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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第4章 さよなら魔法少女
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第74話 王子様の帰還

――駄菓子屋『美しき夢追い人』


 一人の少女が腕を組んでブツブツと呟きながら、小さな店の中を行ったり来たりしている。少女の足元には黒猫が呆れた様子で見上げながら、腕をペロペロと舐めて顔を擦って気持ち良さそうにしていた。


「……もしものことがあったら私の支配する電脳空間を急速拡大させて狭間のセカイごと飲み込んで……」

「物騒なことを呟いてないで落ち着いたらどうかの?」


 ソワソワ、ソワソワしていた少女は踵を返して黒猫に反論する。


「な、何のことかな?クール系美少女の私が心配で落ち着かないとでも?」

「ふむ、その通りじゃの」

「勘違いしないでよね!私はしおりちゃんも智優ちゆ(本物)ちゃんも信じてるんだから!」


 普段の活発な姿から考えられないくらい青白く血色の悪い顔の智優(偽)が言葉を荒らげて言い返す。顔色の悪さは今、鈴偶りんぐう智優ちゆの身体に遷移している魂が野伊間のいま詩芙音しふぉんゆえなのだろう。


「くっくっく!ここに来て『ロジックの魔女』も随分と人間らしくなったものだ。いや、良い。良いことじゃよ。こうでなければ新たなグリモワールの創生なぞまやかしに過ぎないじゃろて」

「ふん!」


 強気な口調とは裏腹に智優(偽)は己の不安を隠す余裕が無いほどに落ち着き無いのだった。


 ソワソワ……、ソワソワ……




 一方、別世界を繋ぐ扉を開けた4人。野伊間のいま詩芙音しふぉん(偽)、神埼かんざきしおり花田はなだとおる辻村つじむら拓人たくとは互いの手を繋ぎ、光の導く道を一歩、また一歩と歩いていた。


 周辺に距離感を感じさせる物体は無く、ただ道だけが続いている。友だちの手を離したら何処で行ってしまうか分からない。漠然とした不安が手に力を込めさせてしまうのだが、誰も痛みを訴えたりしない。繋ぎ止めるものがなければ己の存在が危ういのではないか?手の痛みだけが子どもたちを繋ぎ止めるのだった。


「ねえ、あれ!」

「栞ちゃん、何か見える?」

「うん!あそこに黒い四角があるよ!!」


 確かに光の道の先に何かが見える。詩芙音(偽)には周りの光が邪魔をして先にあるものが何か判別はできなかったが、確かに何かある。そう感じた。


「急ごうぜ。後ろの道が無くなっている気がする」

「両サイドの俺たちが引っ張ったら二人とも踏ん張って歩けるかな?」


 拓人の問い掛けに黙って頷く。そして拓人は透に目で合図を送る。


「あ?俺なら大丈夫だって!せーの!!」


 透と拓人は前屈みの姿勢になり歩幅を広げて一歩を踏み出す。それにともない詩芙音(偽)と栞の手も強く引っ張られる。


「もう少しだから頑張ろう、詩芙音(偽)ちゃん!向こうでもんじゃ焼きが待ってるよ!」

「え!もんじゃ焼き!?食べたいぃぃ!」

「次もんじゃは失敗するなよ、拓人!」

「いや、あれは不可抗力で……」


 4人は笑い声を上げる。どこまでも続くように見える道を進む困難にも滅気ずに笑う。やがて光の道の出口へ近付いていく。一歩、また一歩と。


 出口と思しき漆黒の四角。扉の形も成していない只の四角。光を吸い込んでいるせいか中の様子は伺えない。この先に進んで良いのだろうか?それは誰にも分からない。分からないだろうが、いま来た道は既に消えて無くなってしまい、戻ることは敵わない。つまり漆黒の四角に飛び込むしかないのだ。


「どこにも行けない。逃げられない。四面楚歌とはこのことか……」

「あのよー。頭いーのは分かるけど、みんなに分かるように話してくれよ。かったるい!」

「そうだよ、拓人くん!私も苦手!」

「……(俺も苦手だよ、神埼さん)」

「あはは!みんな分かってないな〜。拓人はね、云うことが一周回って楽しいんだよ!ねえ、拓人?」

「えっ!?そんな風に思われたの俺??」


 ぷっ、ははははは!(x4)


「じゃあ、行こうか!」

「「「うん!!」」」


 4人はせーのでジャンプして漆黒の四角の中に飛び込んでいった。間髪入れずに道と四角は光に飲まれて消えてしまった。あとには光と静寂に支配された虚無だけが残されていた。




 突如、駄菓子屋の前に純黒の円が現れる。


 その瞬間に智優(偽)は円を睨み、大きな声でカウントを始める!



――いーっち!!――


「痛ってぇーな、ぼけ!誰の肘だよ!!」

「腹に!脇腹に刺さるぅ〜」

「うわ、満員電車みたいだね!」

「うーん、私たちは女性専用車両に移動したいな」



――にぃーーー!!!――


「ちょ、この手は誰!どこ触ってるのよ!!」

「…………」

「…………」

「黙ってたら二人ともお仕置きだからね!!」

「ご、ごめん栞ちゃん。それ私かも」

「もーーー、詩芙音(偽)ちゃんだったら大歓迎よ!!」

「…………なあ?」

「…………云うな」



――さんっ!!!!!――


「うぉ!急に出口だ!!」

「痛!ケツ打った!!」


 先に落ちた男の子たちがマットになり、姫さまを抱っこした王子様は華麗に着地する。


 姫さまの顔は真っ赤で目には巨大なハートマーク。きゅんきゅんし過ぎて止まりそうな心臓。今にも過呼吸で倒れてしまいそうな激しい息づかい。


「たっだいま〜〜〜!!!」


 王子様は辺りを見回し、懐かしい姿を見つけると明るい声で帰還を告げる。


「おかえり、智優(本物)ちゃん!!もー、心配で待ちくたびれたんだからねー!」


 魔女はふわりと飛び上がると王子様とお姫様にタックルして、あらん限りの力でぎゅーーーっと抱き締めるのだった。


「ぎゃーーー、重い!」

「馬鹿!それ、云っちゃダメなやつ!」


 踏み台の男の子たちをぎゅーーーっと踏み締めながら!



「ふーー、やれやれだわい。相変わらずボン子には振り回されるの。それにしてもシフォンのやつめ、口では平生を装っていたのにボン子の姿を見たら形無しだの。若い魔女は可愛いものだな。くっくっく!」


 黒猫ロムはヤレヤレのポーズで子どもたちの帰還を祝福していた。



「さ〜て、お次は二人を融合する準備かの……」



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