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1 黒猫

何だかよく分らない中に高校最初の夏は始まっていた。


杏子という、このお人好しで情に流されやすいやつは、

唯一自分の能力を知っている人間だった。

そんな彼女に振り回されてばかりの自分はゆう[女子]。

今分かっている事は俺はフツーじゃない。


ある日の放課後。

「莠、いいこと思いついた。」

『お前の考える事ってろくでもないことだろ』

「ひどいなぁ。本当にいいことだって、

あんたのその能力使って夏休みの間仕事してみない」

『仕事って何だよ。』

「あんたの相手の心や記憶を読む力を使って探し物の手伝いをするんだ。」

『はぁ?!』



そして今最初の仕事が始まろうとしていた。



知人が所有していたアパートの一室を、事務所として使っている。

『こんなので客なんか来るのか』

「最初は、こんなもんでしょ。大丈夫だって。誰か来たみたいだよ。」

ドアを開けて入ってきたのは、小3ぐらいの男の子。

「すいません。ここって失くしたもの何でもみつけてくれんですよね。」

不安げに男の子が聞く。答えたのは杏子だった。

「えぇ、そうです。だから“探し物屋”って言うんですよ。」

ここに座っててください。ほら莠、出番だよ。」

客が、ガキだということが気に入らない。

しぶしぶといった感じで近くに行く。

『ほらガキ。さっさと失くしたものについて、話せ。』

「莠、初めてのお客なのにその態度はないでしょ」

『っるせぇ。ガキはガキだ。』

そんな無意味で客に対して失礼なやり取りをしていると、

さっきから緊張していたはず男の子がクスッと笑った。

それに気づいて2人はそれまでのやり取りを中断した。



『いくら出せる。』

「何がですか。」

『金に決まってんだろ。馬鹿』

「いきなりそれはないでしょ。」

『杏子。お前は黙ってろ。あといつもの様に記録しとけ。』

「はいはい。分かりましたよ。」

文句を呟きながらもノートを取りに行った杏子。

「5000円しかないんですけどやっぱり駄目ですか。」

考えこむ莠。そして、

『しかたない。話は聞いてやろう。』

「はい。猫がいなくなったんです。昨日まではちゃんといたのに。」

今度は、泣きそうな顔になって話し始める。

『どんな猫なんだ。』

「えっと、黒くて尻尾の先と右耳が白いんです。」

『目、閉じてろ。昨日の事をできる限り思い出せ。』

莠の顔が真剣になった。能力を解放しているのだろう。

こういときは話しかけてはいけない。黙って見守ることしかできない。



男の子が考えている事、頭に浮かんだこと全てが流れてくる。

猫の姿が見えた。そこで

『ストップ。今考えていたことをそれだけを考えて。』

戸惑いながらも何とかやってみようとしている男の子。

5分くらい経っただろうか莠が目を開けた。

『もういいよ今日は帰れ。金持って明日来い。』

そして男の子をドアまで引きずって行き杏子が止める前に締め出した。

「なんであんなことしたの。莠らしくない。」

『無理だ。探すことはできない。』

「なんで。やっぱ莠変だよ。いつもと違う。」

『俺のことなんてどうでもいい。問題はあのガキと猫だ。あの猫は...。』

えっ。その続きを聞いた時私は、固まった。

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