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お買い物(1)


 翌朝、目が覚めると目の前にエリウスの綺麗な寝顔があって喉がヒュッと鳴る。

 その直後、顔に熱が集中し心臓がドッドッと早鐘になった。

 びっっっっっっっくり、したぁぁぁぁぁ……!!

 ゆっくり上半身を起こして、足をベッド下に下ろして着替えを始める。

 服、本当に洗濯してくれたんだな。魔法で洗ったのかもしれないけれど。

 とりあえずありがたく着替えて、借りた寝間着を畳んで枕元に置く。

 エリウスとアウモを見下ろすと、どっちもすやすや。

 カーテンを摘まんで様子を見る。

 太陽が昇りつつある――だいたい朝、五の刻くらいかな。

 いつもならアウモが起きるまでに朝食を用意していたけれど、今日の買い物で風の魔石を買ってくるか。

 ……まさかアウモが魔石を食べるなんて思わなかった。

 今日買うものリストに風の魔石を追加しておかなきゃ、忘れないように。

 でも、魔石はそれなりに高いし、騎士団の経費で落ちるのならその方がありがたい。

 いや、なんか昨日のマロネス様という方の話だと、国の経費でも落ちそう。

 ……国、ね……。

 国を挙げて“神”たる妖精竜を生育しようっていう思惑は感じていた。

 実際この世界の“風”を司る神なんだもんな……当たり前だよな。

 俺、本当にアウモを育てても――いや。それはもう、考えるのはやめよう。

 エリウスが『そんなことない』『フェリツェは間違いなく、アウモのお父さんだよ』って言ってくれたから。

 意識を変えろ、俺!

 俺はアウモのお父さん!

 俺がアウモを立派に育て上げるんだ!

 ……でも……こんなに早起きして……アウモとエリウスが起きるまでなにしてよう?

 もう着替えちゃって、二度寝もできないんだが。

 

 

 

 アウモとエリウスが目覚めてから朝食をいただき、宿泊と食事のお代を支払おうとしたらエリウスに大慌てで止められ、リーセンディールさんには「ほっほっほっ、貴族は平民に施されるのは屈辱に当たりますからおやめになった方がよろしい」と笑顔――でも目が笑っていない――で、財布の中にひっこめた。

 そうか、貴族ってそういう感覚なのか。

 素直にすみません……って謝ったよ……。

 そうか……平民とは常識が違うんだな。

 

「それではお気をつけて。またいつでもお越しくださいませ」

「今度騎士団の方に風の魔石を届けに行くから、またアウモくんと遊ばせてね~~~」

「あ、ありがとうございました。お邪魔しました」

 

 ペコペコ頭を下げながら、エリウスの自宅を出たあと騎士団の訓練場にアウモを連れていく。

 マリスとディックに「風の魔石が主食だったらしい」と話すとそりゃあもうびっくりされた。

 副団長もやってきて、同じ説明をして「町でアウモの昼食用に風の魔石を買ってきます」というと「全部経費で落とすから、領収書貰っておいで」とお金を寄越す。

 

「じゃあアウモ、お父さんお買い物に行ってくるからみんなといい子に待っているんだよ」

『パァウ……?』

 

 首を傾げるアウモが可愛い。

 その素直な瞳に胸が温かくなる。

 そうだよな、この子のお父さんになったんだもん。

 なんか心配だけれど、この子を町に連れて行くのは無理、だよなあ。

 見た目魔物だし、声はデカいし、落ち着きないから暴れて人様に怪我なんてさせたらと思うと……!

 無理無理! 可哀想だけれどお留守番!

 

「お土産買ってくるからね。いい子で、遊んで待ってるんだよ。お水はちゃんと飲んで、大きい声は出していいけど、物を壊したりせずみんなの言うことはよく聞いて……」

「早く行け! 早く行って早く帰ってこい!」

「ハ、ハァイ!」

 

 マリスに首根っこを掴まれ、エリウスに向かって放り投げられた。

 そ、それはそう! その通りだと思います!

 エリウスに苦笑いされながら町に急ぐことにした。

 町に行くのには、ベッドという大物を運ぶため荷馬車を借りていく。

 これは遠征で収納魔法で運べないものを乗せて運ぶためのもの。

 まあ、収納魔法で運べないものはあんまりないのだが、一部の巨大な魔石は魔力を含みすぎて魔法を形成する魔方陣を歪ませ、収納したものが取り出せなくなったり融合したり爆発したりするそうだ。

 なので魔力を帯びたものは収納魔法で運ばず、こういった荷馬車で運ぶ。

 あと、あまり大きな物も魔力を多く消費するらしい。

 そんな燃費の悪いことをするよりは、荷馬車で運んだ方がいいってことだ。

 エリウスに「俺が収納魔法で運ぶよ? そんなに長距離でも長時間でもないし」と言ってくれたけれど、風の魔石をたくさん買うのでどのみち荷馬車は必要だろうってことになった。

 エリウスの愛馬、ロッテに荷台を引いてもらい、御者をエリウスに任せて町に辿り着く。

 町は大きく四つの区画になっており、騎士団や貴族学園が並ぶ公的機関区画と併設されているのが貴族街の区画。

 一番大きなのは居住区画で、郊外にあるのが冒険者協会や平民の使う大市、俺たちの出身の孤児院がある商業区画。

 そして今回使うのは貴族街の商店街。

 俺たち一応正規の騎士なので、平民街の大市で安物を掴まされては外聞が悪い――らしい。

 見張り塔が一応騎士団所有の建物で、万が一の際は貴い方が泊まることもあるのでしっかりしたものを買ってこい、なんならオーダーメイドでもいい、と言われたがオーダーメイドは時間がかかりすぎます、と既製品を買ってくる気満々である。

 

「荷馬車は馬留に預けるとして――手分けして買い物した方がいいよな?」

「え? いやいや! 一緒に行くよ! 父上の名前が利く店の方が便宜を図ってもらえると思うし、騎士団の名前で買い物するってことは半端なものを買えないから……」

「えっと……なんか貴族のつき合いみたいなのがあるってこと……?」

「そ、そう!」

 

 そうなのか。

 貴族って色んなしがらみがあるらしいもんな。

 じゃあ、エリウスの言う通りにしよう。

 俺じゃそういう下手なことやらかしそうだし。





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