三章~(1)新しい朝のはじまり~
里実が目を覚ますと、まだみんな寝ている様子だった。外はまだ暗く、時計を見ると5時を示していた。
和樹はみんなが寝てしまった後に帰ってきていたようだった。
「そうだ。」
里実は何かを思いついた。
「どうしたの、これ?」
食卓には、少し豪華な朝食が用意されていた。
「おはよう、美幸。私が作ったんだよ。」
「マジで!?里実って料理できんだ。」
耕作も匂いに誘われて起きてきた。
「いい匂いがすると思ったら・・・」
「おじさん、里実が作ったんだって。」
「え、里実ちゃんが?そんな気を使わなくてもいいのに。」
「気なんか使ってないですよ。ただ、やりたかっただけなんで。それより、冷蔵庫にあるもの勝手に使っちゃてごめんなさい。」
「この味噌汁美味しい!」
「この卵焼きもなかなかのもんだよ。」
里実の朝食は二人には高評価だったようだ。遅れて、和樹も二階の部屋から下りてきた。
「和樹、おはよう。この朝食、里実が作ったのよ。つかあんた昨日どこ行ってたのよ。」
「うっせぇよ。それに朝からこんなもん食えるかよ。」
和樹はそう吐き捨てた。
「宮下君、おはよう。ごめんね、勝手に。」
里実は和樹と目が合って少し恥ずかしげにしている。
「まあどうでもいいけど。」
結局、和樹は朝食を食べなかった。
それからしばらくは、里実にとってそれなりに幸せな日々が続いていた。美咲が目を光らせていたので、いじめにあうこともなかったし、家では耕作も親切にしてくれた。和樹は相変わらずだったし、俊平のことは気になっていたけれど。