第50話 分裂式多弾頭ミサイルの洗礼
――深夜の舞金小、新校舎の屋上
雲の切れ目から月明かりが差し込む。上空は強い風が吹いているのか、雲の流れが早く月の光が舞金小学校を照らしては隠れ、雲の影が現れては消える。
魔力探索を行っていた司祭服の男は魔法陣の中の探索検知針の異常な動きに目を見張る。額の汗が仮面の下の素顔に伝わり落ち、心拍数が急上昇していく。
男が上空を指差し、何かを叫ぶと傍らにいたレディもつられて空を仰ぎ見る。
雲の切れ目から光の筋が一線、舞金小の屋上を指す。そして小さく見える円筒が光の筋に沿って現れ、あっという間に筒は大きくなっていく!
「な、何なのアレは!?」
「普通のミサイル?いや、だが魔力のようなモノが込められているぞ!」
「な、何とかしなさい!佐藤!!」
レディの命令を聞く前に佐藤こと、司祭服の男は魔力探索用の魔法陣を解除して削除すると空に向かって両手を広げ、迎撃用の対空魔法を詠唱する!
高速で生成された一発の対空魔法が発射され、上空のミサイルに迫っていく。
「やるわね、佐藤!!やれやれ先制攻撃とはナメられたものね。さあ、来なさいよ、カラフル・ミル!!今度こそ、コテンパンにしてやるんだから」
「お待ち下さい、レディ!!様子がおかしいです」
対空魔法が直撃したミサイルの爆煙の中から細かなモノが落下しているように見える……
「な、何なの……」
「多弾頭ミサイルだ!!」
司祭服の男が叫んだ時には手遅れ。4段階目まで分裂した多弾頭ミサイルが上空を覆いつくし舞金小の敷地範囲を軽く越える面積に広がり、落下速度を早めていった。
逃げる暇も無かった『影を操る者』たちは鉛筆大まで分裂した多弾頭ミサイルの直撃を食らう!レディはその場を動かず新型の石殻外套に身を隠すが司祭服の男は防御用の魔法陣が間に合わず何発もミサイルが突き刺さり爆発に巻き込まれてしまう。
その時、長剣を携えた影は……
踊るようにミサイルを避けつつ、長剣を振り回して撃ち落としていく!
そしてミサイルの爆発に巻き込まれた舞金小は地面が割れ叫ぶような音を立てて真っ二つに割れて崩壊していくのだった。
屋上が崩れ立っていられなくなったレディは魔力を使い、ゆっくりと落下していく。爆発の衝撃で崩れた校舎の破片が石殻外套にぶつかるため、防御姿勢を崩すことができず、周りの状況を目視確認できない。たとえ防御を解いたとしても爆煙と粉塵で辺りなど見えるはずもない。
「このまま魔法少女と戦うのは不利ね!地面まで落下したら体制を立て直すわ!!」
地上まで落下した感触があった後、急速に校舎近くから離れて校庭へ移動する。石殻外套に包まれたせいで正確な位置は分からないが、およその方向は見当がつく。移動をしてみると石殻外套への衝撃が無くなったので恐らく正解なのだろう。
「くそ!くそ!くそ!くそ!くそ!毎回、何だったいうの!!」
石殻外套の防御を解除すると目の前には……
キィーン!!
レディの首すじを狙って『色彩の刃』が襲い掛かる!だが咄嗟にコマのように回転して石殻で刃を弾くと、まるで硬い金属と金属を叩きあったような冷たい響きの衝撃音が鳴り響く。
「遅かったじゃない。待ちくたびれたわよ」
「き、貴様はカラフル・ミル!!」
「新しい玩具、楽しそうね〜」
「せいぜい楽しみながらくたばるがいいわ!」
巨大なツインテールの魔法少女を睨みつけ、仮面の下で狂気の笑みを浮かべるレディだった。
――少し前、舞金小の上空、流れる雲の中
詩芙音ちゃんの身体を借りた私、ロジカル・シフォンは背中の光翼を羽ばたかせ、舞金小に向かって飛んでいる。何度、変身してもスースーするスカートと凹凸豊かな詩芙音ちゃんの身体には馴染まない……
すぐ近くを飛行する未流ちゃんの身体を借りた詩芙音ちゃんこと、カラフル・ミル。身体を貸す時、涙目で「姉さま、大切に扱ってくださいね」と訴えていたが詩芙音ちゃんはニコニコするばかり。「大丈夫!」なんて答えると嘘になるから答えないんだろうな〜。今日もノリノリだけど大丈夫かな??
