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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第4章 さよなら魔法少女
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第76話 やって見せなよ、智優ちゃん!!

――駄菓子屋『美しき夢追い人』の続き


「良い方法、あるよ!」


 詩芙音しふぉんはポンと手を叩くと人差し指を立てて宙をステアするようにくるくると回す。


「今は智優ちゆちゃんが入っている詩芙音の身体はダメージが回復してないでしょー?で、私が入っている智優ちゃんの身体は全快してるけど私が魔力欠乏状態……」

「どーしょーもないじゃん!」


 詩芙音の状況分析に智優は思わず声を荒らげてしまう。赤城少佐と藍銅あずちゃん妹のピンチで智優はいっぱいいっぱいの様子だ。


「だからね、智優ちゃんの身体に智優ちゃんの魂を戻しつつ、私と融合しちゃえば万事解決っしょ!あは☆」

「え、何で融合するの?詩芙音ちゃんは自分の身体に戻れば良いんじゃ……」

「もー、私の身体キズ付けたんだからセキニン取ってよね、智優ちゃん!っていうか無理。智優ちゃんの魂が出た瞬間に私の身体は崩れてなくなっちゃうわ」


 何か琴線に触れたのだろうか?二人の会話を黙って聞いていたしおりが質問をする。


「ねぇ、それって智優ちゃんと詩芙音ちゃんが一体化してしまうってことなの?」

「まあ、そうなるよね」

「二人の魂は一つの身体に入っても大丈夫なの?混ざって一緒になったり、どちらかが消えたりしないのかな?」

「身体は智優ちゃんだから智優ちゃんの魂は親和性があるから大丈夫のはずだよ。それに私は魔女だから……、げふんげふん。私は友だちを想う強い気持ちを持ってるから大丈夫だよ〜!」


 取って付けたような詩芙音の説明に栞は納得がいかない様子。すかさず拓人たくとが更なる疑問を口にする。


「仮に今は大丈夫だったとして、戦いが終わった後に野伊間さんは元の身体に戻れるのかな?」

「まー、戦いが終わる頃には私の身体の修復が終わってるだろうから大丈夫っしょ!男のクセに細かいね、拓人くん」

「男から見ても細けーわ。もっとドッシリ構えろよ、拓人!」

「いやいや!いやいやいやいや!おまいら大雑把すぎ!」


 お茶らけて誤魔化す詩芙音に違和感を感じた智優が不安げに確認する。


「ねえ、詩芙音ちゃん。本当に大丈夫かな?詩芙音ちゃんが無くなったりしないか心配だよ」

「実は一つの身体に二つの魂をぶっ込んだら爆発するから滅茶苦茶マズイんだけどね〜」

「爆発?わ、私も!?」

「そうそう。YES,YOU TOO.」

「えーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 ぷっ!

 真顔からイタズラっぽい表情に変わり吹き出して笑う詩芙音。顔は血色が悪いのに笑顔だけは威勢が良い。


「だ、ダメだよね、その案。私まだ爆発したくない。っていうかこの先も爆発したくないんだけど」

「くくく、もー智優ちゃんたら反応良すぎ!私だって爆発したくないよ。っていうか爆発するって分かってるのに無理に融合なんてしないよ〜」

「じゃあ、じゃあ、どーすれば……」


「ロジカルシフォンに変身すれば魂の器が拡張されるから融合してもダイジョウブイ!」

「大丈夫?」

「うん、大丈V!」


「時間が無いと云っておるのに遊んでいる場合か!?悪ふざけが過ぎるのがお前の悪いところだぞ」

「おーこわ。ごめんごめん、ロム。智優ちゃんの困った顔が可愛いからつい遊んじゃった」

「まったく困ったものじゃ。ほれ、『融合変身』の準備はできているぞい」


 深淵の闇を思わせる暗い瞳で智優を見つめる。


「智優ちゃん、覚悟は良いかな?」

「このままじゃ元に戻れないし、赤城おじさんと藍銅あずちゃんの妹も助けなきゃだし、でもでも……」



「やって見せなよ、智優ちゃん!!」

「何とでもなるはず!!」


 栞のエールに力強く応える智優だった!



