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久々の投稿です。今後の投稿予定を活動報告で公表しています。

第16異跡内部に入っていたジンとホルスは通路の壁を背にして広い空間を覗き込んでいた。

「今の所ドローンはいないな」

何本か投げた簡易式ペンライトの明かりでドローンがいない事を確かめていた。


目前に広がっている空間は奥行きが非常に長く、端から端の幅もある程度長い。加えて、暗闇でよく見えないが天井も非常に高い。

だが、天井が高い筈なのに支えている柱の数は少ないく、規則正しく一定の距離を開けて立てられている。加えて、身を隠す様な壁や置物、曲がり角もなく隠れる場所がどこにもない。隠れる場所がない事は探求者ハンターの生存率にも関わる。

そこで考え出された対処法はいたってシンプルで困難な方法。全力で柱の1つに向けて走ること。

柱と柱までは距離があるものの、そこへ向けて全力で走る。もちろん、ドローンが襲ってくる事もあり、それに対応しながらである。

そして、奥へと走り続けると途中に何故そこに設置されているのか分からない階段が現れる。

その階段は厚い壁に挟まれている様なものではなく、腰の高さ程の透明な薄いガラスの様な板に挟まれ、それが2つ、多くて3つくっついているものであり、通路の真ん中を陣取る様にそれぞれ空間に5ヶ所存在している。

階段をかけ上がると透明なガラスの様な板がドローンの放つ光線銃の弾丸を通さず守ってくれる。

階段までたどり着ければこの空間での危機は脱した事にはなる。たどり着けるたらの話だが。

第16異跡最初にして最大の難所である。


ジンは両手にそれぞれ銃身が違う銃を握ると簡易式ペンライトにより多少明るくなった空間を見回した。

「先行する気か?」

ホルスがライフルの引き金に指をかけたまま尋ねた。口調からしてジンが取ろうとしている行動を知っている様である。

言葉の意味を知ってか知らぬか、ジンは空間を見たまま口を開かない。

その無言を肯定と捉えるとホルスはライフルの銃口を空間に向けて構えた。

「タイミングは任せる。」

ホルスが言い終わるとジンは空間へ向けて駆け出した。

ホルスはジンの性格を知っている為に内心でやっぱりと思った。

何も知らない者ならジンに悪態をついていただろうが、ホルスだからこの程度ですんだのだ。

だが、それはそれであり、ジンが走る方向の奥から浮遊するドローンが1体来るのを見つけたホルスはライフルで標準を定めると引き金を引いた。

カキーンと鋼に銃弾が当たる音が響いた。

(ずれたか)

しかし、響いた音からドローンの銃口ではなく外装に当たったと判断し、裏付ける様に的のドローンはまだ浮いていた。

そもそも、暗い空間で遠くにある小さな的を一撃で撃ち落とすのは簡単な事ではないし殆ど不可能に近い。それは探求者でも言える事であるが、その中で1発のはずれは探求者としてはギリギリ許容範囲である。二度目はない。

次は当てると意気込みホルスはすぐさま銃口の標準を調整すると引き金を引いた。

一瞬の間を置きガシャーンという音が響いた。浮いていたはずのドローンが落ちたのを見ると今度は命中したと確信出来た。

だが、まだ安心するには早い。新たなドローンが奥から現れている。ジンが1つ目の柱にたどり着き自身もそこまで移動し終えるまでは安心出来ない。


ジンは全体に注意して見ながら柱に向かって走っていた。後方にいるホルスの援護のお陰で一先ず両手に握っている銃は使っていない。打ち落としたり至近距離から撃ってくる等のドローンに備えて握っているのだがホルスが撃ち落としてしるから出番がないのである。