そして新しい友だち、体内に組み込まれた兵装を展開して飛行形態となった藍銅ちゃんが飛んでいる。私が心配そうに藍銅ちゃんのことを見ていると気付いたようで手を振ってくれた。その拍子に手に抱えていた2D詩芙音ちゃん人形(未流ちゃん入り)が落ちそうになる!
「あんた、バカぁ!?手を振ったら私が落ちるでしょうが!」
「未流ちゃん、メンゴメンゴ!」
メンゴのポーズを取ってしまい、2D詩芙音ちゃん人形がスルリと落下する!
「んぎゃーーーーーーーーーーーー!」
涙の雫を残しながらドンドン小さくなっていくお人形、それを追い掛ける人影!!カラフル・ミルは旋回して急降下すると落下する2D詩芙音ちゃん人形をキャッチした。
「もー、遊んでんじゃないわよ、未流!!」
「えぐ!えぐ!だってポンコツが手を離すから……」
「奇襲の要なんだからしっかり頼むわよ!」
「ふぁーい……」
――更に少し前、野伊間家
突然の来訪者、有栖川藍銅ちゃんは戦闘準備万端だった。
有栖川東彦は独自開発したレーダーで異形の影が出現したことを掴んでいたのだ。そして野伊間家から発せられる魔力も。したたかな男は異形の影を狩るために魔女と共闘することを目論んだのだ。
こちらも3人相手が厳しかったところ。共闘の提案を快諾し、一緒に奇襲することとなった。
「ふむ、有栖川某どのの強力、心強いの!して、どのような攻撃ができるのかな?」
「猫、しゃべッタ?AI学習実施!」
「ら、藍銅ちゃんは普通の女の子だから戦うことなんてできないよ!」
妙な話の流れで藍銅ちゃんが怪我をすることを恐れた私は必死で抵抗する。だが……
「本日は長距離攻撃用の兵装を装備してきまシタ。射撃に恋愛、遠距離ならば任せてクダサイ!!」
「遠距離の恋愛は関係ないけど……、えーーーーー!!何で武器を装備してるの!!??」
「あれ?智優ちゃん、藍銅ちゃんはアンドロイドだから武器くらい装備してるよ〜。ねえ?」
「へ??」
「またボンヤリしてるから」
「そ、そんな説明あったっけ??」
「やだな、智優ちゃん。前に公園でレディに襲われた時、藍銅ちゃんが全弾発射で助けてくれたんだよ〜」
「私、その時、公園にいなかったじゃん!説明してよーーー!!」
騒ぐ私を無視するように作戦会議は進み、私は置いてけぼり。酷い……
「ふむ。遠距離射撃は有効だがの〜。藍銅どの、発射タイミングは大丈夫かい??」
「見敵発射!」
「むむむ。いかんな……」
悩むロムを押しのけるように割り込む詩芙音ちゃん。目が爛々と輝いている時は突拍子もないアイデアを思い付いた証拠。
「ねえ、未流。私たちが戦っている間、暇でしょ?藍銅ちゃんの司令塔になってあげなよ」
「は?」
「藍銅ちゃんと一緒に高高度から遠距離射撃するの。敵の位置とか発射タイミングとかは未流が指示してね。どう、できそう?」
「できると思いますわ。でも私は姉さまと一緒に……」
「あは☆あんた戦闘向きじゃないんだから一緒に戦うなんて無理無理。それとも本当に人間の盾になって散る?」
首を横に振ったり、縦に振ったり反応に忙しい未流ちゃん。うーん、詩芙音ちゃんの云い方がな
〜。
「で、遠距離射撃が命中して混乱しているところに私と智優ちゃんが突撃するって流れよ。作戦、よろし?」
舞金小に張り巡らせた空間閉鎖の魔法が解ける時は刻々と迫っている。詩芙音ちゃんの作戦に誰も異論は無かった。
「とりま、状況開始だょ〜☆」