 ロムが何かの呪文を詠唱し始めると智優と詩芙音の足元に陰陽紋の魔法陣が現れる。


 智優と詩芙音は両手を繋ぎ、見つめ合うと身体を合わせていく。魔法陣から発せられる魔力のうねりが駄菓子屋の中の次元を歪めていき、普通の人間である栞や透、拓人には二人の像が変形して辺りの風景と調和し、一点に集約されて消えていくように見えた。



 魔法陣は転がした反物のようにひらひらと揺れながら広がっていく。端から裂けて細い帯に変わると二人の身体を包む。


 智優の目の前には智優の姿、まるで鏡の世界で自分を確かめるようだ。


「智優ちゃん、怖い?」

「少し怖いかな。身体、爆発しなきゃ良いんだけど」

「あははは!冗談だってば。爆発しないから安心して」


 潮騒。波が押し寄せて崩れるような音が聞こえる。満ちていく潮は二人の足元まで波を運んでいく。冷たい感触があったかと思うと、その感触も少しづつ失われていく気がした。それと同時に自分が感じている感触ではない感覚を智優は感じる。


「冷たいと感じる感触が段々、私と混ざっているの、分かる?」

「うん。分かるよ、詩芙音ちゃん。私、怖い……」


 足元から始まった感触の共有は足、腰、腕、肩と身体を上がってくる。共有された部分は自分の感覚ではないのだろう。智優は身震いをしながら奇妙な違和感を受け入れていく。


「私ね、何故か懐かしいの。初めての体験なのに詩芙音ちゃんと一緒になるのがとても懐かしいの。なんでだろう??」

「ふふふ、何でだろうね?もう少しで終わるから力を緩めてね」

「うんっ」


 詩芙音のイタズラっぽい笑顔が目に写ったのだが智優にとってその笑顔が詩芙音のものなのか自分のものなのか分からなくなっていた。


 二人は一つの身体に融合した。


 真・演算魔法少女ロジカル☆シフォンへの『融合変身』は静かに成功したのだった。




(あれ?成功したのかな?)


 シフォンはグーパーしながら手を眺めている。


(確かに動いている。私の手だ。なーんだ、いつもの変身と同じ?)


「はわっ!ち、智優ちゃん!!写真撮らなきゃ!!私のスマホが無い!無いよっ!!きぃーー」

「り、鈴偶……。さすがライバル。衣装も攻めるなんて、やるな!」

「……良い。すごく良い……」


 智優は店の硝子戸に写った自分の姿を確認する。そこには前回の変身よりも更に(露出度が)パワーアップした魔法少女の姿があった。


 前回と同じと思いきや、今回は智優の身体のまま魔法少女の姿に変身しているではないか!!


「きゃーーーーーーー!栞ちゃん、見ないで!っていうか透も拓人も見るな!!!とにかく見ちゃダメーーーー!!!」


 つるぺたの胸部分を隠して超短いスカートのお尻部分を押さえると、顔を真っ赤っ赤にして叫ぶロジカルシフォンだった。


 黒歴史。女装趣味の少年が魔法少女のコスプレをしたけど羞恥心に負けて騒いでいるようにしか見えなかった……


「色々、酷いよ……、ひんひん。あれ!?詩芙音ちゃんがいないよ。まさか消えて無くなっちゃったの??」

<やっほー、ここだよ〜>

「え!?私の中に詩芙音ちゃんがいる??」

<こんな智優ちゃんの身体ってこんな感じなんだ。へー。ほー>


 智優は自分の内側に感じる詩芙音と五感が繋がっていることに気付く。自分の感じる感触は詩芙音の感じる感触に変換されて共有されていく。ピチピチのコスチュームに身体が擦れる感触やスカートがスースーする感じなど、全ての感覚が一体化しているのだ。


「ちょ、ちょっと詩芙音ちゃん!私の中でもぞもぞしないで!」

<ごめんごめん。だって智優ちゃんの胸もお尻もつるぺただから私サイズに合わなくて苦しくって〜>


「もー、みんな嫌い!大ッ嫌い!!えーーーん、もうやだ〜。じーちゃんのところに帰る〜〜」


 魔法少女のコスプレをした少年(?)が顔を真赤にして涙目で叫ぶのだった……


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