背後から銃声の音が響き、前方に浮かんでいたドローンが落ちる音を聞いた。その音を聞きながらジンは暗闇の中で柱を見つけた。

人1人が隠れられる、約50㎝程の柱が横に一定の距離を開けて二本。その一本に隠れた。

隠れるとすぐさまウエストポーチのベルトにかけていた小型で片手で握れるほど細いライトを左手で握ると周りを見渡し、柱から少し顔を出して進行方向を見た。

進行方向、奥からドローンが来ていない事を確認すると器用に左手でライトをベルトから取り明かりを入れた。少し大きめのライトに比べて明かりが暗いそれをホルスに見える様に振った。


柱と思われる場所からライトの明かりが振られているのを見たホルスはライフルを背負い右手に拳銃を握ると走り出した。走りながらでは標準が定まらず撃てない。

ジンは時々走って来るホルスを見ながら進行方向から現れるドローンに警戒して見て、現れたドローンに向けて引き金を引いた。

今度はジンがホルスの援護をする番であった。

後方で援護していた相方が柱にたどり着く前にドローンに撃たれるとこの先へ行く事は非常に困難である。

そして、相方がたどり着くと再び次の柱へと走り、たどり着くと相方が柱にたどり着くまで援護する事となっている。

前方だけなら楽にも見える。だが…


ジンは右手に握っている銃の引き金を引いた。標的は前方奥だけではなく、やや右側から現れたドローンに向けて発砲した。

弾丸が命中した音が響いた。だが、ドローンは未だに浮いていおり1発だけでは足りなかったと見ると、もう1発撃ち込んだ。命中した音が再び響き、右側から現れたドローンはようやく落ちた。

ホルスは柱に着くと背を預けた。

「あいからわずいい反応だな」

ジンを褒めるが、当のジンは視線を奥、次の柱へと向けていた。

ドローンは前方、正面だけではない。左右からも現れ、正面ならまだしも左右は突然現れるものだから予想がしにくい。もし反応出来ても体がそれについてこれるかまでは分からない。

ジンは反射神経の良さで難なくついているが、平均的な探求者の反応ではワンテンポ遅れてしまう。


ホルスはライフルを握ると進行方向に向けてすぐさま浮いているドローンに撃った。

撃たれたドローンが落ちる音を聞くとジンは柱から飛び出した。

ここからはスピード勝負である。

一本目の柱までたどり着く事が出来た。が、二本目にたどり着く前に援護をしている相方が援護途中でドローンに撃たれる可能があるからだ。

一本目までは通路から援護をしている相方の背後からドローンが撃つという危険はないわけではない。だが、空間内ではその危険度が増すのである。左右から突然現れるドローンが援護に気をとられている相方を撃つという可能があるからだ。

どこかにドローンが出入りする通路の様なものがあると遺跡探求者トレジャーハンターは考えている。

だから、先に向かった者はその危険を出来るだけ回避する為に急いで走るのである。援護を受け持つ相方もそれを知っており、危険と隣り合わせでありながらも周りに気を張り、先行する者がたどり着いて今度も援護してくれる事を信じるのである。


ホルスの援護で二本目の柱に着いたジンは柱から顔を出すと数発ドローンに向けて銃を撃った。何度かドローンが光線銃で撃ってくる事はあったが、柱を壁替わりにしていた事で負傷する事はなく、全て撃ち落とし他にいない事を確かめ、ホルスに向けてライトを振った。

今はまだ背後からドローンの攻撃はないが、ホルスは安堵する事はせずライフルを背負い走り出した。

その間、ジンは今まで以上にホルスを見ては背後からドローンが襲って来ないかを見ていた。もちろん、進行方向の注意もだ。

進路方向からドローンが数体向かって来るのが見えた。

「左へ避けろ!」

ジンの警告が言い終わるやいなや、ドローンが一斉に光線銃を撃ってきた。

警告を聞いたホルスはすぐさま左へ避けた為に撃たれなかったが、ジンが言わなかったら撃たれていた。

撃ってきた以上、今の柱に着くまで撃たれない様に蛇行し始めた。

蛇行を始めたホルスをジンは進行方向のドローンに向けて銃撃戦を始めた。もちろん、ホルスから気を反らす為である。

1人に対して複数体は厳しい。ジンの拳銃が1体のドローンを撃ち落とした事で殆どのドローンがホルスからジンへと的を変えて撃ち始めた。柱を壁にしている為に少なくとも前方から死ぬような致命傷を負う事はないが、一手に引き受けたが為に背後が手薄になり撃たれる事もある。

