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演算魔法少女☆ロジカル・シフォン  作者: いくま
第2章 三人協力、パワー全開!
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第15話 悪ガキたちの楽園、秘密基地

――女子会と同じ日の放課後

  悪ガキグループの秘密基地


「くっそ!『女男』のやつ、本気でなぐりやがって!!おーいてぇ……」


 舞金小まいがねしょうの悪ガキグループをまとめるリーダー、6年生の花田はなだとおる


 1時間目が始まる前の時間。クラスの女子に日課のスカートめくりをかました瞬間、鈴偶りんぐう智優ちゆにグーパンされ、軽く宙に浮くほど吹っ飛んで制裁せいさいされた。軽そうな体型からは考えられないほどの重たい攻撃を食らい、れた腕。秘密基地の定位置に座り腕を押さえてひとちている。



 舞金小から山に入って少し進んだところにある採石場さいせきじょう、その近くにある戦前に建てられた民家。今となっては誰も住むことがない廃墟はいきょを利用した秘密基地ひみつきちは舞金小の悪ガキグループが長い時間を掛けて作り上げた夢の牙城がじょうだ。


 透たち悪ガキグループが山の中で探検ごっこをしている時、雨風あめかぜをしのぐのに十分な屋根と壁を備えた廃墟を見つけたところから秘密基地づくりの壮大そうだいな計画は始まった。


 人が住んでいない廃墟とはいえ誰のモノとも分からない1戸の住宅に不法侵入する。


 恐る恐る歩を進め、室内を確認すると其処そこは想像を絶する痛み具合とホコリ、砂などの山!まずは自分たちの根城ねじろで深呼吸ができることを目指してホコリをかぶった部屋を徹底的てっていてきに掃除していった。それこそ家や学校の掃除では見せたことが無いくらいほど熱心に!


 次に建付たてつけが悪くなった引き戸が開くようにみぞ修繕しゅうぜんし、割れた窓は大きめのガラスを集めビニールテープで貼って繋ぎつつ、足りないところを下敷きで補い、元の形に近づける。

 床の抜けた廊下ろうかみ外して落ちないように少年たちが乗っても壊れない程度の強度の木箱を置き、その上に厚めのベニヤ板を置いて歩ける程度の廊下に仕上げる。


 ハッキリ云って、それだけの努力と工夫ができるのならば何か偉業いぎょうを成しげられるのでは無いかと思うほどの情熱じょうねつを廃墟のリノベに注いでいる。意味の無いことに情熱を注ぐことができるのは、少年ゆえのパワーなのだ!


 リノベを始めてから半年経ち、ようやく人が寝泊ねとまりできるくらい快適かいてきな空間に変わり、秘密基地計画は完遂かんすいしたのだった。



「おー、今日は早いな透〜」

「おうよ!」

「ありゃ?腕を押さえてどったの??」

「ちゃーっす、ちゃーっす!」

「腹……、減った……」


 悪ガキグループの参謀、同じ6年生の東海林しょうじ貞男さだおを先頭に『鈍足チビ』こと5年生の金谷かなやいつき、いつも空腹の『少食デブ』こと5年生の座間ざま波阿斗はあとたちがガヤガヤと秘密基地へ入ってきた。


「まーた、鈴偶にやられたんだろー?勝てないんだからいい加減、女子にちょっかい出すの止めれば良いのによ」

「負けたままじゃ男がすたるだろうが!」

「でも勝てねーじゃん。廃れっぱなしだよ透」

「腹減って……、死ぬ……」


 大きなことを云っても全く智優に勝てない透を皆でゲラゲラと笑い飛ばした。


 ボロいテーブルの周りに置いた各自専用のボロ椅子いすに腰を下ろすとお互い持ち寄ったお菓子を広げたり、ゲーム機を出したり、マンガを交換したり思い思いにくつろぎ始めるのだった。


 秘密基地計画の時は同じ目標に向かって団結した悪ガキたちも、成果が上がり基地の形が整った後は目標が無くなり宙ぶらりんの様子だ。


「だってさ、透。鈴偶の最初の一撃、かわせないじゃん。食らって立てなかったら、勝てっこないだろ」


 手を大きく振ってかたくなな姿勢の透をさとそうとする貞男。


「だって速いんだぜ、あいつのパンチ」

「ほら、鈴偶って兄貴いるじゃん。すげー強くて有名だった人。あの人と喧嘩けんかしながらきたえてるんだから勝てないだろう〜」

「俺だって強ぇえ兄貴と喧嘩しながら鍛えてるぜ!」

「いやいや、透は兄貴に一方的にボコられてるだけじゃん。兄貴と対等に戦う鈴偶とは別だろ」


 顔を真っ赤にして反論はんろんする透を笑い飛ばす貞男。二人は小学校に入学した時からの親友だ。


――今から5年前、1年生の教室


「てめー、いちいち文句つけてムカつくんだよ!!」

「お前がバカみたいに大声あげてウルセーからだよ!!」

「バカにバカって云ったらダメなんだぞ!」

「な、なんで!?」


 しゃに構えた物言ものいいで透にケチをつける貞男が気に食わず、休み時間にみ合いの喧嘩を始めた二人。


「ふざけんな、このやろ!」

「やったな!クソ!」


 取っ組み合いの喧嘩とはいえ身体の小さい1年生同士のこと。ポカポカ殴り合ったり、バリバリ引っいたり、ドカドカったり、はたから見れば可愛らしい戦いだった。


 だが周りクラスメイトたちの悲鳴ひめい怒声どせい異常事態いじょうじたいに気付いた教師に止められ、放課後は母親を呼ばれて説教タイム。悪態あくたいついたら家に帰って更に説教タイム継続けいぞく!となった……


