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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第4章 さよなら魔法少女
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最終話 さよなら『魔法少女』

――烏丸山山頂にある小さな祠の前


 がさがさ、がさがさ!


 草むらをかき分けて小動物が鈴偶りんぐう智優ちゆに接近する。思わず身体を強張らせて身構えるが……


 にゃーーーん。


 艷やかな黒い毛並みで尻尾を立てている。智優の前に小走りで現れると人を小馬鹿にしたような目つきで見上げる。


 黒猫ロムだ!


「やれやれ探したぞ!こちらが大変な時に雲隠れとは呑気なものだな」

「へ?どうしたのロム?何だか目つきが悪いよ」

「目つきも悪くなるわい!あれから何日徹夜したことか!一向にはかどりゃせんわい!」

「???」


 背中を丸めて思い切り伸びると総毛立って智優を威嚇する。何を殺気立っているのかさっぱり要領を得ない。


「アカシックレコードじゃよ!ア・カ・シ・ッ・ク・レ・コード!!ロジカル・シフォンが書き換えたレコードをそのまま保存して現在に至るまで連続事象の整合性を取って、直ったと思ったら歪で別の時間軸が崩壊して……。きぃーーーー!!!」

「どうどうどう。私みたいに穏やかに生きた方が長生きできると思うよ。魂が幾つあるか知らないけど」

「お前のソレはボーッとしとるだけじゃわい!!」


 興奮で血管が切れそうなロムを必死で宥めるが怒髪天は収まりそうもない。


(主ら?主らって私と詩芙音ちゃんのことかな?もしかしてロムは詩芙音ちゃんの具合を知ってるの??)


「どうどうどう。ところでロム。詩芙音ちゃんの病気は大丈夫なの??全然、学校に来ないから心配なんだけどさ」

「はぁ?何を云っておるんじゃ、お主は!?」


 話が噛み合わない二人……。もとい一人と一匹……

 

 ロムが現れた草むらから別の気配を感じる。巨大なツインテールの上部がわさわさと動いて接近してくる。この髪型はもしや……


「……はあはあ。超しんどい……。でもお姉さまのためなら頑張れ、ますわ……」

「モウちょっとダヨ!頑張れ未流チャン!!」

「ぽ、ポンコツは良いわね。汗、ひとつかかなくて。はひ〜」


 がさ!


 草むらから現れたのは4頭身かと思う低身長の少女、安蘭あらん未流みると赤青黄色、見事な原色の色合いが信号機を彷彿とさせる少女、有栖川ありすがわ藍銅あずだ!


「未流ちゃん!藍銅ちゃん!おひさ!病気大丈夫だったの??」


 少し会わなかっただけなのに懐かしさのあまり二人に抱きつく智優。勢いのあまり藍銅が抱えていた荷物を地面に落としてしまう……


「くぉんの馬鹿智優ーーー!!!お姉さまの大事な身体にキズがついたらどうしてくれるの!!?」

「え?お姉さま?って詩芙音ちゃんのこと??」


 智優は地面に落ちた荷物を見て殺人現場の第一発見者のような悲鳴を上げそうになり手で口を覆う!!そこには紐の切れた操り人形のような詩芙音が手足が明後日の方向に曲がり倒れているではないか!!


「きゃーーー!!し、死んでる!!」


 智優は腰が抜けてその場にへたり込んでしまった……



「やれやれ落ち着いたか、ボン子?」

「し、詩芙音ちゃんが死んでる!」

「くっくっく!死んではおらん!魂が入ってないだけじゃよ!!」

「ソレを死んでるっていうんじゃ……」

「今から入れるから問題ない。なあ詩芙音。隠れても無駄じゃよ」


 ロムは氷のような視線で智優を見つめる。


(一体、何のこと?詩芙音ちゃんなんて何処にも……)



<いないよーだ!!!>


「あっひゃああああんんん!!!!!」


 自分の内部から詩芙音の大声が聞こえ、飛び上がって驚く智優!!


「やれやれ。腰が抜けたり、飛び上がったり落ち着かない奴じゃ。で、誰がいないって?」

<…………>

「そこにいるのは先刻承知済みじゃ!!それ、被疑者確保!!」


 手をワキワキさせた3人が智優に襲いかかる!