右手に握っていた銃をホルスターにしまい別の銃を握ったジンは背後に向けて引き金を引いた。背後にいたのは言わずもなからドローンであり今すぐにでも撃とうとしていた。

だが、ジンにより阻止されただけでなく銃口に命中して小刻みに震えていた。そして、追い討ちをかける様にもう1発がドローンに命中し、落ちた。が、今の1発はジンが撃ったものではない。蛇行しているホルスが撃ったものである。

蛇行して走っていたホルスはジンの背後にドローンがいるのを見て引き金を引いた。だが、ジンは既に気づいていた様でジンが撃った後に引き金を引いて放った弾丸が命中した。後手に回ってしまったが、止めを刺したのはホルスである。

ホルスは悔しがる様子は見せず、視線を左側へ向けた。左側にはドローン2体が銃口を向けていた。

ホルスは迷う事なくドローンに向けて連続で引き金を引いた。2度程外した音が聞こえたものの最終的には命中して2体のドローンは落ちた。

途中、背後から撃ってきたドローンの光線を体を反転させて避けた。ドローンと近かった事もあってすぐさま銃の銃口を向けて引き金を引いた。1発で充分だった。寸分狂わず命中し、ドローンはその場で落ちた。


一先ず撃退したホルスは走る速度を上げて柱に着いた。すぐさまライフルを握り進行方向のドローン1体に向けて引き金を引いた。的にしていたドローンに命中し、カタリと落ちた。銃撃戦参戦の合図である。

「周りを頼む!」

ホルスの言葉にジンは前方方向から銃を反らすと左手に握っていた銃でホルスを右側から撃とうとして近づいて来ていたドローンへ向けて撃った。

1発は外装に当り効果はない。が、僅に銃口が見えたのを逃さず2発目を銃口に向けて撃ち込んだ。

弾は銃口に命中し後は落ちるだけ。だが、ジンは落ちるのに目もくれず新たに現れたドローンに

向けて引き金を引いた。

カキーンという音が響き外装に当たったと悟ると、右手に握っていた銃を再びホルスターにしまい、違う銃身の銃を握りしめた。握った銃は左手にいる銃と同じ銃身の銃、遠距離型である。

ジンは2丁の銃をドローンに向けた。

瞬間、ドローンが光線を放った。だが、ジンは慌てなかった。光線を見て的となっているのは頭と判断し、僅に頭を反らし光線を避けた。今のでドローンの銃口の位置が判明し引き金を引いた。2丁から撃たれた弾丸は2弾ともドローンの銃口に命中して落ちた。


進行方向に存在していた最期のドローンを撃ち落としホルスはドローンがいない事を確認するとジンを見た。

そのジンも背後から襲おうとしていたドローンを全て倒し終えた所の様で警戒して周りを見ていたが、いないと見ると銃を下ろした。

「ふぅ~」

ここでホルスは緊張から解き放たれて初めて息を吐いた。まだ終わっていないが吐かずにはいられなかった。

「これがあと4回か……」

柱への移動があと4回ある事にホルスはぼやいた。

今の銃撃戦だけでもかなりきつかったのに移動が4回。最悪の場合、銃撃戦も4回。目的達成前に気が滅入りそうである。

柱から柱への移動は6回。その間に今の様な銃撃戦が起こる。そして、怪我人や死者が現れたりホルスの様に例えベテランでも繰り返し行われるであろう死闘に気が滅入る者もいる。それだけにこの空間は突破が難しいのである。


(しゃあないがな)

