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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第3章 どきどきスウィート☆シフォン
33/90

第33話 噂のスウィート☆シフォン

――夕方のコンビニエンスストア、セブン・レイブン舞金通り店


 セブン・レイブンは全国に店舗展開する大手のコンビニエンスストアで、M県の中で最も店舗数が多い。県内で流通ルートを確立しており、各市を繋ぐ大きな道路沿いに店舗を展開し、他のコンビニの追随を許さない独占状態だった。当然、舞金のニュータウン界隈にも店舗があり、地元学生たちの重要な憩いの場となっている。


 セブン!レイブン!いい時分じぶん〜♪


 今日はセブン・レイブン舞金通り店のイートインコーナーで、小学校帰りの6-2女子グループがおしゃべりしているようだ。


 女子グループのリーダー、木村きむら朋美ともみはメンバーの鳥海とりうみ佳苗かなえ須藤すどう美波みなみが話し掛けてもうわの空の様子。


「……って聞いてる、朋美?」

「ん、あー。何だっけ?」

「もうすぐ、8TSが解散するって話」

「ゴメン佳苗、あんまり聞いてなかった」

「最近、ボーッとしてるけど何かあったの?」


 佳苗の問い掛けには答えずダイエットコーラを飲みながら笑ってごまかす朋美。


 本当は恋の悩みを打ち明けて相談できたら何と心強いことか。だがそれができないのだ。何故ならば朋美は独自の弱者選別と威圧で舞金小の中でも有力な女子グループをまとめる長なのだから。力で人を押さえつける人間の悲しいサガである。


「しっかしさ〜、こないだは意外な組み合わせだったじゃん」

「何だっけ?」

「鈴木クンと鈴偶りんぐうよ」

「あー、アレね。TSっ娘はアレな女子だけにモテてれば良いのに、鈴木クンと仲良くなろうとするから自業自得よ」

「あはは、それにしても突き飛ばすなんて思わなかったわ。良い転びっぷりで超ウケた」

「うんうん。役者かよって感じ」


 無様に転ぶ智優ちゆのことを思い出してケラケラ笑う佳苗と美波。転んだ人間の痛みなど微塵も感じない様子だ。


「てっきりチクられて先生から説教されると思ってたら全然無かったよね」

「あー、たぶんビビって云わなかったんじゃない。良かったね、朋美」


 朋美の目が帳簿の間違いを見抜いた税理士のように鋭く光る。


「三人揃ってやったんだからね。分かってるわよね?」


 佳苗と美波は言葉に詰まる。


「あ、当たり前ジャン。ねえ、美波?」

「そ、そうだよ。三人でやったんだからね〜」


(くそ。朋美が命令したから付き合ったんだろうが。ほんと超メイワク……)

(マジか。まさかバレたら私の命令だったなんて云い出さないでしょうね……)



 主従の関係を明らかにするための威嚇が終わると朋美は気になって仕方なかった話題を口にする。


「まあ、いいわ。いずれにしても終わったことね」

「そ、そうだよね」

「ねえ、そういえばさ。転校生の野伊間さんって占いやってるの?」

「あー、もしかして占い係の話かな?」

「は?占い係って何よ?」

「何か委員会みたいな位置づけで新しく占いする係を作ったって聞いたよ。それのことかな?」

「あー、それかも。でさあ、そこで『絶対成就の恋占い』っていうのがあるらしいんだけど」


 それまで威嚇のために光っていた朋美の目が好奇心の光に変わる。


「あー、それも聞いたかも」

「なんでも夕方、決まった時刻に占い係の部屋に行くと魔法少女みたいな格好した野伊間さんがいて、そこで占いをやって貰ってアドバイスに従うと恋が叶う。みたいなやつ」

「ふーん、子どもっぽくてウケるんだけど。もうちょっと詳しく教えてよ」

「それはね……」


 (川で)溺れる者は藁をも掴む。

 (恋に)溺れる者は占いを頼る。

 それは古今東西、変わらない真理だった。



――翌日の放課後、旧校舎内


 朋美は女子グループの仲間の誘いをやんわりと断り、一人で旧校舎に残っていた。目の前には準備室のような小さな部屋、扉には乙女書体で『占い係の秘密部屋☆』と書いた札が下がっている。


