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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第4章 さよなら魔法少女
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第89話 ドキドキ☆ダブルデート!

――舞金小、休み時間の風景


 緊急避難宣言が明けて小学校が再開したが野伊間のいま詩芙音しふぉんは相変わらず学校を休んでいた。鈴偶りんぐう智優ちゆ神埼かんざきしおりがお見舞いに行こうとしたところ、担任からやんわりと止められた。


 あとで生徒指導室で担任から密かに受けた説明では感染のリスクがあるため今は接触禁止らしい。なんでもセンシティブな内容だから他言無用とのこと。ちなみに安蘭あらん未流みる有栖川ありすがわ藍銅あずも同じ病気らしい。クラスでは混乱を避けるために新しい型のインフルエンザということになっている。


 病気ならば仕方ないと二人はお見舞いを我慢したが元気な姿が見たくて仕方が無かった。まあ普段から血色が悪く、元気なさそうではあったが。


 智優のモヤモヤが晴れないのは詩芙音のことだけでは無かった。だがモヤモヤの原因が分からずボーッと過ごす日々だった。


「……なのよ。聞いてる智優ちゃん?」

「んー、ごめん。聞いてなかったかも」

「もう!最近、ボーッとし過ぎだよ。でねでね、烏丸山の『噂』なんだけどね」


 智優は思わず飛び上がりそうになる。烏丸山?『噂』?このうえ一体、何があるのだろうか?悲恋の物語は無くなったのではないか??恐る恐る栞の言葉の続きに聞き入る。


「何だかね、山頂にあるモノをお供えするとご利益があるらしいの!あるモノってなーんだ??」

「あるモノ、あるモノ……。あ、もしかして……」

「じゃあ、せーので云うよ。せーの!」

「「唐揚げ!」」


 お互い指差しあってニンマリ笑う。それって……


「おいおい、給食食べたばっかで美味そうな話してるじゃねーか」


 悪ガキぶったもやしっ子、花田はなだとおるが大股開きで反対向きに椅子に座り、話しかけてくる。


「唐揚げだったら何個でも食べれるぜ。何だったら俺様と勝負するか?鈴偶!?」

「君子危うきに近寄らず。食い意地張ってるとトンデモないことが起きるぞ」


 智優の隣の席で本(恋愛ラノベ)を読んでいた辻村つじむら拓人たくとが本から視線を離さないまま透に警告する。短い言葉に実感の籠もった重みがあるのは気のせいだろうか?


「あ、俺が負けるってか?おめーは俺がどんだけ飢えてるか知らねーだろうが。自慢じゃねーが、家じゃ飯の奪い合いに負けて食うものがねーんだぞ!」

「家の中で食い物取り合いってサバイバル家族かよ!」


 意味不明なことに胸を張る透に激しく突っ込む拓人。あれ以来、二人のボケツッコミは冴えるばかり。隣で見守る智優と栞の視線も冷えるばかり。



「でね。烏丸山の頂上にある大岩の傍の祠に唐揚げをお供えすると願いが叶うんだって!今週末、神埼家の特製弁当持って行ってみようよ!」


 地形が変わるほど激しい戦闘が行われた烏丸山。英霊との戦いが終わった後は有栖川重工業の力で強引に戦闘の痕跡を修復し、あっという間に元通り。今まで通り観光名所として開山されている。


「ねー、花田くん辻村くんも一緒に行こうよ!」


 机に頬杖をついたまま上目遣いに透と拓人を見つめ誘う栞。はっきり云って誰が何と云おうと美しい。芸能界からスカウトされてもおかしくない可愛さだ。外見だけなら。外見だけなら……


 拓人は軽く身震いして沈黙し、バツが悪そうにしている。透も先ほどの勢いはなく、心なしか目が泳いでいる。


「智優ちゃんもいーよね!二人がいた方が便利っしょ?」

「うん!みんな一緒の方が楽しいもんね!透も拓人も一緒に行こ!」

「お前に頼まれちゃ負けるわけにはいかねーな」

「別に勝ち負けの話してるわけじゃ……」


「じゃあ決定!今週末は《《ダブルデート》》だ〜。わあ、少女マンガみたいな展開でドッキドキー」


 その言葉を聞いた男子二人は「相手は俺のことか?」と目を輝かせて言葉の真意を問う!もちのロン。栞の相手のことではなさそうだ。


「「ダブルデートって誰と誰!?」」

「はぁ?私と智優ちゃんに決まってるでしょ?他に誰がいるっての」


 栞はむんずと智優の手を取ると桜色に頬染めて見つめる。既に自分の世界にダイブイン!智優以外のことはアウトオブ眼中の様子。


「だ、ダブルって云ったじゃん。ダブルになってねーし!」

「いやいやダブルになってるでしょ。君たち二人と合わせれば?」


「「チッ!腐ってやがる!!」」


 信じられない力で智優の手から離れない栞を引き剥がすのに必死の2人。こんなやり取りに4人は何故か既視感を感じるのだった。


(みんな元気良いなー。やっぱり友だちは仲良しが一番だね。でも本当は詩芙音ちゃんも一緒に……)


 そんなことを考えていると智優の身体が自然と動く。栞の顎をクイッと上げるとフッと笑い嗜める。


「いけない子だ。彼らのプライベートは大切に見守って上げなきゃダメだぞ」

「はわわわ!!!ぷしゅーーー」


 今まで余裕をかまして智優にちょっかい出していた栞の顔が見る見ると真っ赤に茹で上がり、目はバッテンマーク。魂が抜けたように煙を吐いて机の上にダウンしまった!


「「え?」」

「え??」


(あれ、私。今、何もしてないのに勝手に動いたよ??)


 自分の身体に何が起きたのか理解できず、首を傾げてグーパーしながら手を見つめる智優だった。



――週末、烏丸山の山道


 超巨大な風呂敷を背負って必死に山道を登る男の子が二人。その脇に青ざめた表情で杖にしがみつき苦行者のように山を登る女の子が一人。そして遥か前方を軽やかに進む少年のような少女が一人、アニメソングを歌っている。


「お、おかしいだろ、この重さ……」

「もうちょっとだから踏ん張れ透!」

「石でも入ってるんじゃねーの、この弁当?」

「はあ、はあ、はあ、はあ。うちの特製弁当に石なんて入ってるわけないじゃない!失礼なこと云ってると食べさせないわよ」

「云われ、なくて、も。食べれない、かも」

「食べないと軽くならないぞ……」

「本気かーーーー!!!」


「おーい、もうすぐだよ〜。ほらゴールの鳥居!」


 点なるほど小さくなった智優の姿を見上げると確かに鳥居が見える。そこには智優一人。横にはもう一人の姿は見えなかった……



 割れた大岩の上に寝そべる3人。智優以外の子は全員ダウン状態のようだ。一人元気な智優はレジャーシートを敷いて風呂敷を広げ、ランチの準備中。


「栞ちゃん、お供えしよー」

「……動くの無理。お願い、智優ちゃん……」

「もうしょうがないな〜」


 小皿いっぱいに唐揚げを盛り、大岩近くの小さな祠にお供えすると手を合わせる。人知れず誰かが信仰しているのだろう。祠には可愛い花が供えられ清浄なる空気が漂っていた。


(英霊さま、楓御前と幸せに過ごせたのかな?おっと英霊じゃないんだった)


 かさかさっ


 感慨深く英霊と楓御前のハピエンを想像していると近くの草むらから音がする。


(ん?狸かな?まさか野犬!?)


 かさかさ、かさかさ!


 得体の知れないモノが近づきMAX警戒モードになる智優だった。


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