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第48話 星空が映っている天井

「私の残り湯はどうでした?」

「俺の黒歴史を掘り返すな」

「お風呂を黒くしたのですか?」

「タコみたいに言うな」

「凪くんの……えっち」

「だからタコのどこがエロいんだよ!?」


 俺の部屋のシングルベッドで、真白と二人して天井を見つめながらこんなやり取りをしていた。

 そこには星空はなく、ただの丸い蛍光灯が貼り付けられている。


 それなのに、凄く落ち着いた安らかな気分になれた。

 真白と同じ景色が見えていると思うと、なぜか嬉しさが込み上げてくる。


 俺と真白が添い寝していたのを、お母さんは知っている。

 だから、割と自然な感じでお父さんもとっくに知っていた。


 親公認の恋人というのは、少し胸をくすぐるものがある。

 小っ恥ずかしいような、温かいような。


 でも、タコで性癖を誤解されるのだけは勘弁してほしい。


「今日は凪くんらしくないですね」

「なにが?」

「いつもみたいに襲ってこないなんて……」

「俺のアイデンティティに野性を入れるな! 俺の事を狼みたいに喩えるな! 真白を襲うことがいつものようになされている感じで言うな!」

「ふふっ」


 軽く口を手で覆って、笑い声を漏らす真白。

 彼女のほうに向くと、真白も俺のほうに頭の向きを変えた。


 見つめ合っては、また二人してクスクスと笑う。

 こんなふうに笑えたのはほんとに久しぶりだ。


 二年半前の自分は果たしてこんな日が再び訪れることを予想出来ていたのだろうか。

 部屋にある渚紗へのマーガレットのことを、真白に知られて受け入れられただけで、こんなにも心が軽くなるなんて。


『なーくんってハリネズミについてどう思う?』

『触ったら痛そう』

『そういうこと聞いてるわけじゃないよ! げっ歯類かどうかって聞いてるの!』

『俺が知ってるわけないだろう』

『今ほど、なーくんよりわたしのほうが優れていると感じる瞬間はないよ』

『おい、(⤴︎)ちゃん()、数学の点数で勝負しろ!』

『また人の名前で遊ばないでよ!!』

『『ふふっ』』


 そうやって、渚紗との記憶が(よみがえ)って、今と重なる。

 それほど、今の瞬間は輝いてて眩しい。


 天井に星空こそないけれど、隣にはちゃんと大切な真白がいる。

 俺にとってすごくすごく大切な人がいる。


「それで、しないのですか……」

「恥ずかしいなら自分から誘わなくていいよ?」

「だって……」

「自分の部屋だと俺もちょっと恥ずかしいから、今日はもう寝よう?」

「はい……」


 少し残念そうにしている頬を染めた真白だが、俺にはこの部屋でしてはならない理由がある。

 

「え?」

「代わりにこうやって手握っててもいい?」

「……はい」


 真白は水気を含んだ瞳を(まばた)かせて、嬉しそうにそれをふにゃりとさせる。

 その様子から、彼女の幸せが俺に伝わってきて、心を満たしてくれる。


「ところでさ」

「なにぃ?」

「結局吸盤のどこがエロいんだ?」

「私に説明させる凪くんは悪魔ですか!?」

「悪魔に悪魔って言われたら衝撃が半端ないね……」

「どれくらい衝撃が大きいんですか♡」


 俺の頬に手を添えて、悪魔のようなにんまりとした笑顔を(にじ)ませる真白は、すごく可愛く感じられた。

 だから、俺も同じように愛しい真白の頬に手を添えておく。


 目を閉じて頭を上げる真白のそれが、キス待ち顔だと教えられたから、ゆっくり唇を彼女のそれに合わせる。

 すると、フローラルとシフォンケーキの香りが心を吹き抜けるような感覚になった。


 真白とのキスは花の味がした。


「彼シャツ、初めてですが、とても嬉しいです」

「俺の安物のシャツで感動して頂けてこっちも嬉しいよ」

「凪くんは安物じゃありませんよ?」

「主語を間違えてるぞ!!」


 またしても、真白と二人してクスクスと笑ってしまう。

 確信犯的な彼女の言葉は、いつも俺を元気にする。


 だからこそ、俺は同じように真白に何かを与えられているのかと思ってしまう。

 彼女の現実をハッピーエンドにすることが俺の使命のように思えてくるほど、真白は女神のように思える。


 彼女はそれほど神聖に感じられた。

 

「これからはずっと凪くんのシャツだけ着て生活しようかな♡」

「俺が両親にまで性癖を誤解されちゃうからやめろ!!」


 前言撤回……真白はやはり悪魔だ……。


「もう十分に(こじ)れてるのに?」

「性格を拗らせてるみたいな言い方で言うな!!」

「凪くんはとても優しいですよ?」

「そりゃどうも……」


 他愛もないことを話していると、眠気がやってきた。

 真白と添い寝してから、ほんとによく眠れる。彼女がそばにいるだけで、安心してしまう。


「真白、ありがとうね」


 だから、感謝の言葉を忘れないようにしている。

 それが俺に出来る恩返しだ。


「こちらこそありがとう、性癖を拗らせた凪くん」

「だから、吸盤のどこがエロいのか教えてくれ!!」

「凪くんはもう知ってますよ♡」

「え?」


 答えになっていない真白の答えは、俺に疑問を突きつけた。

 俺がいつ吸盤がエロい理由を知ってしまったのだろう。


 そんなことを考えつつ、ついに意識を手放して、俺は真白と一緒に眠りについた。


次回、第2章新編開幕!! その名も―――『怒涛の生徒会長選挙』編!!


期待を込めて、『☆』を送ってくれたら嬉しいです!!

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