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僕らの戦争  作者: 深尋
2/2

兄弟喧嘩戦争。

「ねぇウミ。最近ソラに逢ってない。」

「ん、あぁそういや。だって国が違ぇんだもん、しゃーねぇじゃん。」

「言うても今まだ、休戦中ってだけやしなぁ。一応戦争続いてんで。」

「えーでも、家族じゃん兄弟じゃん!たった一人の肉親に逢えないなんてねぇ。」


4人で集まって話してた時だった。

ソラのことを真っ先に切り出したのはマキ。

マキは昔、ずっとソラと俺にべったりだったから、ソラが居ないのはやはり寂しいらしい。

前髪をいじくりながら、ちらりとこっちを見て言ったのである。


「別に俺はねぇ、あいつが元気だったら良いんだし。」

「逢ってもないのに、元気だとか分かる、ウミ?」

軽く流して、次の話題にさっさと切り替えようと思っていた。

だがマキはじっとこちらを睨んだ。

また次に、こう口を開いた。


「ウミ、今度ソラに逢いに行こう。きっとソラもウミに逢いたいに違いない。」

「あっいいね。あたしソレ賛成。ソラくんに逢いたいし。ウミくんは逢いたくないの?」

マキの提案にアズマが威勢良く同意した。

どうやら困ったことになりそうなことが、よく分かった。

「いや、逢いたくねぇわけねぇよ。」

逢いたくないわけじゃ、ない。

だが逢いたいとも思えない。


『俺さ、もうウミより強いぜ?』


前に、ソラがそう話しかけてきた。

俺は晩飯の用意をしていたし、ソラはソラで本を読んでいた時だ。

突然に、台所に立つ俺の背後に立ち、こう言ったのだ。


『後方だって近接だって、ウミに勝ってやる。

俺はクルマキから出て行くことになったけどさ、そん時は心配しなくて良いよ。

・・・いや、心配になったらさ戦争仕掛けて来いよ。マキたちと一緒にさ。

いつだって相手になって、んで、いつだって勝ってやる、絶対に。』


今でも忘れられないのは、俺に対しての刺々しい言葉と、蔑むようなあの目つき。

だけど目つきとは裏腹にソラの表情はとても誠実な、強い表情だった。

力に誠実になった弟の、ソラの、ぎらぎらした、ざらついた、獣の姿。

出て行ったきり、ソラはクルマキに帰ることは出来なくなった。

ソラの行った国、マツカゲの『偉いところ』に彼は居るらしい。

帰って来る気なんて最初からひとつも無いんだろう。

そして、俺やマキ、アズマやカナエにも逢いたいとは思っていない。


アイツにはアイツの日常が芽生え、今ではソレが当たり前となっているんだから。

わざわざ逢いに行くほど、ウミとソラの兄弟は仲良しとは言えない。

もとより仲が悪かったのではない。

あの時ソラの言った言葉が、俺とアイツを隔てている。


そうだ、逢いたくないわけでは、ない。

だが逢いたいと思えるような、兄弟としての、決定的なモノが抜けてしまった。

ウミとソラ兄弟から欠けてしまった。

絆とか、そういう安い言葉で表すモノじゃなくて。

もっと肉親でないと持ち合わせないような、もっと、無償のモノが。

アイツは絶対に逢いたがっちゃあいない。

そして俺も逢いたくはない。


「逢いたくねぇわけじゃねぇ、のに逢いたくない顔してるな?」

マキが再び、じっと見つめる。

「別に俺は・・・。大体、この戦争中にだなぁ」

「戦争中に片方に逢いに行っちゃいけないなんて、あたし、理不尽だと思うね。」

アズマはつまらない顔をする。

「いくら血ぃつながってるからって、アイツが好んで出て行ったんだ。」

カナエは・・・何も言わなかった。

苦々しく笑って、こっちを見ているだけだ。


「じゃ、・・・ない。」

マキがボソボソと、何か言った。

口の中で不鮮明に声は消えた。


「じゃ、しょうがない。」

「おい・・・しょうがないって何が、」

焦る。

どうやらまた、嫌な予感がする。

「マツカゲに戦争を仕掛ける。」


やはりだった。

こうなったら聞かないのがマキである。

ウチの女性陣は肝が据わっており、こういうのはかなり思い切ってしまう。

だが、こうなるのは分かっていたのだ。

一応決心もしておいた。


「・・・・・・マキ、それで本当に良いんだな?」

マキは、うん、と言わない代わりにこくんと頷く。


「だがな、そんな簡単にマツカゲを落とせると思う?

あっこは結構な大国だ、俺らみたいので勝てると思う?

わが国の軍事費はごくごくわずかで、ほら、全てが物語ってる。

何しろウチの国は軍事国家じゃないんだよ、俺らがガンガン喧嘩強いだけ。

ソレ以外は、そりゃあもう大したことねぇんだよ。

勝つ負けるどころじゃねぇ、マツカゲに辿り着く前にそこいらの国に滅ぼされちまう。

ソレでも仕掛けるか、マツカゲに戦争?」


まくし立てると、マキもアズマもすっかり黙り込んだ。


「・・・んで、全てには段取りが必要。

戦術よりも戦略、要は知略。

真っ向から挑んで倒せる相手ではない。

だからな、他から落として行こう、そう思わないか?」


カナエは再び、俺を見た。

その表情はさっきと同じで、苦笑していた。

最後には乗って来やがったよ、コイツは本気で勝ちに行くのか、というような。

だが構わない。

初めに言ったのはマキである。

俺にここまで言わせる原因を放ったのはマキだ。

やるからには徹底的にやってやろう。


マキがまた、こくんと頷く。

アズマはすでにやる気を見せ、にやりと笑う。


さて、どうやってのめしてやろう。

そう考えると、ついクセでぺろりと舌なめずりした。


ソレが戦争の理由。

ただの兄弟関係のもつれ、とも言える。

だがコレは、この戦争は、戦争ではない。

国を巻き込んだ、大規模な『兄弟喧嘩』。

ある意味ただの喧嘩で、ただの喧嘩でなく戦争である。

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