一章~(1)運命の再会~
清条学園の職員室では俊平が紹介されていた。
「・・・川神先生には退職された高田先生を引き継いで、2年4組をお願いしたいと思います。では葛城先生、川神先生に教室を案内してあげてください。」
「・・・わかりました。」
不満げな顔で答えたのは2年3組の担任の、葛城香代だった。
「よろしくお願いし・・・」
俊平の言葉をさえぎるように、香代は無言で職員室を出ようとした。俊平は慌てて香代の後をついていった。
そして、職員室を出た途端、香代は俊平に言い放った。
「最初にはっきり言っておきますけど、私はあなたをうちの教師として認めたわけではありません。どんな理由があれ、生徒に暴力をふるうなんて最低です。」
「はあ・・」
俊平は、前にいた高校で暴力事件を起こし、クビになっていた。
それからしばらく教職を離れていたのだった。
「どうしてあなたみたいな人が採用されたのかはわかりませんけど、何か問題を起こすようなら・・・ちょっと、聞いてるんですか?」
2年3組の教室にさしかかって、俊平は凍りついてしまった。俊平の視線の先には、姪の関谷里実の姿があった。
「あ、いや、なんでもありません。」
「とにかく、もしまた生徒に暴力をふるったりしたら、私は絶対に許しませんから。」
俊平をにらみつけると、香代は3組の教室へ入っていった。
(里実・・・・まさか里実がこの高校だったなんて・・・)
俊平は、年下の女教師にいきなり手厳しくやられたことよりも、里実のことが気になっていた。