表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 白い稲妻   作者: THIS
4/4

刀鬼

・・続いて更新。さて・・白い稲妻の正体・・この話で分かる人は分かってくれると思います。

 

 白い稲妻がとっさに身を引いたのは、勘に近い。だが、その判断は間違っていなかった。突然姿を消し、そして次の瞬間鋭い閃光とともに自分の目の前に現れたのだ。

 

 抜き放たれた刀の一閃は彼の体を覆う白いスーツを浅くだが切り裂く。


「ほう・・。」


 一方の赤い影は自分の剣が避けられたことに軽く驚く。


「まさか・・これをかわすことが出来る奴がいるとはな。」


「いきなり何を・・・。」


「問答無用!」


 白い稲妻の言葉を切るように赤い影は黒い刀を振り下ろしてくる。


 白い稲妻はそれを辛うじてかわす。だが、赤い影の刀は止まらない。無数の斬撃がその刀から放たれる。


 その刀をある時はかわし、ある時は金属のように固くなった拳の甲で受け流して防ぐ。だ

が・・拳と刀では間合いの点で白い稲妻にとっては分が悪い。


「くっ・・このままじゃ・・・。」


 かわしきれず、受け止めきれずに全身に無数の切り傷が出来る白い稲妻。赤い影の剣はそれだけ鋭く早く、精密で、そして重かった。


 だが、白い稲妻も反撃に出る。振り下ろしてきた赤い影の刀を見切り、拳で横に払う。そして、それと連動させる形で赤い影の左胴に回し蹴り繰り出す。


 不意を突かれた反撃に赤い影の体がよろめく。そこにさらに追い討ちを掛けるべく、踏み込み右肘で鳩尾をえぐるように突き出した。


「ここで反撃してくるとはな。」


 だが、その一撃を赤い影の左腕が受け止めていた。刀を使うには狭すぎる間合いに舌打ちしながらも、刀の柄で白い稲妻を殴り飛ばす。


「ぐあっ!?」


 吹き飛ばされていく白い稲妻。その後を赤い影が迫る。しかし、それを白い稲妻の全身から放射される電撃が阻んだ。


 視界を失い、足を止める赤い影。白い稲妻は空中で身を翻らせ、ビルの壁に足をつけてその壁を思い切り蹴り上げる。ビルの壁にヒビが入るほどの力で飛び上がる白い稲妻。そして、勢いそのままとび蹴りを放つ。


「ぐおおおおおおおおっ!?」


 突然の攻撃に避けることも出来ず、凄まじい勢いが乗ったそれを交差させた両腕で受け止める赤い影。だが、白い稲妻は蹴りを命中させた瞬間にさらに足に力を込め、後ろに飛び上がる。突進に踏みきりの反動まで加わった、半端ではない破壊力に踏ん張りきれず、赤い影は道路を足で削りながら反対側のビルに激突していった。


 宙返りをしながら地面に着地する白い稲妻。砕けたビルの壁から、ゆっくりと赤い影が姿を見せる。


「さすがに・・・今のは効いたな。だが・・まだこれからだ。」


 そして、再び刀を構え、切りかかろうとする。


 だが、一発の銃声が赤い影の言葉と刀を止めた。


 赤い影がとっさに刀を払い何かを切った。


「・・・悪いが、これ以上こいつと戦うのはよしてくれないか。」


 戦いを見ていた男は手にしていた拳銃の引き金を再び引く。派手な音とともに放たれた銃弾は真っ直ぐに赤い影の方へと向かっていく。だが・・その銃弾は彼の刀が切り落としてしまった。


