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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第2章 三人協力、パワー全開!
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第16話 女装した女子が可愛いかった件

 花田家はなだけは朝メシの争奪戦そうだつせんから1日が始まる。とおるは5人兄弟の末っ子とはいえ朝メシを優遇ゆうぐうされることも無く、非情ひじょうな兄たちにおかずをうばわれないように必死の攻防こうぼうり広げる!


 舞金中まいがねちゅうに通う4男のごう肘鉄ひじてつを食らいながらもメシを食らう俺。つうか何でウチは落ち着いてメシが食えないんだ!?


「今朝はえるな、透!きたえた甲斐かいがあったというものだ!兄は嬉しいぞ!」

「うぅ、メシ食ってる最中にワケもなく攻撃すんなよ業!」

「業兄様だろうが、たわけ!!もし今が戦国時代だったら落ち着いてメシを食ってる暇なんぞ、無いぞ!!」

「今は戦国時代じゃねーし、もうそんな時代こねーよ!」


 俺は口いっぱいに頬張ほおばったご飯をき散らしながら業へ抗議こうぎするが、愚兄ぐけいはどこ吹く風。俺の云うことなぞ何一つ聞いていない様子でメザシを丸呑まるのみしていた。


「もう、あんた達!朝から遊んでないで早く学校行きな!!」


 台所から母ちゃんの怒鳴り声が響くと調子に乗っていた業は攻撃を止めて猫まんまを口に流し込むのに専念する。猫まんまは飲み物かよ、兄ちゃん……


「それはそうと透」

「あっ!?」

「あっ!?じゃねーだろ。お前の反応を見るとついじゃれたくなるな〜」

「だから何だよ、業!?」


 更なる攻撃に警戒して身を固くするが、本当に聞きたいことがあったようで業は改まって話始めた。


「ふん、まあいい。お前に聞きたいことがあるから知ってることがあったら全て話せ。いいな?」


(まるで脅し文句のような始まり。俺じゃなくても警戒するよ……)


「最近、小学生を使って『悪さ』するバカな中学生がいるってうわさを聞いたんだけどお前、何か知ってるか?」


(ん?どっかで聞いた話だな……

 そういえば昨日、秘密基地で)


「ああ、何かいるらしいな」

「お前の知り合いで何かされたやつ、いるか?」

「い、いや聞いてねぇ」

「そうか。被害が無ければ良いんだけどな。でもその中学生絡みで何かあったらすぐに俺に云えよ!」

「分かった。分かったけどよ。業って小学生を助ける正義の味方キャラだったっけ?」

「あー、俺じゃねぇ。鈴偶りんぐうが怒り心頭しんとうなんだよ。は〜、せっかく部活に夢中で静かだったのに面倒くせぇことするバカがいるから……」


 業はくわえた楊枝ようじをピンと立てると大袈裟おおげさにお手上げポーズを取っていた。


(鈴偶?ああ、鈴偶兄の方か……)


 何かが起きているのか??そんなことを考えながら登校すると別の何かが起きていた!!



――舞金小、ホームルーム前の6−2教室


 さて日課のスカートめくりをやったら、今日こそ鈴偶の攻撃をかわしてやるぞ!そう息巻いきまいて教室に入ると……


 クラスに知らない女子が座っていた。ツンツンした前髪とスルッと伸びた後ろ髪。

 薄いピンク色のワンピース、胸元に紐状ひもじょうのリボンが結ばれていて可愛らしいが、良く見ると身体のシルエットに凹凸は少なく、むき出しの肩は綺麗な小麦色に焼けていて健康的過ぎてガーリーなワンピには不釣り合い。

 顔を見るとうるんで光る唇に筋の通った鼻、そして落ち着かない目線が泳ぎまくり耳まで真っ赤な小顔……


 ってよく見ると俺様のライバル、鈴偶りんぐう智優ちゆじゃねーか!!


「ね、やっぱりウィッグ付けたら髪型が可愛くなったね!!」

「いやー、智優ちゃん落ち着かないから付けるの大変だったよ〜」

「可愛くなって新鮮だよ、智優ちゃん!」

「……す、すそが短すぎて足がスースーする。スパッツきたい……」

「スパッツ履くならもっと短くて良いかも。あは☆」

「!!!」


 鈴偶(?)の席を囲むように女子が集まり、キャーキャー騒ぎみくちゃにされる中、かたわらにいた神埼かんざき野伊間のいま自慢気じまんげに鈴偶のコーデを説明していた。


(な、何が起きているんだ?いつものように鈴偶と喧嘩けんかする予定だったのに……

 え?え?アイツ、女子に化けて……)


