「彼殺人事件」
初投稿です。
「殺人事件だよ、乃亜ちゃん」
「はぁ…誰が殺されたんです?」
「僕だよ」
彼があっけらかんと、いつも通りの笑顔で言った。カーテンが、半透明の彼越しに揺れているのが見えた。
昨日、彼が死んだ。飛び降り自殺だった。皆は呆然としていたし、先生ですらまだ受け入れてない様子だった。
だって、あの彼が自殺するなんて考えたこともなかった。先週だって彼は全くいつも通りだった。よく笑い、よく喋る。悩み事なんて一つもないってぐらい明るかった。自殺とはほど遠い人物だった。
皆ショックを受けていて、泣きだす子もいた。それぐらい彼は愛されていた。皆本当に自殺かどうかを疑ってたし、私も信じてなかった。
そしてその確信は、間違ってなかった。
「やっぱり、自殺じゃなかったんですね」
「あれ、驚かないの?」
「だって貴方が自殺なんかするわけない」
「へぇ、僕って随分信頼されてるんだな」
「はい。それよりも、この再会に驚いてます」
私が言うと、彼は「僕もだ」と苦笑した。
彼は所謂幽霊になっていた。半透明に透け、ふわふわと宙に浮いている。それでも、幽霊に足はあるらしい。
「僕もびっくりしたよ。幽霊は信じてたけど、実際に自分がなるとは思ってなかったなあ。でもこれ、結構楽しいな。壁とか、すり抜けれる」
まだ慣れてないのか、自分の透けた手足をまじまじと見つめている。もはや欠陥ともいえるほどの彼の異常に呑気な部分は、幽霊になった今も変わっていないようだ。
「幽霊になってでもこの世に存在するとか、ほんとにしぶといですね」
「まるでゴキブリみたいな言われようだね…でも、別に幽霊になったのは僕の意思じゃないよ」
「なんか未練とかあるんじゃないですか?」
そう言うと、彼は「未練かぁ…」と考え込んだ。しばらくして、「あ!」と声を上げ手を叩いた。
「未練っていうか、気がかりなことが一つある」
「何です?」
「僕を殺した犯人のことだよ」
話によると、昨日の早朝、彼は一人プラットホームにいたところを、突然、電車が来るタイミングで背中を押されたらしい。それで死んでしまったのだ。
「なるほど、そういうわけですか…」
「殺人事件だろ?」
「確かに、殺人事件ですね」
何故か、彼はワクワクと楽しそうにしている。元から推理小説などのミステリーが好きだったが、自分が死んだ殺人事件にすら同じように興味を示す。そういうところが、私が彼を異常者だと思う理由でもあった。
底抜けに明るい。その明るさが、底知れなくて怖い。しかし私も彼ほどではないとは言え、やはりどこか人間として欠けていて、だから彼とよく一緒にいた。
「犯人は見ました?」
「見てないよ。見たとしても、乃亜ちゃんには言わなーい。つまんないでしょ」
「クイズじゃないんですから。それじゃ、心当たりは?」
「う〜ん…僕も考えたんだけど、これといってなぁ…」
「役に立ちませんね」
「ひどくない?」
「というか、そろそろ出ていってくれませんか?」
出ていくように促すと彼は「え〜!?なんで?」と不服そうに言った。
「そもそも、ここどこだと思ってるんですか?」
「乃亜ちゃんの部屋」
「そうです。貴方は女子高生の部屋に不法侵入してるんですよ?普通なら通報案件ですけど」
「まぁ急に来たのは悪かったけどさ、こんな緊急事態だし大目に見てよ。それに通報したって僕幽霊だから見えないし逮捕もできないよ。呼ぶなら霊媒師のほうがいいかもね」
「…そういえば、なんで私には貴方の姿が視えるんでしょう?私霊感ゼロなんですけど…」
「そりゃ、あれだよ乃亜ちゃん」
「?」
彼がドヤ顔でやけに溜め込んだ。嫌な予感がする。
「愛でしょ」