ホルスは一度深く息を吐くと気持ちを切り替えた。気が滅入りそうなのは確かであるがここでぼやいたり立ち止まっては何もない事を知っている。

ホルスはジンを見た。

ジンはドローンが現れない今の時間を使って空になっていた弾倉に弾丸を入れていた。弾倉に弾丸を入れ終わると両手に銃を握りホルスに目を向けた。

「いつでも行ける」

ジンの言葉にホルスは僅に表情を綻ばせながらライフルを進行方向に向けた。

「いつでも行け!」

その言葉を合図にジンは3本目に向けて駆け出した。



ジンとホルスが最初の難所に挑んでから少し時間が経った頃。第16異跡裏側では異変が起きていた。

「何これぇぇぇぇぇ!!」

ノーマは驚きのあまり大声で叫んでいた。全く予想出来なかった。いや、誰が予想出来るだろうか。

突如、岩肌の一部が浮かび上がりスライドしたのだ。その奥には広い空間が広がっていた。

何故この様な事が起きたのか。それは、情報解析部アナライズ第2班預かりであるサラが岩肌に隠されていた何かを押した事で岩肌が浮かび上がり奥に広がっている空間が姿を現したのだ。

空間を覗き込んで見ていたノーマはガシャンとスライドしていた岩肌が止まる音を聞いて、驚きを一生懸命に抑えるとサラに尋ねた。

「な、何をしたの!?」

「外壁を開けました」

サラはあっさり言った。驚く事をやらかしたという自覚はない。

「何で開けられるの!?もしかしてさっき押してたあれ?」

驚きを一生懸命抑えているとはいえ、やはり抑えるのは難しい様で質問攻めしている。だから、

「ノーマさん、落ち着いてください」

サラが落ち着く様に言う。

「確かに普通は出来ません。登録されている本人IDか指定されているパスワード、もしくはハッキングで開ける出来ますが、開ける方法事態は常識です」

「どこが!?」

常識と言う言葉を言われて更に乱れる。ノーマは頭を抱えた。

(何なの一体……)

ノーマはサラと言う人物が更に分からなくなっていた。岩肌、サラの言葉では外壁を浮かばせ空間を出現出来るとは。頭が回らない。

(貨物車が2台。船舶か航空機があってもおかしくないのですが)

そんなノーマを知らずにサラは広い空間、格納庫へ足を踏み入れ周りを見回しながら歩いた。

「内線は……」

「ちょっと……」

いつの間にか格納庫に入ってしまっていたサラに気づいたノーマだが、止まってと言おうとしたが途中で途切れた。

「伏せて!」

ノーマの叫びにサラは足を止めた。

そして、止めた時に目がある物を捉えた。ガーディアン・ボール、ノーマ達の言葉ではドローンと呼ばれるものである。そのボールがサラ目掛けて光線を放った。

「きゃっ!」

サラはノーマの警告があった事でその場でしゃがんだため光線は当たらなかった。

「走って!」

ノーマが外から間髪入れずに指示を出す。サラがいる場所は航空の中程。頑張って走れば戻って来れる。そう判断した指示である。

だが、ノーマの考えとは裏腹にサラは奥へと走った。

「そっちじゃなくこっち!」

ノーマは声を上げるが足を止める様子はない。

ドローンが再び光線を放つのを見たノーマは腰にかけていた護身用の銃を握ると、ドローンに向けて引き金を引いた。

弾丸はドローンの外装にカキーンという音を立てたがドローン専用ではなく護身用である為に当たっても貫く事はともかく大きく弾く事も出来ない。だが、僅かに的を反らす事が出来た様で放たれた光線は走り去ったサラの後方に放たれた。

「くっ……!」

弾丸は命中したが威力が足りない。このままではサラが撃たれるのは時間の問題である。

ノーマは覚悟を決めて格納庫へ足を踏み込みサラを追った。

ドローンに狙われている以上、奥へと走っているサラを自力で連れ戻すしかなかった。サラは謎の多い一般人( ・ ・ ・ )だ。入ってしまったのは自身の不注意である。自身がやらかした不注意は責任を持って解決しなければならない。それに、