「マグナムを切り払うか。」


「この程度の芸当、白い稲妻にもできるはずだ。」


 赤い影の視線が男の傍らで唸り声を上げている狼にむけられる。


 狼はいつでも飛びかかれるように、体勢を低く構えている。


「・・・さすがに邪魔が多いぜ。今回は引いた方がよさそうだな。」


 赤い影は刀を鞘に収め、白い稲妻の方を睨みつける。


「・・・お前何者だ?」


 白い稲妻の言葉に軽く息を抜き、間を置いて言葉を放つ。


「俺の名は刀鬼。その名・・覚えておけ。白い稲妻。」


 赤い影―――刀鬼の全身から衝撃波が放たれ、砂埃が舞い上がる。そして、その砂埃とともに、刀鬼の姿は

いなくなっていた。





 忠司が現場に駆けつけた時にはすべてが終わっていた。


 救急車が何台も到着し、倒れた人たちの手当てと搬送を手伝っている。


「おいおい。お前らしっかりしろ!」


 そんな中、へたり込んだ暴走族の少年に発破をかけている男がいた。


「もっと怪我がひどい奴らがいるんだ。痛いのはお前達だけじゃないぞ!」


 あまりにも的確かつ、きつい一言。そして有無を言わせない不思議な勢いがあった。


 その迫力に、暴走族の少年達もいそいそと怪我した人たちの搬送や手当てを手伝っている。気難しい彼ら

をここまで思い通りに動かせるのは、相当の器量が必要だといえる。


「・・・ん?」


 忠司はその男にどこか見覚えのあることに気付く。


 いつの頃だったのだろうか、すぐに思い出せない。だが、昔、出会った強烈な印象を持った少年と、今の

彼のイメージがどこか重なってしまったのだ。


「・・・おっ?」


 そして、男も忠司に気付く。


「・・・忠司・・さん?」


 忠司さんという言葉と、忠司の中にあった少年のイメージが男と重なる。


 荒れていた彼からしたら、ずいぶんと印象は変わったが、それでも間違いはなかった。


「真仁なのか?」


「はい。」


 青年―――真仁は爽やかに応える。


「・・・お前のなのか?見違えたな。」


 忠司は親しげに真仁に歩み寄っていく。彼が知っているころよりも目の前の青年は背が高くなっていた。

忠司が顔を見上げてしまうくらいに。


「・・・はい。夢を叶えて、帰ってきました。」


「夢だと?」


 真仁はコートのポケットから何かを取り出す。そして、それを忠司に見せた。

「お前・・・警察官になったのか?それに階級は・・・警部だと!?」

 

