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二章~(2)鬼の棲家~
「そんな・・・」
里実は大淀という男に性的虐待を受けているというのだ。大淀は里実の伯母、関谷みどりに客として近づき、みどりの店に援助までしていた。が、大淀はみどりではなく、店を手伝っていた里実に近づくのが目的だった。
「最初はちょっと体触られたりする程度だったけど、だんだんエスカレートしてきて・・・」
「伯母さんには言わなかったの?」
「言ったけど・・・言ったけど、我慢しろって・・・」
「金づるは失いたくないってことね。最っ低。じゃあ・・・金もそいつに?」
「・・・貸してあげるから・・・体で返せって言われたわ。」
美咲は怒りが込み上げてきた。
「冗談じゃないわよ!里実、そんな家帰る必要ないからね。」
「でも、私他に行く場所なんて・・・あの時俊兄がいてくれたら・・・それなのに・・・それなのに・・・」
里実はさらに泣き崩れた。内に秘めたものを吐き出してほっとしたのもあったかもしれない。
「とりあえず、あたしんちに来たらいいよ。大淀のことはあたしが何とかするから。」
そう言って、美咲は子供をあやすように里実を抱きしめた。