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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第4章 さよなら魔法少女
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第84話 藍銅との再会

――烏丸山の山頂


 真・演算魔法少女ロジカル・シフォンは坑道脱出の時に負った傷の痛みに耐えながら闇夜の光が指す地上へと向かう。出口に近づくにつれて淀んでいた空気が段々と澄んでくるのが分かる。それとともに僅かな空気の流れも感じる。空気から湿り気を感じるところをみると外は雨なのかもしれない。


(英霊との戦いに悪影響が出なければ良いのだけど。それにしても未流ちゃんに何をお願いしてたんだろ?チビッたとか云ってたけど大丈夫なのかな?ちょっと心配……。でもでも詩芙音ちゃんのことだから大丈夫、だよね?)


<大丈夫だよーーー!!>

「うっひゃああああぁぁぁ!!!」


 急に詩芙音の声が聞こえ、沸いたと思って飛び込んだ風呂が水風呂だった時のような悲鳴を上げるシフォンだった。


<驚き過ぎっしょー!リアクションキャラでも目指すのかな??>

「い、いや目指さないけど……。あ、あのね詩芙音ちゃん……。もう少しだけ静かに話し掛けてくれると嬉しいかな……」


<こんなか・ん・じ??>

「くすぐったい!!やっぱ無し!!ふ、普通でお願い!!」


<シフォンの中は楽しい〜な〜。あは☆>

「そ、それよりも英霊を倒さなきゃだよ!」


<おっとー!焦る気持ちは分かるけど順番、順番、じゅんばんばん>

「詩芙音ちゃんはもうちょっと焦ろうよ!!」


 シフォンが相手の機微を読み取っていないだけのこと。柄にもなく詩芙音は焦っている。焦っているからこそシフォンに悟られまいと巫山戯ているのだ。感覚や感情、全てを共有する二人だからこそ望まざるとも伝わってしまう不安や焦り。隠すことはできないから誤魔化すしかないことを百も承知の振る舞いだろう。


<外に出たら藍銅あずちゃんから本物の『鬼恋丸榛綱おにこいまるはるつなを受け取ってー。先ずは英霊を倒す武器を手に入れるところからだよ〜>

「うん、分かったよ!ありがとう、詩芙音ちゃん!」

<ふぁいとー!でね、でね。藍銅ちゃんはね〜。うん、空にいるみたいだよ。飛んで行こー」


 必死に前に進み、坑道の出口を抜けると雨の雫がシフォンを濡らす。背中の光翼を目一杯に広げると羽を濡らす雨水を振り払い、大地を蹴って遥か上空に待つ有栖川ありすがわ藍銅あず安蘭あらん未流みるを目指し、飛び立つのだった。




 一つ、また一つ、量産型アズの信号が消える。


 幸いにも有栖川セキュリティサービス(通称ASS)から人間の被害は出ていない。だが対異形用に造られた藍銅の妹たちだが強大無比な英霊の力に抵抗する術もなく、無惨に敗れていく。


「未流ちゃん、そろそろヤバいカモ。最後の1妹が戦っているけど時間の問題ダヨ」

「大丈夫!もうすぐで詩芙音姉さまが何とかしてくれますわ」

「アリガトウ、未流チャン。私、ポンコツだけど未流ちゃんが居たから戦えタ」

「何、云ってるの?まだ終わってないでしょうが!?」

「皆と過ごした記憶が引き継げたらナ〜」


 本来、アンドロイドはプログラムされた機能以上の動作はしない。感情や感覚についても同じこと。コアとなるシステムに無い制御はできないはずなのだ。では何故……?


 ガチャリ


 未流を締め付けていた抱っこ紐が緩まる。


「何してんのポンコツ!?一緒に戦うんでしょ?一人でカッコつけるなんて許さないだから!」


 未流の言葉を聞き終わる前に二人の身体は離れていく。未流が睨みつけると藍銅は笑っていた。いや泣いているのかもしれない。目元に光るものがあるような気がしたが……


 体調不良のため魔力で飛ぶことは叶わず、身動きの取れない状態で重力に任せて落下するのだった。


 あれ?っていうことは??