「面倒見がいいってのはいい事だけじゃない!」

自身に皮肉を言いながらドローンに向けて引き金を引きながら徐々にサラとの距離を詰めていった。


調査部リサーチは探求者に次いで身体能力が高い。調査部は外でのフットワークや車や飛行機といった乗り物の扱いに長けた者が多く所属している。そういった者達に加え、身体能力が低く探究者になれなかった者や探求者が負傷により調査が出来なくなった者、引退した者も所属している。

調査部は異跡内部を調査する探求者とは違い異跡そのものを見つける事を目的としている。地形や伝承と探す場所はさまざまだが、探す場所には危険地帯も含まれている。そういった理由から探求者を目指していた者や元探求者以外の調査部は自身の身を守れる様に護身用以上の技術を身に付けなければならない。護身用以上というのは現世界状況から護身用程度では済まないからである。特に、危険地帯では護身用程度では切り抜ける事が出来ない。だから、護身用以上は探求者を目指していた者よりも多少劣るもののそんじょそこらの闘い慣れをした輩よりも上であるし大抵の事には対応出来る必要があった。

だが、ドローンの事は含まれていない。外から調査するのが調査部である為に内部に入る事は考えられていない。だから、


ノーマの足元付近に光線が撃たれ走っている足を止めそうになったが止めると撃たれる事を感じたノーマは走り続けた。

(辛い……)

ドローンの的をサラから自身に移させようと必死に引き金を引いて成功したノーマだが苦しい表情を浮かべながら心の中で呟いた。

いざ的を自身に向けられると今度は対処が難しい。

銃は護身用で威力はない。身体能力も探求者を目指していた訳ではないからそれほどでもない。だが、女性全体で見てもそこいらの女性よりも身体能力は上であるがそれだけである。いくら探求者に次ぐ調査部だからとは言えドローンを対処するのは分が悪い。

ノーマは歯を噛み締めて今まで以上の速さで走るとサラの手首を握った。

そのままサラを引いて急いで正体不明鉄の乗り物の裏に隠れた。

ノーマはサラの手首から手を離すと息を吐いた。

「辛いってこれ!探求者はこんな事をしてたの?」

探求者を目指していなかったノーマにとって別の事と捉えていた探求者の役割がこんなにも厳しく危険な事とは思わなかった。想像以上だったのだ。

サラは肩を上げて息を整えていた。途中からノーマに引かれて走った事で多少疲労を感じていた。

「ノ、ノーマさん速いです……」

「調査部だからね……」

サラの言葉に同様にノーマも肩を上げて息を整えながら言った。

「けど、何でここに入ったの!異跡は危険だって言ったのに!」

だが、それを程ほどにして格納庫に入った事を叱り出した。

「確かめたかったのです」

「確かめたかった?」

叱るノーマの目をサラは真っ直ぐに見た。

「今、コロニーで何が起きているのか。どうしてこの様な事になっているのかを」

サラの言葉にノーマは頭上にはてなマークを浮かべた。

異跡内部はドローンで溢れていて危険というのが異跡探求者トレジャーハンターの常識である。それを何故確かめたいのか分からないからだ。

「とにかく、今は異跡ここから出る。確かめたいって事も出てから……」

その時、鉄の乗り物に光線が当たる音が聞こえた。

ノーマは光線が当たった場所を予測し、鉄の乗り物を壁にして覗き込んだ。

覗き込んだその時、ドローンが光線を放った。

ノーマは急いで顔を引いた。光線はノーマには当たらず鉄の乗り物側面に音を立てて当たった。

「これじゃ逃げられない……」

ドローンは近づきながら光線を連続で放っていた。ノーマは刻一刻と迫るドローンに歯を噛み締めた。

その一方、サラは貨物車の後部扉に付けられている端末を見つけると外壁を開けた時の様にボタンを押していた。


* * *


「これは!」

調査部で今調査の責任者トマスが目にしたのは異跡内部へ続く大きな入口であった。

迎えの準備を始めようとした所、突如として岩肌が浮かび上がり元からあった岩肌の上に覆う様に移動して来た。一体何事かと思い数名の調査部を引き連れて調査していたら入口を見つけたのだ。しかも、岩肌はそこから浮き上がっていたようである。

