第3話 癒え切れていない茜ちゃんの傷 一緒に美容院と偶然の再会
さてっ寝ようと思った瞬間ノック。開けると枕を抱えた茜ちゃん。
「ねぇ一緒じゃだめ?」
一瞬戸惑ったけれど、床なら落ち着いて話せるしいいかなと思い
「いいよ。一緒に寝よ」
と言って一緒に布団に入った瞬間向き合って、昨日の夜のようにおでことおでこをそっと付け合って見つめ合いしばらく時が経つと一筋の涙が・・・・ぼくはあえて黙る
「私、今本当に幸せ。おじさんとおばさんの子になってから毎日穏やかに過ごせているし、これからは葵ちゃんもいるから」
ぼくは頷いて茜ちゃんを胸元で抱きしめる・・・・
きっと茜ちゃんはあの家=牢獄から抜けてきたんだ、あの事故という代償を払って。おじさんとおばさんは転生してないみたいだし、だとしたらこれをうちのみんなで護らないと・・・
茜ちゃんの両親は共働きでともに高収入。おじさんは大学附属高校の校長で次期総長の人、おばさんは女子大学の教授だったけど、お互い自己主張が激しかったみたいで諍いが絶えず、忙しさときは茜ちゃんに八つ当たり、それがなくても茜ちゃんは怯えていたようだった。
越してきた頃茜ちゃんいつも浮かない顔をしていて、おじいさんとおばあさんがうちに呼んで預かることが増えた。最初のうちは硬く隅っこにうずくまっていた。
しばらくしてなれてきたけど、残念ながらうちだけが安寧の場所だった茜ちゃん。さらにぼくたち一家が出かけるのを恨めしそうに見る茜ちゃん。それを察したおじいさんとおばあさんが声を掛けて4人で出かけるようになった。
その時の茜ちゃんほんと楽しそうで、帰る時間が近づくと憂鬱な表情に戻っていった。ぼくのうちにいるときも。
茜ちゃん眠ったみたいだけど、しばらく一緒に寝ようかな。別に変な気はないよ、お互い温もりを絶やさないために。それから気持ちの吐露を促さないようにしないと・・・・
もう朝。温もりが増した布団から出るのは辛いけど、気合を入れてバッと起き上がる。顔を洗おうとした瞬間、鏡を見ると、また髪が伸びて余計て長さは肩の下あたりで雷様みたいな寝癖にいなっている。だけど、ぼくは助平じゃない・・・・・
朝ごはんの納豆と昨日の湯豆腐の残りを食べて、もう一度髪を洗い、乾かすけど広がるので、アイロンで押さえる間、なんか女の子のシャンプーの匂いも漂ってくる。
悪戦苦闘の末、ショートパンツにラクダ色のタイツ、黒いニーソにぼくは水色のパーカー、茜ちゃんはピンクのパーカーのリンクコーデを着て自転車で美容院に向かう。
着いたのは確かパーマアイコがあった場所だけど、Hair&Healing Amourになってる。おそるおそる入るとどこかで見覚えがある人が、
「いらっしゃい茜ちゃん。まぁ葵くん久しぶりねぇ。前より可愛らしくなって」
と言って出迎えてくれたのは、そうパーマアイコのオーナーだった愛子さん。母さんの同級生で昔は髪結い、それからパーマ屋(昔は美容院や美容師さんをそう呼んでいた)になった人。この人も転生したのか・・・・・
早速ぼくは促されて髪を洗い、鏡面台に座ると愛子さん
「結構伸びているのね。せっかくだから伸ばした髪型にしましょ」
そう言って長さはほぼそのままに切り揃えて調整されたヘアスタイルはボーイッシュな女の子のロングヘア。
「まぁ可愛らしいこと。これなら活発な感じもするわ。でも葵くん黒目が大きくてうるうるしておしとやかな感じだから女の子女の子のほうが似合うけど」
この髪型まぁいいかなぁ。髪を前に持ってきたり、オールバックのハーフアップやリーゼントみたいに流したりもいいかも。
茜ちゃんの方は前髪付きのサイドアップで両サイドから三つ編みを結んで、丸中屋で買った髪飾りを付けている。終わって愛子さん
「お正月着物着るんでしょ?そうしたら髪を結ってお化粧もしましょ。今から楽しみだわ」
と言いながらお会計。それって茜ちゃんだけだよなぁ・・・・
美容院を出てお互い褒め合うけど、なんか引っかかるよなぁ、愛子さんの言葉に。茜ちゃんの顔改めてみるとシャープで目も釣り上がり気味な男顔で、キツそうとか性悪そうって言われてたことを思い出した。ろとぼくと一緒だと、お姉さん?とも実は昔から言われてもいた。
駅前を通るとちょっと恥ずかしそうに手を繋いでいるぼくらくらいの男の子と女の子がいて、男の子は手を離して、僕らに声を掛けてくる
「葵くん?」
「そうだけど?」
「ぼくだよぼく。さーやだよ」
よく見ると・・・そうさーやくん
「さーやくん、50年ぶりだよね。元気になったみたいだね」
「うん、おかげさまで、すっかり元気!」
「隣の子は?」
茜ちゃんが尋ねると、女の子は
「真綾です」
とちょっと伏し目がちで短めな返答。
「これからぼくら乗り鉄に行くんだ。50年越しの約束で」
「ぼくらも一昨日50年越しの約束を果たしたんだ。一緒にデパート行って」
「茜ちゃん良かったね。葵くんも戻ってきて」
「うんよかったよ、ところで隣の子は恋人でしょ?」
「まぁなんていうか・・・とにかく約束だからまたね」
と言って少し恥ずかしそうに改札をくぐった二人。
「私初めて会ったよ。まーやちゃんと」
茜ちゃんも知らなかったようで
「さーやくんとは?」
「さーやくんとは6年前から、それで一緒にお祈りしてたんだ」
「何を?」
「葵ちゃんが早く死んでくれますようにって」
「ぼく死んでないし、縁起も意地も悪いなぁ」
「そうしないと、だめなんじゃないの?」
「どっちにしても失礼!」
普通死んでくれなんて、嫌いな人間に対して持つ感情じゃない?それに異世界物でも死なずに転生は結構多いよ。巻き込まれたり、召喚されたり。
さーやくんは昔ぼくらの学校の近くの制服にタイツが義務の私立小に通っていた子で、公立小の連中がからかっているのを助けてから仲良くなった。それと鉄道が好きで、お父さんはこの近くの私鉄の技師で、著名なマニアらしく、著作もあったらしい。
だけど、大病していて、小3あたりから、清手の病院に入退院を繰り返して、茜ちゃんの事故のすぐ後の大晦日に亡くなっていた。まーやちゃんとはきっとその時に仲良くなったのかも。それとさーやくんもぼくとおなじになっている気がしたけど・・・
それとあの二人、ショーパンとミニスカの生脚だったけど、大丈夫かなぁ・・・
お次は商店街の乾物屋さんで、黒豆、ごまめ、昆布、干瓢、身欠きにしん、高野豆腐を買って家に戻る。それにしてもお正月なんて何年ぶりだろう?一人になってから、年末年始関係なく仕事して、あらかた手が空いたところで休んでたから。
時節ごとの行事は手間が多いけど、悪くはないかな?そう思えるのも、みんながいるからかな?
それと近々さーやくんたちとも遊びたいなぁ。
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