覚えているよ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
勢い任せの小説です。
リベンジしたいです。
今度はもっと場面と心理を深堀しながら。
好きな方に久しぶりに会いに行きました。その方は大勢の人に囲まれて、笑顔を振り撒いていました。現代で言うところの『サイン下さい!!』という言葉に快く応じて居ました。彼は私に気が付くと、取り巻き達に軽い挨拶をして、此方に駆け寄って来てくれました。
前に此方に居た時は、もっと冷淡な人かと思っていました。でもそれは勘違い。極小な視点でしか見ていない私の浅ましさ。
涙を堪えながら、どうにか言葉を紡ぎます。もしかしたら泣いているのをバレているかも知れません。
「……私の事なんか……もうとっくの昔に忘れたかと思いましたよ」
「忘れてなんか無いよ!! ちゃんと覚えてるよ。君が長い夜を超えた事も、祝福の言葉を掛けたのも、ちゃんと覚えてるよ」
彼は自分の胸元に顔を押し付けると、さり気なく腰周りに手を回しました。顔は見えません。けども、きっと優しい顔をなさって居るのでしょう。
私は溢れ出した涙で頬を濡らしながら、否定的な言葉を紡いで行きます。
「もう……もう……四年ですよ……? 数ヶ月合わなかっただけで、人の顔なんか忘れてしまうのに……。それよりもっと多くの人を相手にしている貴方は……」
「覚えてるよ」
ぺったりと頬に触れた指先は、私より体温が低くて、涼しかった。秋風が頬を撫で、荒ぶった気持ちを抑えてくれます。
あぁ、あの時と同じ。前後不覚になった私を二人がかりで留めてくれたあの時と同じ。この人はちゃんと覚えている。
「帰りたくない……。でも他に寄るところがあるので、これにて」
「そう」
彼はきっと、此処でぼんやりと社を眺めて居た時の事を仰って居るのでしょう。時間だけは無限にあったあの日。でも今は違う。何時までも此処に居たら、きっと本当に帰れなくなってしまう。
「じゃあ、また会おうね。今日は言いたいこと、特にないから」
そう言うと、彼は人混みに紛れて、また愛想を振り撒いておいででした。忙しい中、有難う御座います。
私の好きな方。この社の主祭神。気さくで明るくて、でも冷徹。また会いに来ます。
久しぶりに会いに行ったんですよ。
昔はもっと、白無垢の初恋の桜華みたいな性格かと思ってました。
全然違いました。愛想が良くて、爽やかだった。
でも的確な判断を下せる程に冷徹だった。
昔は冷徹な部分しか見てませんでした。
また会いたい。