「うかつに入口に顔を出すな!ドローンに撃たれる可能性がある!」

トマスは走りながら引き連れた調査部に叫んだ。

トマスは元探求者である。怪我の為に8年前に調査部に移動し活動してきた。探求者と調査部の経験を持つトマスは入口を見た瞬間、普通の入口ではないと直感した。

発見した異跡は入口をこじ開ける事は容易ではない。固い事はもちろんだが、開けた瞬間にドローンがいるという事もある。その場合は問答無用で撃ってくる。この瞬間は調査部にとって見れば命懸けである。しかし、一度開けてしまうとドローンは現れないどころか外に出てこようともしない。それはそれでいいのだが、そんな事がある為に最初に開けられた入口には注意する必要があった。

そして、トマスが普通ではないと思った理由。それは、こじ開けれる事が不可能だからだ。

本来、入口をこじ開ければ必ずどこかに僅な傷が残るのだが、突如現れた入口は岩肌にあり岩肌を削りすぐに開ける事が不可能である。だからトマスは思った。内側から開けられたのだと。なら、内部には調査をしている探求者、ジンとホルスがいるはずである。しかし、今回の調査は確認であって新な場所の調査ではない。確認中ドローンの攻撃に圧されてルートから外れるという事はよくある。入口はそういった理由でたまたま発見したのだろうと考えた。


入口付近に陣取り、トマスは恐る恐る内部を覗き込んだ。内部を見た時、トマスの予想は裏切られた。

内部にはドローン。そして、鉄の乗り物を盾にして同じ調査部のノーマと情報解析第2班預かりで名は確かサラとか言う少女が隠れていた。

「何をしているんだ!!」

「リーダー!」

何でそこにいるのかと叫んだトマスの声にノーマは気づき助けを求める様な表情を向けた。

「ドローンに向けて撃て!」

トマスの指示に引き連れて来た調査部は護身用の銃でドローンに向けて撃ち始めた。

トマスは目を動かして格納庫を見回した。どこにも探求者が見当たらない。まさか、2人が誤って異跡に入ってしまい内部から開けたのか。

そこまで考えて再びノーマに叫んだ。

「とにかく走れ!」

その時、ドローンは入口から撃っている調査部に的を変えると光線を放った。

「うわあぁぁ!」

光線に気づき調査部は撃つのをやめて伏せた。そして、また1発と光線が撃たれ、調査部は入口側面に隠れた。

「リーダー!」

ドローンが仲間の調査部に向けて放ったのを見てノーマは叫んだ。


貨物車後部扉がカチャンと音を立てた。

「開きました」

サラはそう言うと急いで後部扉を開けた。

「え、何!?」

ノーマはサラが何故この様な事をしたのか分からず目を丸くしていた。

「乗ってください」

「え、乗る!?」

「この中ならボールの光線は防げます!」

「そうなの!?てか、何で……」

「早く乗ってください!」

サラに強く言われてノーマは急いで鉄の乗り物に乗り込んだ。ドローンの光線に撃たれたくなかったからだ。

鉄の乗り物に乗り込んだノーマはポーチに入れていた小型のライトを取り出し明かりをつけると周りを見回した。

内部は広く何もない。この鉄の乗り物は荷物を運搬する乗り物に似ていると頭の隅で考えた。前方に目を向けるとそこは壁で何もない。だが、サラはその境目の天上と床をいじっていた。そして、カチャンと壁が外れた。

壁が外れたのを見て驚くノーマを他所にサラは壁を立て掛けると開けられたその奥へと身を出した。

その後に続くノーマが見た物は、乗り物を操縦する見た事のない操縦装置と操縦席と助手席があった。

「これは?」

「操縦桿です」

サラは操縦席に座った。

「待って、操縦なら私が……」

「大丈夫です。一応操縦方法は知っています。いざとなったら自動操縦オートに出来ます」

「オ、オート?」

サラの意味不明な言葉に頭を傾げるノーマ。

(動いて……)