「死んでください」
「もう死んでるもん」
とりあえず私は今日も学校があったので彼を部屋から追い出した。全く、学生は忙しい。
教室ではやはり彼の話題で持ちきりだった。
「ほんとに、なんで自殺なんてしたんだろ…」
友人のミサが目を腫らして呟いた。ミサは彼に恋していた。一度だけ恋愛相談に乗ったこともあるが、何のアドバイスも出来なかったので一度で終了した。
「乃亜もショックよね?仲良かったし」
私は笑顔を引き攣らせながら頷いた。「今日幽霊になった彼に会いました」なんて言えるわけがない。それに、例え彼が本当にいなくなったとしても、泣くほど悲しむことはないだろう。
「まだ好きって言えてないのに…もっと早く告白すればよかったな…」
「ミサ…」
私は何も言えず、ただただ彼女の背中をさすり続けた。帰ったらいるであろう彼を、殴ってやろう。
休み時間、廊下を歩いているとぽん、と肩を優しくたたかれた。振り向くと大柄で刈り上げの青年、武内先輩がひらひらと手を振っていた。
「武内先輩」
「やぁ、久しぶり。調子はどうだい?その、なんというか…」
話しかけてきたのに、武内先輩は言葉を曖昧に濁した。その様子を見て気を遣ってるのだと察した。
「私は大丈夫です。先輩は?」
「いや〜、さすがにショックだな…」
頭を掻きながら、ふっと憂いげに目を伏せる。口調はおちゃらけているが、衝撃はかなり大きいようだ。
武内先輩はサッカー部のエースで、同じくサッカー部所属で期待の新星だった彼と仲が良かった。私も彼経由で武内先輩と仲良くなった。つい最近、どっかの大会で彼のおかげで優勝できたと聞いた。
「友人としてもいい奴だったし、サッカー部のエースとしても、惜しい人材をなくしたと思うよ」
「ですよね」
「にしても、なんで自殺なんかしたんだか…わざわざあんな朝早くにまで来て、それほど死にたかったのか…。なんか悩み事あったんなら、相談してくれりゃいいのにさ」
「私もそう思います」
「…っと、もう行かないと。ごめんな、なんかこっちばっか話しちゃって…もし辛いことがあったら、君も言ってくれよ」
じゃあ、と武内先輩は颯爽と去っていった。相変わらず爽やかな人だ。
帰宅すると、やはり当然のように彼はいた。
「おかえり〜」
「どうも。…というか、貴方学校に来てましたよね?」
「あ〜、バレた?」
彼は全く悪びれもせずに、ヤンチャに笑った。
「一瞬、姿が見えました。隙が多いです。そんなんだから殺されるんですよ」
「いや、あれは不可抗力だって…」
「それより、なんか心当たりありました?」
「いや〜掴みどころなさすぎてチョット…」
彼がグリグリとこめかみを押しながら唸った。
「本当に犯人を見てないんですか?なんか、断片的な特徴でもいいので」
「いや…ほんとに思い出せない。その時メールしてたからさ」
「メール?誰に…?」
「僕がその日会うはずだった人だよ」
そう尋ねると、彼は今まであまり見たことのない複雑な笑顔で曖昧に答えた。
「だから、誰なんです?」
その彼の返答に苛立ちを隠さず、再度尋ねる。しかし彼は「誰だろうね?」と頑なに言わない。
当ててみろ、ということか。この、他人に対して上っ面だけ取り繕って、全く何の感情も抱かない、この彼が、そこまで誤魔化すほどの人物…。
すぐには思いつかなかった。だが、一人だけそれに思い当たる人物がいた。
「父親、ですか…」
解答というよりかは独り言のような呟きに、彼が「せーかい」と小さく拍手を送る。その時には、もうあの複雑な表情はなくいつも通りの胡散臭い笑顔があった。
知っている人は学校にも数人しかいないだろうが、彼は片親である。
五年前ー小学五年生の時、彼の父親が出て行った。
