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アウモの食糧調達部隊(2)


 結局、魔術師団の魔術師十三人と研究所の研究員五名がアウモの食糧調達部隊に参加することになった。

 俺はその臨時部隊長。

 騎士団からも数人、気の合う者を選出して護衛として連れて行くように、と騎士団長に正式に言い渡されてしまい、頭を抱える。

 ゾンビドラゴンと戦うまでの間だけとはいえ、他の部隊から騎士を拝借するというのは非常に、その……なんというか……。

 しかも、第二部隊隊長からは「エリウスの予定は君に預けておくから、ゾンビドラゴンと戦う時だけ返してね」と言われてしまった。

 マジで隊長間で俺のところにエリウスを預ける話で話まとまってんじゃん……。

 夕飯も研究者の魔術師とエリウスが参加して、とんでもないデカさの[サイクロン]をもぐもぐ食べたアウモはすやすや。

 エリウスも参加したもんだから、マジですごい威力の[サイクロン]が放たれたのにそれをものともしないでパクパク食べてしまうんだからもう意味わからない。

 いや、そもそも広範囲攻撃用の合同魔法を食べるってのがもう人智を超えているのだが。

 ……最初に魔法を食べられた人は腰を抜かすほど驚いただろうな。


「なんか、本当に信じられない光景だなぁ」


 と、俺が夕暮れの空に浮かびながら[サイクロン]の残り風をもぐもぐしているアウモを見上げながら呟く。

 隣に歩いてきたエリウスも「本当にね」と疲れ果てたような声で答え、俺と同じように眉に手を平にして(ひさし)代わりにしながらアウモを見上げる。

 他の魔術師や研究者も草原に倒れたり座り込んだりして、動けるようになるまで回復に勤しむ。


「ありがとうね」

「え、なにが?」

「食糧調達部隊に俺を入れてくれて」

「え……あ、いやー、エリウスを入れろっていうのは、隊長たちに言われたし」

「え」


 俺がそう言うとエリウスが顔を夕陽よりも赤く染めながら「隊長たちにまでバレていたのか……」と呟く。

 そうだよ、よくよく考えると……そうだよ!


「あ……あのさぁー」

「はい? え? な、なに?」

「一応、考えてはいるんだよ。昨日の件」

「う……うん!」


 今まで考えていたことで、考えがまとまった内容を伝えようかと思ったけれど、魔術師や研究者もその辺に転がっているのでとりあえず咳払いでごまかす。

 でも一応、両思いなことくらいは伝えておいてもいいかな? と思ったから「遠征から無事に戻ってきたら、もう一度ちゃんと話し合いたい」と告げる。

 エリウスもそれに対して目を丸く見開いてから、急に真顔になってこくりと頷く。


「うん、わかった」

「っていうか、エリウスが外堀埋めてるわけじゃない――んだよな?」

「い!? ち、違う違う違う! さすがにそんなことしてないよ!? いや、まあ、その……アウモのことがあって、最近フェリツェの立場が微妙だからさ。王子の誰かにフェリツェを掠め取られたりとかしたら、最悪だし」

「それは、まあ……。さすがに王子たちも魔力もない孤児院出身の平騎士を妻に迎えたいわけではないだろうし」


 あと、全員年下も年下。

 最年少のリレイザ第一王子でも十七歳。

 俺から見ると子どもすぎる。

 そういう意味でも、やっぱりエリウスの方が――い、いや、だから結婚するのは吝かではないんだよ!

 ただ、貴族妻としてやっていける気がしないだけで。


「そんなのわからないじゃん。フェリツェは魅力的だよ」

「う、うるさい。少なくとも今日はその話はしないって。人もいるし」

「あ……そ、そうだね」


 そんなふうに見えるのはお前だけでしょ、とも思うけれどそう言われて悪い気はしない。

 うっかり甘えて寄り添ってしまいたくなるけれど、俺のそんな弱い部分を見透かしたように食事を終えたアウモが降りてくる。

 お願いだから明日の朝までゆっくり眠っててくれよな……と祈りながらが降りてきたアウモを抱き締めた。


「ぱうぱうぱぁう」

「お腹いっぱいか? よかったなぁ――ん?」

「どうしたの? フェリツェ」

「なんか……ちょっと大きくなってる……?」


 と、アウモを持ち上げる。

 うん、やっぱり。大きくなっている。

 二歳児くらいの容姿だったのに、三歳児くらい成長している……!


「ほら、丈も短くなって、膝まで見えてるだろ?」

「本当だ。じゃあ、風の魔力を取り込んでちゃんと成長しているってこと?」

「そうみたいだ」

「せ、成長しているんでふか!?」

 

 大きな声で横たわっていた研究者が上半身を起こすが、やはりまだ回復しきれていなかったのかまた倒れ込む。

 しかも噛んでるし。

 落ち着いてもう少し休んでおけぇ……。

 

「そうですね、少し大きくなっています。皆さんの魔力を食べたおかげだと思います。ありがとうございます」

「ぱうぱぁーう!」

「お、おおお……! 我らの魔力が風の妖精竜様の体の一部、血肉の一部に……はぁはぁ」

「す、すごい! この事実は歴史にしっかりと記録として残して後世に伝えていかねば……っはあはあ……!」

「「…………」」

 

 け、研究者さん、そんなに興奮するようなことか?

 ああ、でもアウモが妖精竜と分かった頃に、妖精竜について調べようと思ったけれど資料がまったくと言っていいほどなかったっけ。

 そう考えると、アウモの成長記録が残されるのは後世の妖精竜生育に役立つのか。

 うちの国に限らず、他国で妖精竜の幼体が育てられることになった時に提供することもできるしな。

 誰かの役に立つのなら、いいのかな?

 というか、研究者たちの息荒くて怖。


「ぱぁう」

「眠い? じゃ、今日はもう寝てしまおうか」

「ぱう!」



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