな2人をよそにサラはモニターに映し出される結果を口に出していた。

「稼働させます!」

 ジンとホルスに聞こえる様に呟くと、サラはモニターに映し出されているボタンを押した。

 それからしばらくして原動機が稼働する音がゆっくりと響き、部屋全体も徐々に明るくなっていった。

「いよいよか」

「そうだな」

 原動機が確認したのを悟ったジンとホルスは気を引き締め直した。

 サラ人の様子に小さく頷いた。

 ここから先は今まで以上に厳しくなる。本番はここからなのだ。

「行くぞ」

 ジンの言葉に3人はメインコントロールルームへ向けて移動を始めた。

作中でエレベーターがこんなにもネタに上がるとは思いませんでした。


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