ストーカーな僕の純愛
僕だけが知っていたよ。
強い女、キツイ女だと噂される君が本当はとても繊細なことを。
ずっと君のことを見ていたからね。
君は「気持ち悪い」というかもしれないけれど。
そう、僕は君だけを見ていたんだ。
入社した時からオフィスの華。
背が高くて、アーモンド型の瞳はキラキラして、頑張り屋で。
笑った顔がとっても素敵で。
とびきり美人だから、僕の手の届く存在じゃないって思った。
でもね、ただの挨拶や、ごく事務的な会話でさえ、僕にとっては幸せな時間で、沢山のパワーをもらっていたんだよ。
そう、僕は君が大好きだ。
だから、君が望むなら僕がアイツを殺してあげる。
僕だけは、気づいていたよ。
君が時折憂いの表情を浮かべているのを。
ある時からウエストを隠す服を着ていたことを。
トイレに篭もる時間が長くなったことを。
早く、早く。
君が笑顔でサプライズしてくれる事を、僕は願っていたんだ。
僕は君を手に入れたいんじゃない。
大好きな君に幸せになって欲しかったから。
早く、早くと。吉報を待った。
次第に君のお腹は隠し通せないほど大きくなり、赤ん坊が産まれた。
幸せの形はひとそれぞれだと思う。
君の幸せの形なんて僕が決められるものじゃない。
そう思う。
それでも、僕はアイツを許せない。
添い遂げないなら、なんで君に近づいたんだ。
妻がいながら、なんで君を抱いたんだ。
なんで…… 君とは別の若い女性に手を出したんだ。
どうして、君を大事にしないんだよ……。
僕だけが知っているよ。
時折君は、閉店間際の街外れのスーパーにやってくる。
疲れ果てた、暗い瞳で。
君が「気持ち悪い」と思うかも知れないから、僕は偶然を装うんだ。
僕は決めた。次こそ君に声をかけると。
そして、君が纒う靄が吹き飛ぶほど、明るい話題で笑わせてみせる。
あの時無かった勇気を振り絞って、君を笑顔にして見せる。
僕は君を手に入れたいんじゃない。
ただ、笑顔でいて欲しい。