 真仁が忠司に見せたのは警察手帳。そこには制服をきた真仁の姿と、その階級が書かれていた。


「新しい部署の隊長になりますから、これくらい当然です。」


「新しい・・部署?」


 忠司はそこでようやく思い出す。対生体兵器対策班が発足されることを。そして、その隊長が一足早くやってくることを。


「まさか・・・噂の部署の隊長というのが?」


「はい。自分です。」


 元気よくそう応える真仁。そんな彼の元に巨大な狼が歩いてきて


「ねえ、この人、真仁の知り合いなの?」


と、尋ねてきた。


「・・・・!?」


 巨大なだけでも十分驚くに値するだろう。だが、その狼は大きいだけでなく、人語も話してきたのだ。


「・・・テツ。この人を驚かせるな。」


 狼――テツをたしなめる真仁。その一言に人懐っこく振られていた尻尾がしおれていくように下がってい

く。


「こいつ・・しゃべるのか?」


「驚かせてすみません。なにぶん人懐っこい奴なんで。」


 真仁は慌ててフォローを入れながら、脳裏に数分前のことを思い返していた。






 刀鬼が立ち去った後、白い稲妻と真仁は対峙していた。


「相変わらず、この街は厄介ごとが多いよな。」


「おかげで休む暇もないよ。」


 白い稲妻と真仁のやり取りは自然で、まるで昔からの友人のような雰囲気だった。


「この人があの噂の白い稲妻?」


「・・・えっ!?」


 その二人の会話に、突如割り込んできたのがテツであった。白い稲妻は突然割り込んできた第三者の存在にあちこち視線をさまよわせる。


「ここだよ。」


 そしてようやくその視線をテツに定める。


「君・・・しゃべれるの?」


「まあ・・・始めはみんな面食らうよな。」


 真仁は苦笑しながら、テツの頭を撫でてやる。テツの尻尾が心地よさそうにばたばたと振られている。


「まだまだ、修行不足だ。」


 白い稲妻が驚いた事を少し恥じているところに、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。


「そろそろ、退散したほうがいいみたいだね。」


「そうだな。色々話したい事はあるが・・・それはまた今度にしようか。」


「うん。またね。」


 その言葉を残し、白い稲妻は飛び上がる。ビルを蹴りあがり、その屋上まで飛び上がると、月を背に、マフラーを靡かせながらビルとビルを飛び越えて去っていった。



「・・・そうか。そんな事が。」


 真仁が車で忠司を家まで送っていく中で、白い稲妻と刀鬼と名乗る謎の男の出現。それを忠司は真仁から

聞かされていた。


 もちろん、白い稲妻と真仁とのやり取りを除いてである。


「・・・実力は彼と五分といったところでしょうか。刀がある分、接近戦は刀鬼のほうに若干分があるといったところでしょうか。」


「・・・どっちも化け物並みに強いのには変わらないな。」


 後部座席にはテツが眠っていたが、二人の会話には耳を傾けているようだった。


「そうですね。」


「・・・そう言えば、お前、俺の家に来るのは初めてだったな。」


「はい。あの時は刑事としての忠司さんに色々迷惑をかけていましたから。」


 数年前の真仁は色々と荒れていた。普通の人間ではない生体兵器として生まれた彼は社会からはじき出さ

れ、すれ違う人たちにすべて牙を向けていたのだ。


「でも、おかげで今の俺がいます。」


 そんな真仁を変えたのは二つの出会いだった。


 一人は自分よりも年下ながら、己の力を皆のために使っていた少年。その拳に、その言葉に、自分の弱さと甘えを知った。


 もう一人は、いつも彼を心配してくれた刑事。


 独りだった彼を孤独から救い、道を指し示してくれた。そのおかげで己の弱さを受け止めることが出来た。


 二つの出会いを経て、真仁は今の道を志したのだ。己の力と心を色々な人のために使おうと決めたから。


「・・・だから、俺はこの街に帰ってきました。今度は俺が忠司さん達を助ける番です。」


「達・・だと?他にも助ける相手がいるのか?」


 真仁は笑みを浮かべながら明確に答える。


「・・まあ・・そうです。」


「・・・そうか。」


 忠司はその言葉に満足したのか、感慨深そうに何度も頷いていた。


 やがて車は忠司の家にたどり着く。


「ここが忠司さんの家ですか。」


 真仁も車を降り、忠司の家を眺める。


「ちょっと上がれよ。俺の家族も紹介したい。」


「えっ?いいのですか?」


 真仁は家を訪れるのも初めてならば、忠司の家族も会ったこともまだないはずだった。初対面といってもいいはずなのだ。そのために、少しためらいを覚えてしまう。だが、そんな真仁を忠司は笑い飛ばす。


「遠慮せず、晩飯でも食べてくれ・・・。」


 忠司が「ただいま」といいながら家に入っていく。


「ちょっと!僕も連れて行ってよ。」


 そこにテツからの批判が飛んでくる。


「あっ・・・そうだな・・・。」


 真仁は忠司のほうを見る。性格はともかくとして、普通の犬よりも遥かに大きいテツをいきなり家にあげ

てもいいのものか。普通の人ならテツを見ただけで腰が抜けても可笑しくない。だが、あげてやらないとテ

ツが拗ねてしまう。


 そう考えていた矢先に、リビングから足音が聞こえてきた。


「あれ?お父さん・・お帰りなさい。」


 出迎えたのはエプロン姿の清音だった。


 彼女は父から、もう一人のほうへと視線を移して固まった。見間違いがないのか、何度も瞬きをする。見間違いはなかった。


「あっ、あなたは夕方の・・・。」


 顔を真っ赤にしながら、清音は口ごもる。


「そういう君は・・・。」


 真仁も清音の顔を見て、驚く。


 何しろ目の前には夕方に、車から子供を庇ったところを助けた女性がいたからだ。


 真仁自身は彼女を助けた時にはこの街暮らす以上、また会うかも知れないと思っていた。だがこれほど早

く、しかも意外な形で再会することになるとは思いもしなかった。


「何だ?清音と知り合いだったのか?」


 固まってしまった二人を交互に見る忠司。


 その質問に「ええ」と簡潔に答える真仁と清音。それが微妙にシンクロしていた。


「まさか・・・彼女、忠司さんの娘さん?」


「そうだ。娘の清音だが?」


 あっさりと事実を肯定されてしまう真仁。


「あの・・夕方はありがとうございます。まだ・・・お礼は言っていなかったです。」


「いや・・・そんなの。」


 真っ赤にしながら、しどろもどろに礼を言う清音。その言葉に謙虚に答える真仁。


「何騒いでいるの?」


 そこにもう一つの声が加わってくる。


 それはお風呂上りの慶であった。パジャマに着替えたばかりなのか、まだ乾ききっていない髪をタオルで

拭きながらやってきた。


「・・・・お父さん帰ってきたんだ。お帰り・・・なさ・・・い?」


 そして、慶の視線は忠司の後ろで固まっている真仁に留まる。


 一方の真仁も慶の姿を見て唖然としている。


「どっ・・どうしてお前が・・・ええっ?」


 思わず慶を指さしてしまう真仁。その指先は大きく震えていた。


「なっ、何で・・・っ・・えええっ?」


 訳がわからないといいたげな慶。


『ええええええええええっ!?』


 二人は驚きと混乱のあまりに互いに指を指したまま叫ぶ。


 あまりの叫び声に、傍にいた忠司と清音は耳を塞ぐ。


「・・・・なんだ?お前らも知り合いだったのか?」


 驚く二人の間で忠司の呆れた声が小さく響いた。


  短時間での更新故・・・感想や評価がないのがとても不安に思ったり。

 

 これは私の小説の原点でもあります。

 

 それゆえ・・紹介してみたくなり・・。



次回予告「ヒーローとしての顔。」


???「本当に疲れたよ。でもこの街にやってくるなんてびっくりだ。」


真仁「それはこっちのセリフだ。前よりもはるかに強くなっていやがるし。」


 フランクにしゃべる二人に注目してください。

 そして・・白い稲妻の正体がこの話で判明します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