 家に帰っても怒られまくった透は我慢の限界点を突破し、半べそのまま説教タイムの休憩のスキに家を飛び出し、遠くの大きな公園まで逃げたのだった。


「くそ!悪いのは俺だけじゃないのに……」


 今晩は家に帰らない!そのつもりでドーム状の滑り台の中に入るとそこには……


「なんだよ、透。泣いてるのか?」

「へっ!お前こそ目が真っ赤だぞ、貞男」


 同じ男の子同士、状況も行動も同じ。貞男も説教に耐えきれず家から逃げ出し、公園に辿たどり着いたようだった。


「だいたい、お前が突っかかるから喧嘩になったんだろうが?」

「……」

「何がしたかったんだよ!?」

「……」

「何とか云えよ、おら!」


 二人並んで体育座り。透はグチグチ云いながらひじで貞男を押す。


「一人で粋がってクラスで浮いてるお前と友達になりたかったんだよ……」

「あっ!?

 あ?……

 あぁ……

 あ、あ、ありがとう……」


 意表いひょうをつく貞男の答えにドギマギしながら礼を云う透だった。そして長い夜を夢中で語り明かす二人の男の子たち。


 次の日、まだ朝日が昇る前の暗い時間にお互いの両親に見つかり頭をはたかれながら家に連れ戻された。公園を離れる時には二人はすっかり親友になっていたのだった。



――秘密基地、だらだら過ごす4人の悪ガキたち


「くそっ!どうやったら勝てるんだ??」

「お前って常に鈴偶と戦ってるよな」

「そんなことねーよ!!」

「勝つ気、あんのか?」

「あるに決まってんだろ、今日だってこんなにやられてよ!」


 腕をまくり薄いあざを見せる透。やられた怒りは表現するものの、透の言動や行動からは憎しみのようなの感情は感じられない。


「ははーん、お前……

 もしかして鈴偶とじゃれたくてちょっかい出してるんじゃないのか〜??」

「や、やめろよ!相手は『女男』だぞ!見た目、男子だぞ!!」

「いやいや、お前。どんな格好だって鈴偶は女子じゃないか??」


 粋がって怒声を上げる時とは違う色で真っ赤になった透をニヤニヤとながめる貞男。広げたお菓子を凄い勢いで食べる波阿斗を羽交い締めにする樹。


 悪ガキグループの日常風景だったが……。


「なあなあ、ちょっと聞いてくれよ。みんな……」


 樹から急に深刻なトーンの言葉が出て黙る三人。


「舞金中の不良グループの動きが活発なの知ってるか?」

「いや知らねーな。あそこは鈴偶の兄ちゃんがシメてるから不良グループなんて存在しないんじゃ?……」

「鈴偶の兄ちゃんが部活に夢中になってるすき他所よその学区の小学校から来た連中が裏で幅を利かせ始めたらしいぜ」

「で、俺たちに何か関係あるのか?」

「どうも、小学生を使って『悪さ』をさせてるらしい……」

「あ??何だか胸くそ悪い話だな、クソがっ!」


 怪気炎かいきえんを上げる透の横で貞男の顔色が悪くなっていることに誰も気付かなかった……


◇◇◇


――女子会の後、週明けの月曜日の朝

  鈴偶家、智優の部屋


 私はいつもより早い時間に目を覚ましてベッドから飛び上がる。時計を確認すると栞ちゃんと待ち合わせをする30分前だ。


(ふー、危ない危ない。早く着替えて学校に行っちゃおう!)


 女子会の夜、トランプで負けた罰ゲームで女装して学校に行くことになった私は戦々恐々《せんせんきょうきょう》として土日を過ごしていた。


(まずは二人があきらめるまで逃げ回ろう。ほとぼりが冷めた頃に仲直りすれば大丈夫!大丈夫……、だよね?)


 急いでキッチンに行き、冷凍トーストを焼くセットする。とにかく素早く洗顔と歯磨きとブラシをしているとダイニングから声が聞こえる。


「……トースト焦げちゃうよ〜」

「少しげたくらいがハチミツに合うんだよー。って、いつも云ってるじゃーん」


(ん?今の誰??)


 鏡に写る自分の顔を眺めながら違和感いわかんに首をかしげる。駆兄かけるにぃは寝坊ねぼすけ、お母さんは朝から清掃のパート、クソ親父は出張中、じゃあさっきの声は……



 違和感の正体に気付いて振り返ると、そこには深い闇の底を思わせる瞳で笑みを浮かべる少女が扉の端からこちらをのぞいている!


(ひっ!!!!!)


 声にならない悲鳴を上げ、ペタリと尻もちをつく私。驚きのあまり目の前が真っ白になり動けない……


「智優ちゃん、そんなに急いでどうしたのかな?

 かな〜〜??」


 音もなくスーッと近づいてきてギュッと肩をつかまれる。私の顔に鼻息が掛かるほど顔を近づけて微笑ほほえむ美少女……


「約束忘れちゃった?そんなことないよね??栞ちゃんと二人でカワイイお洋服、沢山持ってきたからネ。着替え、手伝ってあげるよ!あは☆」


 私は目に一杯の涙をめながら首を横にプルプル振ることしかできなかった……


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