「うぎゃーーーーーー、やっぱり落下オチか!ですわーーー!!」




 シフォンが翼をはためかせ上昇していた時、遠くで未流の叫び声が聞こえた気がした。「いけない、早くしないと皆が危険な目に」焦る気持ちを抑えながら必死に上昇を続けていくと信号機のような色彩を持つ少女が見えてくる!


 藍銅だ!!


「あ、藍銅ちゃ、ん。ぜえはあ、ぜえはあ……」

「魔法少女のコスプレした少年が飛んできたと思ったら智優ちゃんダ!」

<ぷっ!>

「藍銅ちゃんも詩芙音ちゃんも酷いや……。あと今の呼び名はシフォンね……」


 落ち込むシフォンの手を取ってくるくると旋回する藍銅。死闘の最中の再会にほっと胸を撫で下ろしているようだ。


「いけない!遊んでる場合じゃなかった。藍銅ちゃん、本物の『鬼恋丸榛綱』を貸して!!」

「え、『鬼恋丸榛綱』?急にどうしたの、智優ちゃん?『榛綱』で戦うの?」

「うん!『榛綱』だったら英霊を倒せるんだって!!妹さんの敵討ち、やっちゃうよ!」

「分かった!ちょっと待ってね!博士にロック解除を申請するから。博士、聞こえてましたか?解除よろ〜」


 研究所に控える有栖川ありすがわ東彦はるひこに向かってプライベート通信を行う藍銅。状況を観察していたためか、すぐに東彦からの返事が届く。


「こちら東彦。かしこまり〜」

「随分、軽い応答だね……」

「ン?ドウシタ、シフォンちゃん??」


  ――緊急制御モード移行中――


「スグにロック解除できるはずだから待ってネ」


<あれ?そういえばうちの未流が一緒にいたはずだけど。まさか逃げ出したとか?大変な時に役立たずなんだから!ぷんぷん>

「ねえ、未流ちゃんの姿が見えないけど大丈夫……?何処に行ったのかな??」

「アー、未流チャン」


 藍銅が指差す方を見ると大きなパラシュートが広がっている。


<あいつめ!全部片付いたらお仕置き決定だわ!>

「なんか誤解があるような気がするけど……。あれっ!何かが迫ってくるよ!?まさか英霊って空飛ぶの??」


 地上で小さな点が光ったかと思うと見る見るうちに赤黒い霧のような巨大な翼が広がっていく。あっという間に点は大きくなっていき中心にいるモノの姿が視認できるくらいになった。


 両手に太刀を構えた英霊が咆哮を上げながらシフォンに迫ってくる!


「マズい!シールドで防がなきゃヤられちゃう!」


 不意に後ろからシフォンの腕が掴まれる。

 腰に手が回るとくるりと抱き寄せられてしまう。


「藍銅ちゃん、今は巫山戯ている場合じゃ……、って、あれ?あれーーーー??」


 藍銅の胸部が蛇腹のようにパックリと開き、刀の柄が見える。ひんやりした空気が流れ出て太刀の放つ光を乱反射させる。ひと目で業物と分かる異様な雰囲気。


 鬼殺しの太刀『鬼恋丸榛綱』だ!



「遅い!遅い!遅い!遅かったではないか、楓御前よ!!」


 英霊は太刀を振り上げ、シフォンたちに斬りかかる!だがその刃はシフォンに届く前に破片となり地上に落下する。シフォンが剣筋を受けた拍子に英霊の太刀が砕けてしまったのだ。


「おじさん、女の子には優しくしなきゃダメなんだよ!」

「貴様、その太刀!まさか本物の『榛綱』か!?」


 英霊の腕に一筋の線が走る。血だ。血を流しているのだ!今度こそ、シフォンは英霊に勝つことができるのだろうか!?


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