第25話 移動式多脚砲台vs魔法少女!
――悪ガキどもの秘密基地近く、シフォンと巨大な亀型の影の戦い!
落下する前に糸が突き刺さった傷が痛む…… 傷の回復に魔力を費やしつつ、目の前の巨大な影の動きを見張るシフォン。
自分が守ろうとする空間に侵入した異物を排除するかのように、影は怒気を孕みながらゆっくりとシフォンのいる場所へ移動してくる。
<ロム!聞こえて!?ロム!!>
シフォンは一緒に地上に落ちた黒猫ロムに念波で語り掛ける。
<うむ、聞こえておるぞ。ワシはボンヤリしていないのでな>
かっちーん!
でも、ここはグッと我慢だ、シフォン!
<このまま戦ってもアイツに勝てない…… それは本能で分かる!だから協力して、ロム!!>
<やれやれ、ワシは現場に手を出さない主義なのだがな>
後ろ足で頬を掻くロム。黙っていれば可愛いネコなのだがオッサン口調に何とも萎える……
<……影の構造体解析に力を貸して欲しいの。終わるまで時間を稼ぐから頼んだわよ!>
<ふむ、ワシの声は聞こえておらんの……>
<現場にいるんだったら偉そうなヤツも手を動かしてよ!現場武勇伝を思い出して!!!>
<……>
<あ、あれれ?怒った??>
<ボン子め!唆られることを云いおるわい!まだまだ若い者には負けないことを証明してやるゾ!!>
良く分からないツボに入ったロムは人間の聞き取れない言語をブツブツと呟き始め、念波の会話は中断してしまった。し、仕事を始めた、で良いんだよね??
気を取り直して迫りくる巨大な影に向き直るシフォン。
(あの鈍い動きならば避けることができる!受けたダメージを回復する時間を稼いだら……、え?あれは何!?)
亀のような姿の影が動きを止め、細かく震え始めると上部の背中部分が膨らみ、大きなコブが盛り上がっていく。背中いっぱいの大きさにコブが膨らむと、次にコブの表面から槍の尖端が生成されていく。
どこかで見たような形……
まるで戦車の砲台のようだ!!!
(やばい!!)
シフォンがいる方向に向けて槍状の物体が発射されるた瞬間、シフォンは側転しながら攻撃をかわし、傷ついた光翼を広げ上空へ舞い上がる!
ぼっぼっぼっぼっぼっぼっ……
槍の生成は間断なく続き、発射は途絶えず、上空への攻撃が止まない!
シフォンは不規則旋回で飛行しながら槍をかわしていく。
(な、何なのあの攻撃は?それにあの姿!背中の砲台で投擲槍を生成して発射する4つ足の戦車……、まるで移動式多脚砲台のようだわ!)
シフォンが蛇行旋回で飛行を続ける間も移動式多脚砲台の砲塔にはジャベリンが生成され、シフォンへ向けて投擲を続ける!シフォンは本来の速度は出せないものの、必死で低空を飛空してジャベリンをかわしていくのだった!
全方位に渡る連続した攻撃、移動式多脚砲台に全くスキが無い!
ぐぐぐぉぐぉぉごーーーーーー!!
シフォンにジャベリンが当たらないことに苛立ちを覚えたのか、影が咆哮を上げる。すると今まで一本づつ生えていたジャベリンが……。何と細くなり、背中いっぱいに生えるではないか!?
(まさか『点』の攻撃から『面』の攻撃に変える気か!?)
シフォンが背の高い木への激突を避けるために旋回して失速した瞬間に、細いジャベリンはシフォンが飛ぶ方向へ集まり、一斉射出を行う!
目の前に迫る無数のジャベリン!
既に避けられる距離では無い!!
――ぴぽっ!
……どこかで電子音の合図が鳴る……
シフォンの目の前に迫ってくるジャベリンの雨がスローモーションに変わる。
――40 40 0F A0 F4 0E CA DA FF FF FF 0F……
気付くと、そこは電脳の海。
あらゆる事象がロジックで解釈される『ロジックの魔女』の構築するセカイ。
シフォンは事象をメタファする。
……二つの軍隊。睨み合う何万人もの兵たち。歩兵同士が衝突する前に放たれる矢の雨……
……矢の雨による洗礼を受け止め、歩兵を守るモノ。それは命を託す盾!!
――1010 1101 0001 1100 1100 1011 0101……
イメージは実体化し、シフォンを守る防具となる!シフォンの手には何者にも書き換えできない大きな塔盾、コンスタント(Constant)シールドが!!
ひゅん……、がんっ!!!
コンスタントシールドの裏に隠れ、必死で盾を支えるシフォン。ジャベリンが刺さるたびに盾が押されて圧迫され、弾かれそうになるのを無我夢中で耐える。
ジャベリンが刺さる衝撃が和らいだのを見計らいコンスタントシールドの覗き窓を開けて影の様子を確認すると……、地上にいたはずの影がいない!!
(し、ま、った!!!)
巨大な影がシフォンの更に上方にジャンプし、巨体を落下させながらシフォンを潰そうとしているではないか!!
(まずい!まずい!まずい!押し潰されるぞ!!!!)
コンスタントシールドを構え直して影の落下攻撃に備える。直撃して地上まで落とされたらコンスタントシールドごと潰されて一巻の終わりだろう……
シフォンが敗北を覚悟したその時!!
ぎゅぉぉーーーーーーーーーーーーーん
シフォンが滞空している高度よりも遥かに高い場所から降り注ぐキラキラした無数の線。先ほど自分を貫いた針のような糸が今度は移動式多脚砲台の砲台を貫く!!!
ぐがぁーーーーーーーーーーー!!
上空を見上げると七色の色彩が点々と空一面に広がっている!光の形を確かめると人型のように見えるが…… あの身体を上回るほど大きいツインテールのシルエットは…… ミルではないか!
高度上空では一体何が起きているのか!?
(ミル、無事で何より!でも何で敵が敵を攻撃したの?訳が分からない…… でも結果オーライで助かったわ!!)
糸に貫かれた移動式多脚砲台のような影は体勢を崩して落ちていく。シフォンはそのスキに影の落下軌道から外れる。
シフォンが次の一撃に備えたその時……
<おい、ボン子。聞こえるかの?>
ようやく構造体解析を終えたロムの念波が聞こえるのだった……