「うっひゃひゃひゃ!!ちょ、ロム!未流ちゃんもくすぐったいってば!!止め!皆でくしゅぐるの止めー!!」


 知らぬ間に智優の中から出ていったはずの詩芙音は智優の中に居座っていた。灯台下暗しとは正にこのこと、黙って智優ちゃんライフを満喫していたようだ。確信犯?


「ほれ!身体を用意したんだから出てきなさい、詩芙音!!」

<やだ>

「やること一杯あるから早く手伝いなさい!」

<やーだ。超面倒>

「面倒ったって主が書き換えたツケじゃろうが?」

<部下の失態は上司の責任。コレは世の常でーす>

「きぃーーーー!!!」

「ま、まあまあロム。落ち着いて、落ち着いて。マジ切れするほどのことなの??」

「ボン子、キサマ、自分で何をしたか分かっておらんのか?」

「え?レコード書き換えて悲恋をハピエンに書き換えて二人は幸せに暮らしたとさ……」


 ロムはやれやれと云わんばかりに憐れむような目で智優を見て叫ぶ。


「楓御前は寿命があるから良いわい!鬼は?鬼はどうなるんじゃあ!?鬼が消えるメカニズムはぁ!!」

「あ!」

「あ!じゃなーい。だからボンヤリしておるのじゃ!!」

「ヒドーい!ひんひん」


 あれ?いつのまにか祠に備えた唐揚げが消えていたことに誰も気付いていなかった。



 さて。魂を戻す準備中。


 智優は未流と藍銅にがっつりと羽交い締めにされている。智優本人は無抵抗モードで受け入れようとしているが、詩芙音が身体を乗っ取って抵抗を試みる!


「もう諦めなよ〜、詩芙音ちゃん。暴れてると藍銅ちゃん、また壊れちゃうよ〜」

<いや!私は智優ちゃんと一緒が良い!!もう離れない!永久に一緒だよ、って云ったじゃない!!>

「そんなの云ってないし〜。後始末をバックレたいだけでしょ〜」

<ひ、ヒドい。飽きたら捨てるのね!>

「捨てるっていうか元々、私の身体じゃーん。ほらほら覚悟してよー」

謀略はかったな、智優!!>

「謀略っても、計っても、図っても、測っても、量っても、ないよ〜」


 ばこん!!


 ロムがハリセンのような魔法具で智優の後頭部を叩くとエクトプラズムのように詩芙音の魂が吐き出され、すかさず横たわる詩芙音の身体に押し込んだ。最後の悪あがきで死んだフリをしている詩芙音を皆でくすぐって起こした。本当に往生際が悪いったら。


 やがて御神体の大岩でダウンしていた神埼かんざきしおり花田はなだとおる辻村つじむら拓人たくとがこちらの気配に気付いて近寄ってくる。


「詩芙音ちゃん、大丈夫だったの!?元気そうで何より!!」


 栞は智優に抱きつくように挟んで詩芙音の手を取り久闊を叙す。詩芙音も負けじと智優をギューギューハグハグする。苦しいのか恥ずかしいの、間に挟まれた智優の顔は真っ赤っか。


 3人の姿を見守る他の子たちは呆れて大爆笑!


 全員が笑っているのはいつ以来だろうか?

 もしかしたら初めてなのかもしれない。


 もうすぐで小学校も卒業式を迎える。

 少年少女たちは少しづつ大人へ変わっていく。


 大きくなったら笑ったり怒ったり、時には悲しむかも……。だけど、すぐに仲直り!

 だって私たちは大切な友だちだから。

 ずっとずーっと!!




――エンディングロール














「おっと、こんな場合じゃなかったわい。ボン子、早くロジカル・シフォンに変身せい。ボンヤリしてる暇はないぞ」

「へ?エンディングロール中だよ?」

「新たな異形の出現じゃ!『噂』が現実化する空間魔法は未だ生きておる!!」

「え?え?だってタイトルに『さよなら魔法少女』って書いてあるよ?」

「主はいつまで少女きどりでおるんじゃ?もうすぐ中学生になるのに『魔法少女』って恥いじゃろが?」

「えーーーーーーーーー?????」

「ほれほれ、四の五の云わずに次のグリモワールを始めるぞい」


<End?>


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