サラは願いを込めて端末に触れた。触れた端末はゆっくりと光を放った。

「よかった」

サラは安堵をした。恐らく貨物車は整備されていないだろうと考えていた。そんな物がいざ動かせばどうなるか。動かないか動かした瞬間に壊れる可能性があった。幸い動くし壊れる様子もない。

ノーマはもう何度驚いたのか分からないが目を丸くしていた。光が灯りそれを合図に貨物車が動き出したのだ。

「ノーマさん、しっかり捕まってください!」

「え!?」

「ボールにぶつかります!」

「ちょっと待って!運転でき……きゃぁぁ!……え?」

サラは操縦桿を握り締めて貨物車を動かした。

所で、サラが貨物車を操縦出来るかどうかという質問に答えるなら、出来ないと答える。知っているとは答えていたがした事があるとは行っていない。だから、

「すみません。規定速度を越えてしまった為に強制停止がかかりました」

突然の停止に操縦桿を握ったまま申し訳なさそうに言った。

驚いて悲鳴を上げたノーマは恥ずかしくなり頬を赤く染めた。


入口から覗き込んでいた調査部も驚いた表情で貨物車を見ていた。

「動くのかよ……」

まさか、目前に存在する1000年前の乗り物が動くとは思わなかった。いや、ドローンが動いているのだから乗り物も動くのだろうと考えを改めた。

「それにしても、ノーマはあれに乗っているんだよな。大丈夫なのか?」

ドローンの攻撃をやり過ごしながら調査部の1人が言った。

トマスとしてみれば今は大丈夫だろうと考えていた。少なくとも今は。ドローンが増える前に何としても目前のドローンを動かない様にしなければならなかった。

「また動いた!」

その思いとは別に貨物車は動いては突然止まるを繰り返していた。

「……動くか止まるかどっちかにしろ」

見ていられずにぼやく。

その時、貨物車が急発進を始めた。そのまま調査部が対応していたドローンに衝突して緊急停止。衝突して飛ばされたドローンはそのままガチャーンという音を立てて壁に叩きつけられ落ちた。

あっさりと片付けてしまった貨物車にトマスを含む調査部は言葉を失った。


操縦桿を握り締めてしたサラは深く息を吐いた。

「何とかなりました……」

「本当にね……」

窓から動かないドローンを見ながら言ったサラの言葉に同意する様にノーマは頷いた。

見ていて気持ちが落ち着かなかった。動いては止まって、動いては止まるの繰り返し。やっとの事でドローンに当てて動かなくなったのには嬉しいが、今のは偶然だろうと思った。

しかし、動かないのは動かない。安全になったのに変わりはない。

「それじゃ、リーダーの所に……きゃっ!」

「きぁぁ!」

その時、貨物車後方に何か強い衝撃が当たり車体を揺らした。

「な、何!?」

何が起こったのか分からない。サラは端末を操作して後方部を攻撃してきたそれを窓に映した。

「これは!」

窓に映しだされた物を見てサラは驚きの表情を浮かべた。

四角い箱が2つくっついた様なガーディアンが2体。ガーディアン・ダブルボックス。このコロニーに備え付けられている最強ガーディアンであった。


「何だあのドローンは?」

同じように貨物車を撃ったドローンを見た調査部に衝撃が走った。

第16異跡は小型で宙に浮くドローンしかいないと思われていた。だが、現れたそれは当てはまらない。第16異跡に全く違うドローンが現れたのだ。

「くそ!」

トマスは吐き捨てた。やっとドローンが動かなくなったと思ったら新な確認されていないドローンが現れたのだ。

探求者時代なら当たり前で自身で対処するからと割りきれたはずだが、今は調査部。しかも、仲間を避難させるはずなのに全く出来ない。苛立ちだけが募る。


サラは端末を操作して貨物車の状況を見ていた。

「後部の損傷大!浮遊エンジンの損傷は軽……よかった、大丈夫見たいですがこれは……」

サラは一通り状況を述べると窓に映しだされたガーディアンを見た。

外に出れば襲って来る事はないだろう。だが、ジン達はどうなるのか。現れた今、ガーディアンが向かわないとも限らない。それに、サラはコロニーの奥へ行きたく仕方がなかった。

