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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第2章 三人協力、パワー全開!
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第21話 『黄昏時の告解室』、再び!

 廃工場の喧嘩騒けんかさわぎがあった次の日。


 花田家はなだけの朝は相変わらず騒々《そうぞう》しく、朝ごはんの取り合いを繰り広げていた。つうか俺が弱っちいのって、まともに飯が食えないからなんじゃ……


「おう、今朝も少食だな、とおる!」

「がーーーっ!それはお前が俺の飯を取るからじゃ!!」


 業兄貴ごうあにきが素早いはしさばきで俺が食べようとしていた醤油しょうゆをかけた目玉焼きをうばってしまう。ぐぬぬぬ!


「な、なあ、兄貴……

 あの後ってどうなったんだ?」

「あー、もう大変だったぜ!自分の顔をなぐったかと思うと、次は俺たちが殴られてよー。何か連帯責任きょうどうたいげんそう!とかさけんでた。大人しく舞金中まいがねちゅうのアタマでもやってりゃ良かったのに変に体育会ぐんたいに目覚めるからよ〜」

「え、誰が?何の話??」

「あ、鈴偶りんぐう(兄)の話だろ?」

「い、いや鈴偶(兄)クンのことは別に知りたく……。えっ!?だから兄貴の顔、そんなにれてんの!?」


 不良中学生との喧嘩に参加したわけでもないのに、パンパンに腫れた顔を押さえながら業が帰宅したのは深夜だった。物陰ものかげから業の姿を見たが、とても話掛けられる雰囲気では無かったので、自分の部屋にもってクソみたいな1日を反芻リフレインし、気付けば寝ていた。そして朝だ。


「鈴偶(兄)クンはどうでも……、いや今度、貞男さだおと二人でお礼に行きたいと……」

「あー、お前ら二人もぶん殴られとけって」


 顔の腫れが引かない業兄貴はカラカラと笑いながら答えてくれた。俺の飯は奪うけど根は明るい良いヤツなのだ。


「お前が知りたいのは不良中学生4人のことだろ?」

「あ?ああ……」

「結論から云うと心配するな、だ」

「は?でもお礼参れいまいりとかあんだろ?」

「それはない!」


 業はキッパリと断言する。


「何故ならあの4人は『監視対象かんしたいしょう』になったからだ」

「監視対象?」

「ああ。俺たち舞金中の鈴偶グループは勿論もちろんのこと、ありとあらゆる人脈じんみゃくネットワークを使って、ずっと監視することにした!だからお礼参りはおろか、今後一切の悪さはできないぜ!」

「はーー!!??」

「それも無期限な。中学を出て、高校行って、成人してもずーっとだ。それを聞いた4人は鈴偶(兄)に土下座して謝ってたけど、本気で怒った鈴偶(兄)が許すわけないわな」


 それを聞いた俺はゆるんでいた……がキュッと引き締まって背筋が伸びた!こ、怖い。鈴偶のお兄様って怖すぎる。早く謝って殴られとこ……


「あとな、『お前たちにスマない』ってさ」

「え?」

「『同じ中学のヤツが小学生に迷惑かけてスマない』って。

 おい透、この意味を良く考えろよ?だから鈴偶(兄)をしたう男たちが集まるんだぜ」


 (業に邪魔されて)ろくに朝飯が食べられなかった俺は遅刻ちこくする前に家を飛び出すのだった。


――舞金小の登校途中


 遠くを見ると身体を引きずるように歩く男子がいる。貞男だ。


「あ?だりー朝だな?」

「まったくだぜ。身体じゅう痛ぇーしよ」

「でもお互い無事でヨカッタな!」

「ああ!」


 俺と貞男はお互いのひじをぶつけ合い、大笑いした。俺たちはこれで良い。悩んだり、塞いだりするより、次だ。次!


 今朝、業兄貴から聞いた話を貞男に伝えた。悪事に加担かたんした手前、流石さすが手放てばなしで喜ぶことはできずバツが悪そうな表情をしていたが、一緒に鈴偶(兄)に殴られておけば大丈夫!と伝えると苦笑いしていた。


「鈴偶(兄)クンに殴られたら吹っ飛ぶぜ」

「そんなの毎日、慣れっこだ!」

鈴偶りんぐう智優ちゆにも謝らなきゃな……」

「ああ、任せておけ!アイツとはライバルだから謝り勝負も負けないぜ!」

「……謝ってからっちゃうのか!?」

「……」

「都合悪いとダンマリかよ!」


 あんな出来事があった後なのに貞男と普通に会話できた。それだけが俺は嬉しかった。



 息を止めて6-2教室に入り、あたりを見回す。俺が探しているヤツが見当たらない。嫌な予感がする……。こんな時は横からパンチか!?

 素早く左右を確認するがライバルの姿は見当たらない。一体どこに??


「……てつざんこう!!!!!」


 どーーーーん!


 背中せなか衝撃しょうげきを感じた瞬間しゅんかん、前方に吹っ飛んで入口付近の机を倒しながら転がっていた……。


「ってぇ!!!マジで痛ぇ!!!」

「おはよ、透☆

 今朝も楽しそうだね!」

「吹っ飛ばされて楽しいわけねーだろ!!」


 机と椅子と一緒に床に転がった俺が見上げると、そこには俺のライバル、鈴偶智優の姿が!


