第53話 刀剣バトル!シフォンの死闘
――崩壊途中の校舎の屋上
藍銅ちゃんが放った超遠距離射撃は舞金小の屋上で魔法少女の奇襲に備えていた『影を操る者』達がいる場所に直撃し、成功したかに見えた。
周囲を空間閉鎖中の舞金小校舎は重力を無視した異常にノロい速度で崩壊している途中。
こちらの奇襲が直撃した後で魔力の動きを探った結果、幸いにして集結していた3つの魔力源がバラバラに分かれたことが分かった。各個撃破作戦。私とカラフル・ミルは二手に分かれ、それぞれの敵を倒すことに決めた。
「詩芙音ちゃん、分断したとはいえ敵の魔力は強大だよ。私、一人で大丈夫かな……」
「ノンノン、今は『詩芙音ちゃん』じゃなくて色彩魔法少女☆カラフル・ミルだよ〜。良くって、演算魔法少女☆ロジカル・シフォン?」
「えー、自分の名前で私のことを呼ぶの、違和感んないの?私、何回変身しても慣れないんだけどな……」
「まだまだ修行が足りないな、ボン子よ!」
「なんの修行だよっ!?明らかに魔法少女の修行じゃないよね??」
一緒に飛行する黒猫ロムがいつもの口調で私に喧嘩を売る。売られた喧嘩を買いたいのは山々だけど今は敵の撃退に意識を集中しよう。集中しているだけでボンヤリしているわけじゃないよ。たぶん。
っていうか翼もない猫が飛んじゃダメでしょ!どういう原理で浮かんでいるのよ、全く!
「あ、あとさ。何で変身するたびにコスチュームがキワドくなるのかな?前回よりも明らかにスカートが短くなってるし、密着度が上がっているというか……、胸もお尻もフィットし過ぎなんだけど」
「うーん、何でだろ?カラフル・ミルのコスチュームは前回と同じ感じなんだけどな〜」
カラフルとは程遠い喪服のような色合いのゴシック・ロリータ調のコスチュームをはためかせるミル。空中を飛びながら器用に腕を組み首を傾げる。ミルもミルでどうやって飛行制御しているのだろう?私なんて泳げない子がもがくように必死で飛んでいるのにな。
「分かったわ、シフォン!それはきっとシフォンの願望よ!念願かなって魔法少女になった次は更に過激にエッチくイメチェンしたいのね。ひゅーひゅー、やる〜」
「!!!」
なんてこと!この姿が私の願望!?普段、男の子チックな衣装でキメているのは何なの?恥ずかしさで動悸が乱れ、飛行姿勢も乱れ、危うく地面に落下して自爆してしまうところだった。
「ボンヤリしているところを悪いがの。そろそろ会敵じゃ!」
目標地点に向けて飛行しつつ高度を下げていくと、小さな点に過ぎなかった舞金小の校舎が徐々に大きくなっていく。そして建物が崩れる轟音とともに煙のような粉塵が舞い上がり建物の姿が見えなくなっていく。
血が滲むほど強く下唇を噛むと手の震えが収まっていく。そして私は戦う覚悟を決める。ミルは私を勇気づけるように微笑んでいた。いつもと違う、血色の良い顔で。何故ならいつも血色の悪いシフォンの身体は私が借りているから。
「ミル、頑張ってくるね!」
「うん!身体傷つけたらセキニン取ってね!」
「えーーー、またそれぇ?」
「あは☆」
カラフル・ミルは両手、両ツインテールに4刀の『色彩の刃』を構え、飛行の軌道を変えて魔力の1つの方向へ飛んでいく。そして私とロムはもう1つの魔力がいる崩壊途中の屋上へ向かうのだった。
私たちは崩壊途中の校舎の屋上へ着地する。粉塵が舞い上がり視界が悪い中でも隠すことのない強力な魔力が放たれる場所は分かった。舞い上がる粉塵は無惨に砕けた校舎のものとばかり思っていたがそうでもないようだ。
「何、この匂い……。花火のような」
「これは火薬の匂いじゃ」
「火薬?藍銅ちゃんのミサイルは爆発したんじゃなかったの?」
「あれを見なさい」
ロムに指さされた先を見ると鉛筆のようなものが大量に転がっている。一体、なぜ屋上に大量の鉛筆が転がっているのか?そもそもコレは鉛筆なの??
煙の先の空気が揺れる。
瞬時に私は意識を演算世界に移して手のひらに指先に短剣のような鋭利な刃を実体化させ、煙の先から迫ってきた剣撃を打ち返す。
――ガキィーーン!
刀と刀。固い金属どうしを打ち合ったような高い音が鳴り響く。
私は大きく後ろに飛んで敵との距離を図ろうとする。正体の分からない敵と接近戦など御免被りたいゾ。
風が吹いた瞬間、粉塵と火薬の混ざったヴェールが晴れて敵の姿が顕になる。ソコには恐ろしく長い剣を構えた影が私たちを睨みつけていたのだった!
<ロム、聞こえる?ボンヤリしてない??>
<ふん!主と一緒にされては困るの>
<敵の攻撃を防ぐから構造体解析をお願い!>
<やれやれ、またボン子に使われるとはの>
<同じツッコミで申し訳ないけど……、私たち全員のピンチでしょうが!魔法少女チーム全員のために強力しなさいよね!!>
<ワン・フォー・オールか!相変わらず煽るの、ボン子!!>
念話でロムのやる気スイッチをオンにしているうちに影はジリジリと間合いを詰めてくる。剣を鞘に収めて右手を柄に添え、腰を下げた姿勢で摺足をしているようだ。おじいちゃんと一緒に見ていた時代劇に出てきたような姿勢だぞ。何だったっけ?ほら……
見えない速度で影の右手が動くと剣が抜かれる。十分な間合いを取っていたため剣の直撃はないものと油断していたが、振り抜いた剣の残影から剣以外の何かが私の方へ迫ってくる!
くっ!剣を振り回すだけで飛び道具が出せるのか!?
屋上のコンクリを強く蹴って背面跳びで敵の衝撃波をかわす。空中から屋上を確認すると衝撃波が屋上の入口がある建物にぶつかり、建物が崩れていくのが見える。
あんな攻撃を食らったら一溜りもないぞ!
衝撃波を防ぐ対策を考えて油断していると影から一閃の闇が光ったような気がした。いや。正確には影本体ではなく、影の背後に浮遊していた球体が私を狙撃してきたのだ!
盾の準備は間に合わない!
せめて急所の直撃は避けたい!!
光翼に力を込めて細かく羽ばたき、影の攻撃をわずかにかわそうとする。だが攻撃の速度の方が私の回避運動を上回り左腕を貫く。
くぅーーーーーーーーー!!
痛みを司る神経を刺されたような鋭い感覚に襲われ、痛みを我慢するために全身から薄っすらと汗が滲む。
痛い……、泣きたい……
でも泣くのは今じゃない!!
シフォンは泣かない。身体を引き裂くような痛みに耐え、影を睨み返す。強い決意――敵を倒して友だちとの楽しい日常を守る!――を胸に秘めながら。




