一章~(4)犬猿の二人~
「どう?新しい担任。」
放課後、優梨とその取り巻きが校舎裏にたまって話している。
「拍子抜けって感じね。前の学校で生徒半殺しにした暴力教師だって聞いてたから、どんな危ないやつかと思ったけど。」
「なんかしょぼかったよね。やる気もない感じだし。」
「美咲の机見ても何も言わなかったし、熱血って感じもなかったよね。」
「優梨、どうすんの?また消しちゃう?」
取り巻きの一人が、にやついて優梨に話しかけた。
「まあしばらく様子見ね。簡単に消しちゃったらつまんないでしょ。」
「それもそうだよね。」
「てかあいつ、まだ来ないの?」
優梨たちは里実を呼び出して待っていた。
「遅ぇよ。」
そこに里実がやって来た。
「お金、ちゃんと持ってきたんでしょうね?」
「それが・・・」
里実は困った顔を見せてうつむいた。
「まさか持ってこなかったの?」
「・・・・・」
「ふざけんなよ!」
「謝って。」
優梨があごを上げて周りに指示すると、「土下座コール」が起こった。
里実はゆっくりと土下座の体勢になった。と、優梨は里実の頭を足で踏みつけて、地面にこすりつけた。
「ほら、ごめんなさいが聞こえないわよ。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
優梨の取り巻きの下品な笑い声が聞こえる。里実の顔は地面の土でドロドロになっていた。
「それぐらいにしといたら?」
優梨の取り巻きが声の方向を見ると、そこにいたのは美咲だった。美咲は一万円札の束をちらつかせている。
「てめぇ何なんだよ!」
「ごめんね。里実の金ならあたしが先にカツアゲしちゃったから。」
美咲は優梨の取り巻きを無視して、つかつかと優梨に近づいた。
「ほら、あんたの好きなお金なら、ここにあるわよ。」
そう言うと、美咲はその札束で美咲の顔を引っ叩た。
「何すんのよ!」
「悪いわね。手がすべっちゃって。」
「ふざけんじゃないわよ!!」
激高した優梨は、美咲に平手打ちで反撃しようとしたが、美咲は「甘い!」と優梨の手を払いのけた。
「里実、こんなやつらと関ってたらバカがうつるから、さっさと行くわよ。」
そう言うと、美咲は里実を連れて行ってしまった。
優梨は苦虫を噛み潰したような顔をして、美咲と里実をずっとにらみつけていた。