プロローグ
白く丈夫にできた巨体なテントの中に1台の車が迎え入れられた。車はテント内部に入るとすぐにブレーキをかけて止まった。
車が止まると運転席で運転をしていた運転手の他に後部座席に2つの影があった。そして、その内の1つの影が後部座席のドアを開けて降りた。
車から降りたのは20代後半に見える薄い金髪の男性1人だけであった。
後部座席に座るもう1人の青年は降りずに車の窓から見えるある物を見ていた。それは急こしらえにテントの端となるべく隙間がない様に密着されていた。
ここの担当者であろう女性の声と隣に座っていた男の微かに聞こえるやり取りを聞きながら20代にもいかない青年は静かに相席の男とは逆の車のドアに手をかけゆっくりと出た。
鳶色の髪に同色の鋭い目付きは初めて見る人には近寄りがたい印象を与えるだろう。もう少し目付きが優しければ好青年と見られたはずだ。実際、青年も目付きの鋭さは自覚はしていても気にはせず、それに合間ってか言葉数も少ない。
青年は車の窓から見つめていた物を再び見ると脳裏に様々な思いが巡り、周りを目で見回した。
白いテントの布から日差しの光が漏れ、上から吊るされているランプの明かりが内部全てを明るく照していた。そこから更に目線を反らすとまるで闇に包まれた様な入り口と更に奥へ長く続く道が見えていた。
見慣れたその入り口を目にした青年はただ見続けた。その入り口の先を知る者はそこがどの様な場所であるか知っている。そして、それが死地へと向かう入口であることも。
「行くぞ…」
話が終わったのか、脳裏を巡らせていた青年の頭に素っ気ない相席だった男の声が響いた。
「ジン」
声をかけられた探求者ジンは鋭い目で振り向いた。
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