「パニックは分かるが、まあ座れよ、透」


 教室の扉の前で呆然ぼうぜんと立ち尽くす俺に貞男さだおが肩を叩きながら話し掛けてくる。


「な、何が起きているんだ、貞男!?」

「何かの罰ゲームらしい……

 女子って怖いよな」

「あ、ああ。あああ。あ??」


 いつもは変なロゴのTシャツに短パン、髪型もツンツンとがった短髪、どこをどう見ても男子そのものにしか見えない自称『女男』の鈴偶。

 今、目の前には可憐な姿の、どこをどう見ても女子にしか見えない『女の子』がいた……


「透、こないだ秘密基地で話したじゃん?鈴偶はやっぱり『女の子』だったろ??」

「あ?ああ??あー??」


 俺はアホなカラスみたいにあーあーしか云えなかった……


 女装した鈴偶を見て感じた違和感の正体をおおい隠すように、俺の胸の中に広がったもやは濃さを増していくのだった。


◇◇◇


――朝、ホームルームの時間


 相変わらずえない担任、二宮先生の横には同じ6年生とは思えないほど小さい背丈せたけの女子がソワソワして立っている。


「……というわけで翔北市内しょうほくしない学区間転入がっくかんてんにゅうして舞金小のお友達になりました『安蘭あらん未流みる』さんです。皆さん、仲良くするように!」


 未流は明るくニコニコ笑いながらソワソワし、身体が微動びどうするたびにボリュームのあるツインテールの髪が揺れている。くりくりした大きな瞳が爛々《らんらん》と輝き、教室の中の一点に向けられている。


 彼女が凝視ぎょうししている先は詩芙音なのか?一方、詩芙音はいつもの不健康そうな目つきが死んだ魚のように変わり、完全な屍人しびとのようになっていた。


「未来の『未』に、『流れる』と書いて『未流』と云います。卒業まで短い時間ではありますが同じクラスの皆と仲良く過ごしたいです!」


 ……チッ……


 詩芙音の大きな舌打ちが鳴るが、未流を歓迎する拍手はくしゅで打ち消されてしまう。


「でもでも、良かったー!!新しい環境、とっても心配だったけど親戚しんせきの詩芙音姉さまと同じ学校で!!詩芙音姉さま、宜しくねーー☆」


 クラスの一同が詩芙音の方を確認するとニコニコ笑いながら屍人人形しびとにんぎょうのように手を振っている。


(また楽しそうな子が増えて嬉しいなっ!)


 そう思い、智優が横の席の詩芙音を見ると、詩芙音のひとみは限界まで見開かれ、宇宙を思わせる深いやみが広がり、未流を飲み込んで無かったことにしようとしているように感じた。


(ひっ!!詩芙音ちゃんの顔が怖いよ、栞ちゃん……)

(友達の顔が怖いなんて云っちゃダメだよ、智優ちゃん。めっ!)

(あうあう……)


 幼子おさなごさとすように栞に怒られる智優だった。


――お昼休みの教室


 詩芙音にベッタリ張り付いて離れない未流がいる。詩芙音は相変わらず屍人しびとのように無表情で未流がゆするたびにユラユラ揺れている。


「詩芙音姉さま!未流、一緒の学校に通えて嬉しいです!もう一生離れませんからネ☆」

「学校でベタベタされると恥ずかしいから離れてネ」

「もう離れないですー☆」


 詩芙音には未流の波長はちょうが全く合わないのだろう。いつもはクールで破天荒はてんこうな詩芙音が完全に意気消沈いきしょうちんして表情が死んでいる。


「詩芙音ちゃん、親戚の子と一緒のクラスになれて良かったネ」

「いや」

「これからは4人で登下校だネ」

「いや……」

「お友だち増えたから今度の女子会は4人でやろっか?」

「いやーーーー!」


 絶叫ぜっきょうする詩芙音の横で腕にからみつきニコニコ笑う未流がいたのだった。


「ところでお二人は詩芙音姉さまとはどのような関係で??」

「私たち詩芙音ちゃんの親友だよ!」

「はあ……。お名前は?」

「私は神埼かんざきしおり、で彼女は鈴偶りんぐう智優ちゆちゃん!」

「!!!

 そう、あなたが鈴偶智優……」


 それまでニコニコ笑っていた未流の表情がみるみると険しく変わる。まるで親のかたきを見るかのような視線を智優へ向けて叫ぶ未流!


 みるみる、見る、未流!!


「お前が私の詩芙音姉さまの貞操ていそううばった鈴偶智優か!?私は許さない!お前を許さないぞ!」


 突然の大声に驚く智優と栞。詩芙音は相変わらず屍人のよう……


「何よ、その格好かっこう!今どきピンクのワンピで着飾きかざっても時代遅れなんだからネ!くやしかったら私みたいに流行りのコーデで決めてみなさ……、むぐぅっ!……」


 それまで屍人のようだった詩芙音が息を吹き返したように素早く手を伸ばし、未流のあごつかみギリギリとめ上げる!


「むぐ、むぐ、むぐ〜

(痛い!痛いわ!!姉さま!!)」


「智優ちゃんが着ているのは私の洋服よ……

 で、誰が時代遅れだって??」


 少し首をかしげて未流の顔をのぞき込む詩芙音。


「むぐーーーー!!

(ひーん、ゴベンなさい、姉さま〜)」


 にぎやかで楽しい友だちが増え、楽しい予感(?)が止まない智優と栞だった。


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