沖田総司と迷子のサンタ
それは、師走の24日 ちょっと不思議なお話です
ある冬の夕暮れ。
巡察を終えて屯所へ戻る途中、沖田総司は道端にしょんぼりと座り込む白髭の老人を見つけた。
赤い服に、白い縁取り。
やけに目立つ格好だが、寒さのせいか肩をすぼめている。
「おじいさん、どうしたの? 迷子?」
沖田が声をかけると、老人は困ったように微笑んだ。
「ええ……子どもたちに贈り物を持ってきたのですが、
どうにも避けられてしまって。
親御さんに話しかけると、睨まれてしまうんです」
「それは困ったねえ。
ここ、冷えるし……とりあえず、あったかい所に行こうか」
迷子の老人に親切にするのは当たり前。
沖田はそう考え、あっさり決めた。
「うちの屯所に来なよ。温かいもの、出せるから」
⸻
屯所に着くと、沖田はすぐに湯と食事を用意した。
老人はほっとした顔でそれを口に運びながら、沖田を見つめる。
「不思議な着物だね。君はどこから来たんだい?」
「これ? 新選組の羽織だよ。ちょっと派手だよね。
ここで暮らしてるんだ」
沖田はくすっと笑い、今度は老人を眺めた。
「おじいさんの服も面白いね。
赤くて、ふわふわで、あったかそうだ。
奥さんか、お嫁さんが仕立てたの?」
「私は……サンタクロースです」
「ふーん。さんた・くろうす殿かあ。
苗字があるってことは、武士かな?
どこのご家中の方?」
「フィンランド、ロヴァニエミです」
「……うーん」
沖田は少し首をかしげた。
「ご老人だし、ちょっと忘れちゃってるのかもね。
でも、こんな目立つ服だし……
山崎さんに相談してみようか」
「誰か、連れはいなかったのですか?」
「さっきまで、アドルフというトナカイが」
「ふふ。まあ、いいかあ」
沖田は山崎を呼び、事情を任せると、
自分は巡察の報告書を書くため席を外した。
⸻
しばらくして、山崎が戻ってきた。
「サンタ殿は、北の地の僧侶のようです。
トナカイという鹿に乗って旅をしていたとか……
話の真偽はともかく、
然るべきところで保護していただくのがよろしいかと」
「お坊さんかあ……それなら、西本願寺だね」
沖田はうなずいた。
「身寄りのない人や、具合の悪い人を、
ちゃんと受け入れてくれる」
西本願寺へ向かう道すがら、沖田は何気ない話を続けていた。
サンタクロースは、なぜこの町では子どもたちに避けられるのか、
どうしても分からない様子で、何度も首をかしげる。
沖田はそれを責めるでもなく、にっこりと笑って言った。
「うん、そうだね。でもさ、いきなり声をかけられたら、
ちょっと怖かったのかもしれないね。
ゆっくりでいいんだよ。焦らず、仲良くなればさ。」
赤い服の老人は、少し考えるように黙り込み、
やがて、ほっとしたようにうなずいた。
寺に着くと、僧たちは事情を聞き、
静かで温かな場所へ老人を迎え入れた。
小坊主が、老人の赤い裾をじっと見ていた。
「ねえ、おじいさん」
老人が振り返る。
「きれいで、暖かそうな服ですね。
お寺にようこそ、いらっしゃいました」
そう言って、小坊主は深く頭を下げた。
老人は一瞬きょとんとした顔をし、
それから、くしゃりと笑った。
沖田総司も、その様子を見て、ふわりと笑う。
赤い服の老人は、ようやく安心したように、
ゆっくりと息をつく。
沖田はそれを見届けると、軽く手を振った。
「じゃあね、おじいさん。
あったかいところで、ゆっくり休んで」
冬の夕暮れ、寺の鐘の音が、やさしく響いていた。
おじいさんがほんとうにサンタさんだったのかは分かりません。
小坊主さんと仲良くなったらいいですね。
現実には、私は、子供には 知らない人から 何かもらってはいけない と教えています。
でも、ここのおじいさんが子供に贈り物をあげたい気持ちは素敵だな と思います。
宗教には無縁な私です。メルヘンとして楽しんでいただけると嬉しいです