離婚と言うやつだ。詳しい理由は知らないし、知ろうとも思わない。他人の闇に深入りするような野暮なことはしたくないから。私が彼の両親が離婚したのを知っているのは、小学校で偶然その話を耳にしたからだ。いま通う高校で彼だけが唯一、私と同じ小学校出身だった。
「前から言われてた。近い内に会えないかって…」
淡々と、彼が語りだした。感情の乗っていないその口調は、無理やり押し殺しているようにも思えた。
「母さんは会ったらまたヒステリーを起こすから、せめて僕とだけでもって…。まぁ僕は別にあの人のこと嫌いじゃなかったし、むしろ好意的に思ってたから、OKしたんだよ。でもまた父親に戻ってくることは期待してなかったよ。あの人、母さんと別れたあと別の家庭持って、また離婚しちゃったらしいから。その相手は未亡人で、僕より一つ年上の子供がいたはずだけど…」
「それは…まぁ…なんとも言いづらいですね」
その父親がよっぽどクズだったのだろうか…。
「クズっていうより、ただそういうのに向いてない人って感じだったな」
私の心を読んだかのように彼が言った。その言動からして、やはり彼は父親のことをそれなりに好きだったのだと思う。私が彼を見てきた中で、一番人間らしい瞬間だった。
「ま、大体そんな感じかな。なんか分かったことあるかい?」
「うーん…気になるのは、犯人が貴方のその予定を知っていたかどうかですね」
「あー、計画的殺人ってこと?」
「いや、普通に貴方を尾行しただけの可能性もありますけど…」
「なんなら、無差別殺人犯の可能性もあるよね」
「それはないと思います」
私がきっぱりと言い放つと、彼は面白そうに尋ねてきた。
「へぇ、なんでそう言える?」
「貴方が駅にいた時間帯は早朝でしたね。正確には午前五時…そんな時間に、しかもただですら人工の少ない駅に無差別殺人犯訪れるとは考えにくい…」
「なるほど、見事な推理だね。探偵みたいだよ乃亜ちゃん」
「言ってる場合ですか。本当に貴方を憎んでる人に心当たりはないんですか?」
「え〜乃亜ちゃんとか?」
「私は憎んでるというより嫌悪してるんです。」
「少なくとも好意的には思ってないのね…でも、こういう時って実は主人公が犯人でしたー…みたいなどんでん返しありそうじゃない?」
「メタい事言わないでください!まぁそれも推理小説にはよくあるパターンですけど、一応私にはアリバイがありますから」
「あれれ〜?本当かな?アリバイ捏造とか〜?」
「…もう犯人探しやめましょうか」
「ごめんなさい調子に乗りました」
呆れてため息をつきながら、ふと、もう一つの可能性に思い当たった。
「なら、貴方の元父親を恨んでる人とかは居ないですか?」
その質問に、彼は呆気にとられたように目をパチクリさせた。
「え…あの人が関係してんの?」
「いえ、悪魔で可能性です。しかし、それも考えられなくはないので…」
「なるほどねぇ…僕はあの人の人間関係に詳しくないからわからないけど――
―母さんはそれに該当するかもしれない」
「…貴方のお母さんが…」
彼がこくり、と笑顔で頷く。
「母さんは今でもあの人を恨んでるよ。僕には分かる…」
彼の瞳が、ふっと陰る。
「…僕があの人に会うことを知った母さんが、裏切られたと思って僕を殺したー」
「まぁただの推測ですね。可能性は低い」
咄嗟に、庇うように言葉を発した。自分で尋ねておいてだが、その可能性はあまり考えたくない。母親に殺されたなんて、いくら彼でもショックなはずだ。
それに、実際彼の母親は彼を溺愛していた。家族愛にしては歪な執着だが、そんなことで殺すだろうか?他の可能性を……あれ、そういえばー。