「お前、マジで本気攻撃すんなよ〜」

「私はいつも手加減してるって。強いて云うなら透が弱っち過ぎてダメダメってこと」

「あ?誰が弱いって??」


 朝から大騒動おおそうどうで周りのクラスの奴らまで騒ぎ始めた……


「もー、智優ちゃん。朝から弱い者イジメはダメだって!」

「透が弱いのが悪い!私は悪くない!」

「今日は透がスカートめくりする前に攻撃したから智優ちゃんが悪い!メっだよ!!」

「ひーん」

「大丈夫、透くん?」

「あ、ああ。大丈夫……じゃない!」


 鈴偶がカマして神埼かんざきがフォローする。普段と同じ風景。同じだったはずなのに


 ……トゥンク……


 いかん、心臓病こいのやまい兆候ちょうこうかぁ?あー、早死はやじにはヤだな。そんなことを思いながら鈴偶の横顔をチラリと見ると……、あれ?顔の腫れもキズも無い??


「あのよ、鈴偶……」

「どした、貞男?」

「き、昨日のこと。謝りたくて……」

「大したことないよ。男が細かいこと気にするな!」

「細かくねーよ。ちゃんと謝りたくてさ。放課後、教室に残ってくれねーか?」

「悪ガキのくせに律儀りちぎだな。でもいーよ!その代わり早くしてね!」


 貞男は俺の方をチラリと見てウィンクしていた。


 授業が始まっても何も頭に入ってこない。元々、入ってこない勉強がいつも以上に頭をすり抜けていく。そういえば野伊間のいま安蘭あらんは休みのようだ。昨日の火事のけむりでも吸ったのだろうか?


◇◇◇


 1日中、緊張きんちょうしたまま放課後を迎えた。貞男を捕まえて屋上に続く階段でこの後の作戦を聞くと、答えは聞くまでも無かった。


「え?俺は行かねーから透、謝っておいてよ」

「お、おま、お前!?」

「透にせめてもの罪滅ぼしだぜ!健闘を祈る!」

「はあーーー??」


 足早に消える貞男の後ろ姿を呆然ぼうぜんながめる俺。一体、どうしたら……。でも鈴偶を待たせるわけにはいかないし。


 重い足取りで6-2教室に戻り扉を開くと……

 そこには見たこともない部屋が広がっていた!


(何だ、こりゃ?入る教室を間違えたか?)


 そう思って扉を閉めようとしたが、意に反して身体は部屋の中に進んでいく。


(あ、あれ?身体がおかしいぞ……)


「……ようこそ。お待ちしていました」


 教室の真ん中を仕切る衝立ついたての向こうからささやくような声が聞こえてくる。衝立には奇妙きみょう幾何学模様きかがくもようが描かれており、真ん中に小さな窓が付いている。先ほどの声はその窓から聞こえてくるようだ。


 昨日、顔を殴られた時のように世界がグラグラと揺れる。覚束おぼつかない足取りで部屋の真ん中に置かれた粗末そまつな木製の椅子いすまで歩み、座ってしまう。


 床から振動が伝わってくる。それは地震が起きた時の揺れとは違う。まるで自動車に乗って走っているかのような揺れだった。

 そうかと思うとカーブを曲がっている時のように身体がゆっくりと右側や左側にかたむく。ここは一体、どこなんだ?


 そしてノイズがかぶったラジオのような音で、ピアノと女の歌声が聴こえてきた。


(やたらと伸びる声だ。この歌はオペラってやつなのか?)


 気付くと頭痛が激しくなり、意識が集中できなくなっていた。


「さあ、告解こくかいを始めたまえ」


 衝立の壁に白黒映画のような映像が映る。ああ、あれは俺じゃないか……


――花田家が勢ぞろいしている


「俺は5人兄弟の末っ子として生まれた。上の兄貴たちはたくましく育ったが、俺は弱々しくて何をやってもパッとしなかった。夢中で兄貴たちに追いつこうとしていたが、走っても走っても追いつけないんだ。そんな中、俺のことを一番可愛がってくれたのが年の近い業兄貴だった」


――幼稚園児が走り回るなか、日陰ひかげにいる俺


「幼稚園に入っても相変わらず身体が弱いまま。周りの子たちが走り回る中、俺はボーッと突っ立って眺めていた。そんなヤツが気になったのだろう。気付くと俺は囲まれて小突かれていた。普段、助けてくれる業兄貴はいない。何もできなくて悔しくて悔しくて。囲まれた真ん中で泣いていると、そこに現れたのが……」


――ツンツンの髪の『男の子』が割って入る!


「俺のことを助けてくれたんだよ。イジメられて泣きじゃくってる俺にソイツは云うんだ。『泣いても強くなれないよ。弱いならせめて大きな声出しな!』ってね」


――俺の手を繋いで遊び回る乱暴な『男の子』


「弱くてロクに動けないのにソイツは俺の手を握って振り回すんだよ。正直、困ったぜ。でも俺がイジメられそうになるたびに助けてくれるんだ。いつも、何回も……」


――泥だらけの姿で俺に泥団子をぶつけて微笑む『男の子』


(ソイツの名前は鈴偶智優……。俺が憧れるヒーローさ……)


 衝立の向こうから声が聞こえる。


「あなたは相手を『女の子』として好きになったのではなく、『男の子』として好きになったのです。その方の性別は承知しているのに。


 でも目を逸らすのはもう終わりです。

 今、この告解室で自らの好意の本質を知ったのだから!!」


 気が付くと白黒映画は終わり、暗幕が下りていた。



――はあ、はあ、はあ。息が苦しい……

  胸が焼けるようだ……


 教室を出ると遠くから貞男の声が聞こえる。


「ひっ!!ば、化け物!!」


 俺は窓を破って跳躍ちょうやくし、小学校から遠く離れて行った。


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