三章~(2)優梨の計画~
「里実。」
美咲が声をかけたが、聞こえていないのか、グラウンドをずっと見つめたまま反応がない。グラウンドでは野球部が練習をしていた。
「里実。」
美咲が肩をポンとたたくと、里実はやっと気がついた。
「あ、美咲。」
「あ、じゃないわよ。全っ然反応ないんだから。」
「ごめんごめん。」
「そんなに野球が好きなの?」
「野球見てると、元気がもらえるから。美咲だって野球部のマネージャーでしょ。」
「まあ、私は和樹に頼まれてやってただけだから。和樹が辞めて、いる意味がなくなったから、今はユーレイ部員状態だけど。」
「・・・宮下君、戻れないかな?」
「無理じゃない?だいたい、あいつがもうやりたくないでしょ。桜華のこともあるし。あ、里実あんた和樹に余計なこと言わないほうがいいよ。あいつ桜華のことになるとすぐムキになるから。」
「ねえ優梨、最近つまんないんだけど。」
「そうそう、美咲のせいで里実いじめれないしね。どういうつもりかあいつ最近授業も出てるし。」
「川神もさあ、暴力教師だって話だったのに全然問題起こす気配ないよね。何言っても反応薄いし、授業も淡々と進めてるだけだし。」
優梨の取り巻きが口々に不平をもらしている。
「その川神なんだけど、里実の叔父さんだって話知ってる?」
優梨が口を開いた。
「えっ!そうなの?」
「だから里実に何かあれば、暴力教師の本性あらわすってことよ。」
「どうすんの?」
優梨が一人に耳打ちする。
「・・・えっ。そこまでしなくても・・・」
「嫌ならあんたにしてやってもいいのよ。」
優梨によって、恐ろしい計画が実行されようとしていた。それを知る由もない里実は、和樹が野球部に戻るにはどうしたらいいかばかり考えていた。