だから、もう一度操縦桿を握った。

「待って」

ノーマは操縦桿を握ったサラを止めた。

「操縦を変わって」

「え?」

思いもよらない言葉にサラは目を丸くした。

「不安な操縦だったけどとりあえずどうすれば動くかは分かったから。こう見えて、乗り物の扱いは得意な方なの」

それにとノーマは続けた。

「あのドローンがジンの所に行くとも限らない」

ノーマの言葉を聞いたサラは考え込んだがすぐに操縦席から離れた。

ノーマは操縦席に座ると操縦桿を握った。

(落ち着け)

操縦を任せろとは言ったが正直言って不安だし1000年前の乗り物を操縦するとは思ってもいなかった。その興奮を抑えようと深く深呼吸すると操縦桿を強く握った。

まずはドローンに向けて車体を正面に向ける。操縦桿に左に倒してゆっくりと旋回。

貨物車はノーマの操縦により正面をドローンに向けた。

(よし!)

次に操縦桿を前方に倒す。これが進む操作である。

「いっけー!!」

倒した事で貨物車はドローンへ向かって突進、しなかった。ノーマは衝突する直前、操縦桿を右に大きく倒してドローン2体に向けて後方をぶつけた。

ぶつけられたドローンはそのまま突き飛ばされた。胴体の一部がへこみ箱と箱を繋いでいる継ねが外されバラバラになっていた。

これで終わったのならよかったのだが、ノーマがとった手荒い操縦は操作を失いそのまま旋回して壁に衝突した。


「いっつぅ~……」

ノーマはうめき声を上げた。

もう少し上手く行くかと思っていたのだが結果はご覧の通り。ぶつけた衝撃で体が少し痛い。

「サラさん、大丈夫……!?」

サラを心配して声をかけたノーマだが、途中で声が途切れた。

サラが助手席の扉から出ていたのだ。何も言わずに。

「ちょっと!?」

ノーマは慌てて声をかけた。

サラはノーマの声に気にもとめずに近くにあった壁に備え付けられている箱の蓋を開けて中から手帳の大きさ程の端末を手に取り、ガーディアンが現れたであろう通路へと入って行った。

「ちょっと待って!」

「ノーマ無事か!」

サラを追おうとしたノーマだが、トマスの声に体が止まった。

「リーダー、大変な事になった!」

ノーマは聞こえる様に大声で叫んだ。そして、サラが異跡の奥へと行ってしまった事を叫んだ。

それに対してトマスの反応は、

「ノーマ、今すぐこっちに来い!」

「え!?」

トマスの指示にノーマは声を失った。

「いいか!今お前が行ってどうにかなる事じゃない!俺達がまとまって行ってもだ!」

トマスの指示を聞いたノーマは一度通路を見た。今なら急げば間に合うかもしれない。だが、トマスの指示は行くなだ。

ノーマは歯を噛み締めながらトマス達調査部がいる入口へと走った。


「ノーマ!」

ドローンは現れず無事に入口へとたどり着いたノーマを調査部が声をかけて迎え入れた。

ノーマはトマスの前に立つと顔がうつむいた。

「リーダー、すみません。私がいながら……」

「今はお前を責めても意味はない」

謝罪を言うノーマをトマスは遮った。

「急いで本部に連絡を入れろ!情報解析第2班預かり者が異跡の中に入り消失。至急探求者の増援を求むと。新な入口の確認も忘れるな!」

「はい!」

トマスの指示に1人の調査部がその場から駆け出した。

トマスは格納庫を見て考えていた。

今回はどうしてこうも次から次へと問題が起こるのか。この問題が今回の調査、そして、今後の調査に響かない事を祈った。

投稿後に段落下げるのを忘れている事に気がつきましたorz

違和感があったらすみません。

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