(佳苗と美波に聞いた占い係の部屋はココに違いないわね。で、16:51にこの扉を開けば良いのね)


 時計を見ると16:50を指している。長針が進んだのを確認して扉を開けると……


「ようこそだよ〜。私、スウィート☆シフォンがあなたのどきどきを叶えてあげるね!」


 そこにはアニメのコスプレのような衣装を着た野伊間のいま詩芙音しふぉんがいた!


 ピンク色を基調としたコスチュームを身に着け、スティッキを振りかざして朋美の方へ向けてポーズを取っている。よく見るとスティッキの先に鎖が繋がっていて、鎖には先が丸くて可愛い棘付きの球体が付いていた。物騒な見た目のマジカルスティッキがあったものだ……


 普段ならば驚きで悲鳴の一つも上げているところだが、扉を開けた時から頭がボーッとして身体の自由が利かない。朋美はスウィート☆シフォンに誘われるがまま靄がかかったような輪郭が不鮮明な部屋の中に入っていくのだった。


「木村さん、座って、座って」

「う、うん……」

「人のことで何か困っているんでしょ?」

「え?ええ。実は好きな人がいて」

「周りに相談しづらかったのね」

「そうね。私、女子のリーダー役だから。それに初めての恋なんて云えなくて」

「初恋でアプローチが分からなくて困ってるのね」

「うん。鈴木くんのこと、好きで好きでどうしょうもないんだけど、どうして良いか分からなくてさ」

「鈴木くんと付き合いたいのね」

「そ、それは…… まあ、そうね。告白して付き合いたいと思ってるんだわ。きっと」


 朋美が思っていることをズバズバと云い当てるシフォンの予知力を目の当たりにして、シフォンは信じられると確信するのだった。


「ねえ、『絶対成就の恋占い』って……」

「木村さん、心配しなくても大丈夫だよ〜。『絶対成就の恋占い』を今から始めるネ!」


 シフォンはテーブルのうえにトランプくらいのサイズのカードを並べる。そして1枚づつめくりながらカードに書いてある図柄の意味と暗示することを説明をしてくれる。


 図柄は日本では見かけないような不思議な図柄ばかりで、例えば塔が稲妻に打たれていたり、逆さ吊りにされた男のような不吉なモノがあれば、星や威厳ある女性があったりと、見ているだけで惹き込まれるカードばかりだった。


 最後の1枚をめくりシフォンの説明が終わる。だが結局、自分が何をしたら良いのか分からなかった朋美はすがるようにシフォンに問いかける。


「シフォンさん、私は結局どうしたら良いの!?」

「私の占いを信じて告白すれば鈴木くんをゲットできるはずなんだけど、初めてじゃ心配だよね?あは☆」


 シフォンは握った手を朋美の前に突き出すと呪文のような言葉を唱える。何をしようとしているのか分からずシフォンの顔と拳に視線を行ったり来たりさせていると、いつのまにか手のひらに小瓶を持っている。それを朋美の前に置く。


「これは?」

「これは秘密の魔法アイテム『完全勝利のモテ薬』よ」

「『完全勝利のモテ薬』!?」

「コレを飲んでから告白すれば魔法の力で絶対に振られることはないわ。1瓶で980円、今ならなんとおまけにもう1本付いて同じ価格だよ〜!」

「買った!!!」


 シフォンから『完全勝利のモテ薬』を受け取りホクホク大満足の朋美。占いで得た知識と魔法アイテムを使って早く告白したくて仕方ない様子だ。


 シフォンに礼を云って部屋を出る朋美。


「ただ、その魔法アイテムは心の美しさで効果が決まるし、使ったら使ったで対価が求められるから気を付けてね〜」


 手に怪しげなモノを抱え、パタパタと走り去る背後から何か聞こえた気がしたが耳に届くことはなかった。


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