11 接触
放課後のファーストフード店は、制服姿の学生たちで賑わっていた。
友達と談笑をする者。一人の時間を楽しむ者。教科書やノートを広げて居座っている者。みなそれぞれの時間を過ごしていた。
リックスとスチュワートも、雑音としてその中に紛れていた。
「最近、楽しそうだよな。いいことでもあったか?」
「そうか?」
ハンバーガーを囓るスチュワートとは対照的に、リックスはアイスコーヒー一つだけだ。
「ああ。結構浮かれてるよ、お前」
リックスは、ズズっとストローを啜っていく。
「まあ…気のせいだろうとは言えないな。お前には伝えておくか」
「なんだよ、そのもったいぶった言い方は…」
空になったカップをトレーの上に置き、一呼吸する。
「気になる子がいるんだ」
告げるやいなやスチュワートの表情が、疑問から興味へと変わっていく。
食べかすのついた口角がニヤっと上につり上がった。
「ほほう」
「…言っておくが、オレはそのことをデートに誘いたいとかそういうことじゃない」
「あ? どういうことだよ」
「誰も恋をしているとは言っていない。ただ、個人的に興味があるんだ」
「そういうのを好き言うんじゃないのか?」
「違う」
リックスは即答する。
「じゃあ、なんでその子のことが気になってるんだよ?」
「そうだな…強いて言うなら…観察対象だな」
「観察対象?」
「ああ、オレはどうしてもその子が知りたい。だから、考えているんだ」
「だからそれが好きってことじゃないのか?」
淡々と答えるリックスに、スチュワートは納得いかない様子であった。
「…傲慢なんだよオレは」
「は? なーんだそれ? お前ってよく分かんねえよな」
「ああ。まあ、その内教えてやるよ」
スチュワートを置いて、リックスは先に寮へと帰ることにした。
翌朝のことである。
電車の中で美亞未と談笑するのが、朝の日課となっていた。リックスが、希亞樹の姿を電車の中で見たのは、あの一度だけであった。
「ああ……たまたま早起きしたみたいで、後はもういつも通りギリギリだよ」
何気なしに美亞未に聞けば、苦笑交じりに答えてくれた。
「そうか。気まぐれなんだな」
「気まぐれというか……」
『お客さまにお知らせします。ただいま線路内に――……。再開見込みは……よって暫く動きません』
美亞未の言葉を遮るように電車内にアナウンスが響いた。
どうやら止まってしまったようだ。
「げっ、最悪あと二駅なのに……」
眉をひそめて、スマホの画面を見つめていた。
「どこで乗り換えても遅刻確定だ……」
深いため息と共に、スマホをバッグの中へとしまい込む。
「仕方ないさ。こればかりはオレたちがどうにも出来ることじゃない。……降りるか?」
たまたま駅に止まっていたので、ホームへの扉は開かれたままだ。
「歩くの?」
「いや、たまにはサボるのも悪くないだろう?」
「えっ!? あ、ちょ、ちょっと……!」
リックスは美亞未の手を取り、ホームへと連れ出していた。
「サボるってリックスくんって意外と不真面目だよね」
改札を出た所で、手を離す。
美亞未はそのことについては、特に文句は言わなかった。
「ああ。ちょうど、君とちゃんと話をしたいと思っていたんだ」
「話? 私と?」
小首を傾げる美亞未に、リックスは淡い微笑を返す。
「……確か、近くに公園があったはずだ。そこで休もう。君も立っていて疲れているだろう」
風が吹いて、美亞未のスカートを揺らした。