「そういえば、貴方の旧姓ー元父親の苗字って、なんでしたっけ?」
「ああ、それは―」
彼にその名前を聞いた時、点と点が繋がったような感覚がした。
証拠不十分、暴論、でっちあげ。しかし、時に直感は推理より頼りになる。私は確信めいていた。フフン、とドヤ顔で、かれにこう言ってやる。
「犯人がわかりました」
翌日の放課後ー。私は早速犯人を呼び出した。
外から下校中であろう子供の、楽しげな声がぼんやり聞こえてくる。窓から差し込みむ夕日の光が、教室を赤く赤く染め上げている。
放課後の教室は普段の教室とは打って変わって、静寂と平穏に包まれていた。刻々と、ゆっくり、しかし着実に時間が過ぎていく。
誰もいない―いや、私と、おそらく彼を殺した犯人であろう人物の二人だけの空間―。
「忙しい所、呼び出してすみません。どうしても話したいことがあって…」
「いやいや、気にしないでよ。もしなんかあったら呼んでくれって言ったの俺だし…」
「ほんとにすみません、武内先輩…」
武内先輩は大丈夫だって、と手をひらひら振った。いつもの爽やかな微笑みが暗く視えるのは光の加減のせいなのか、それとも―。
どちらにせよ、私は武内先輩に話さなければならない事がある。
「―武内先輩ですよね。彼を殺したのは」
―武内先輩は何も言わなかった。笑顔がすっと消え、見開かれた目は私をまっすぐ見ていた。沈黙する武内先輩に構わず、私は勝手に語り始めた。
「皆あまり知らないんですけど…彼は片親なんです。昔、父親が出て行ってしまって。けど、父親と会う約束をしたんです。殺された日に…」
「なんで……」
「貴方は、彼がその日に父親と会うのを知っていた。まぁ、メールのやり取りを見て知ったんでしょうけど…それで駅で待ち伏せして、やって来た彼を突き落とした。」
「君は…なんで…」
「武内先輩、貴方は彼の父親が出ていったあとに結婚した人の息子だ」
武内先輩は瞬きもせずに私を見下ろした。そして、掠れた声で。震えた声で。
「なんで分かった…?」
「推理小説をたくさん読んでるので」
私の返答に武内先輩はあんぐりと口を開き、それから笑った。諦めたような笑顔だ。
「なんで俺があいつの父親の息子だって分かったんだ?」
「まず、彼の旧姓ー父親の苗字が「武内」だったこと。それから、武内さんが再婚した女性の子供が私の一個上なこと。それらの情報で貴方だと分かったんです」
「…それ、勘じゃないのか?」
「失礼な、推理ですよ。それに当たってるじゃないですか。」
「ああ、墓穴掘っちゃったな…」
「それと、貴方が彼を殺した犯人だと分かった理由がもう一つあります」
「え?」
きょとんとする武内先輩に、私は勝ち誇った笑みで言った。
「昨日話した時、貴方は彼が早朝に駅に来ていたことを知っていた。…誰も、彼が早朝に自殺したなんて言ってませんよ。ニュースでもそこまでは報道されてなかった」
「あ…」
武内先輩の顔が青くなっていく。自分の失言にようやく気づいたらしい。
「なんで先輩がそれを知ってたか…ズバリ、先輩が彼を殺した犯人その人だからです!」
ピシッと人差し指を先輩に突きつける。武内先輩は手で顔を覆い、空を仰いだ。
「マジかー…やらかしわ…」
「やっちゃいましたね」
「いや…きっと、天罰だろうな」
「なんかかっこいいこと言ってますけど、普通に貴方がボロ出しただけですよ」
「…父さんがさ…」
ぽつりと、武内先輩が呟きを漏らす。
「俺の昔の父さんは物心つく前に亡くなったから、あの人がほぼ俺の父親だったんだ。よくサッカーしてくれたし、優しくて、母さんより好きだった。でも、いつもいつも…もう一人の息子ーあいつのことを話したり、聞かれたりする」
あいつー「彼」のことだろう。武内先輩はそのまま、ぽつぽつと話を続けた。
「イケメンだったとか、サッカーが上手かったとか。悪気はないんだろうな。でも…それが「あいつはお前よりずっといい息子だった」って言われてる気がしてさ。」
隠しきれない憎しみが、怒りが、先輩の言葉に含まれていた。武内先輩の表情が、みるみると歪んでいく。
「それで、結局離婚してしまった。母さんと喧嘩ばっかりしててね。でも、離婚してからも俺はあの人は父さんだったし、定期的に会うようにしてたんだ。そんなある日、あの人はもう一人の息子に会いに行くんだって嬉しそうに話した。俺が今まで見たことないほどの笑顔でさ。」
「その時だな、あいつを殺そうと考えたのは」
「もともと俺はあいつのこと、心の内では嫌ってたんだ。勉強もスポーツも、俺より出来て、「ああ、聞いた通りの子だなぁ」って。それに―」
言葉が途切れ、先輩が一瞬私の方に視線を向ける。何かと思ったが、「何でもない」と言って項垂れてしまった。
「…動機は分かりました。でも、自首してください。さすがに見逃せないので」
容赦ない言葉に、先輩は苦笑しながら私に尋ねた。
「乃亜ちゃんはさ、俺が憎くないの?俺、あいつを殺したんだよ?あいつのことを好きだったんじゃないの?」
「はぁ?どこ情報かは知りませんが、それは違います。全然好きじゃないですよ、あんなの」
「そうなの…?」
「ええ」
「……そっか。そうだったのか」
私が否定すると、武内先輩は何故か嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱ先輩だったのか〜僕を殺したの」
「やっぱ…って全然分かってなかったでしょ」
「まさか、気づいてたよ」
「どうだか」
そんな日常みたいな会話をしながら、人けのない坂道を下った。コンクリートの地面は右側に並ぶ建物の影で暗く見える。お化けでもでそうな雰囲気だ。
もう既に幽霊が隣にいるが…。
私の隣にいる彼は相変わらずニコニコと笑顔だ。自分の慕ってた先輩が犯人だと知ったにも関わらず。
あれから先輩とは別れ、私は一足先に下校した。自首すると本人は言ってたが、見張る必要も無いだろう。仮に逃げたとしても知ったこっちゃない。事件が解けたのなら、私はそれでいい。
「…って、なんか薄くなってないですか?」
「あ、ホントだねぇ」
私が指摘すると、彼はゆったり頷いた。幽霊になってから半透明だった彼の体はより一層透けており、景色に溶け込んでしまいそうだ。
「成仏しかかってるんですかね?」
「あ〜未練がなくなったからか!」
納得した、とばかりに何度も頷いている。もうすぐ消えてなくなるというのに、随分と呑気だ。
「…武内先輩が憎くないんですか?」
私が尋ねると、
「ん〜、確かに!取り憑いて呪ってやろっかな」
彼はあっけらかんと笑った。
こういう奴だ、彼は。他人のことも自分のことすら他人事で常に飄々としている。自分の殺人事件すら面白がる。
ーだからこそ。そんな彼だからこそ、この距離感は心地よかった。
「…まぁ、貴方と過ごした日々もそんなに悪くはなかったかもです」
「え!?どうしたの急に、頭打った?」
「とっとと成仏してください」
「ごめんなさい調子乗りました。
…ありがとね」
そう言う彼の声が、笑顔が、すうっと薄くなったと思うと、背景に吸い込まれたように、完全にいなくなった。
「…やっと成仏できましたか」
彼の成仏した様を見届けて、ため息混じりに呟く。
そのまま何事もなかったように私は一人、暗い坂道を下った。
気のせいか、足取りはさっきより軽く思えた。
読んでいただき、ありがとうございました。