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辞めたバイトを思い出し。 〜どんどん動け!〜  作者: 君月 満


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生還と目覚め

「……………」無言である。独りで運転している訳なので、そもそもが無言は無言なのだか、今はこの表現がピタリとくる。RADIOからはDJが何かの情報を愉快に流すのだが、渦中の僕にとっては既に雑音でしかなく、むしろ要らない音であった。普段なら「へー」「ほー」と内容に自然と相槌を打つのだが、今は超緊急事態で他の情報とか楽しさを受け入れる感覚なんて到底無かった。運転に全集中。なので、鬼神だけど猛々しい咆哮も無く、荒々しいパフォーマンスも一切なく、威光など皆無であった。「ぷとととと……」と、アイドリングさながらのエンジン音を醸し出しながら、背中を丸めて眼前ガン見でピンク色の相棒にしがみつき、吹き荒び、そして、しんしんっと降り堕ちる、何も見えない、めちゃヤバい大雪の中、徒歩並のスピードで進むのが精一杯であった。もちろん内心は穏やかでなく、ド緊張で過緊張にハンドルを握りしめていた。「ここは無難に終えてくれーーマジでよぉーah」「こんな一時的な嵐で事故なんてゴメンだよーもうーっah」いつしか祈りと言うのか「願い」のような独り言が漏れ出ていた。……この時を今思い返すと、至極至極、ゆっっくりとスローモーションに「カイジの鉄骨渡り編」みたいな、命掛けで濃密な時間が流れていたように思える。

 「命からがら」「九死に一生」という言葉がある。この状況に耐えに耐え進みに進み抜いた結果、ようやく大暴雪域を抜けたのだろうか、おぼろげに周囲が穏やかになりヘッドライトを点灯出来る程に眼前が晴れてきたため、胸を撫で下ろす事が出来た。深呼吸をして肩の緊張を落とす。そして「お〜い、お茶。」を一口飲み胃腸をほぐす。精神疲労が激しい鬼神モードを解除。鬼神はそそくさと天空に帰った。僕は…僕は難所をクリアしたのだった。「こんな夜中に命がけで……金のためとは言え、死んじゃったら何にもならない。何やってんだろ俺……。いやマジで。ちょっとコレは違うんじゃないかなぁ…」

 配達の仕事は世の中を動かす上で、大変重要なお仕事である。大震災の際では物流が復活することをどれだけ待ち侘びたものか…。昨今で言えば原油タンカーの寄港を切に願っている。物流が滞る恐怖は知っているつもりだ。「しかし…しかしだ…コレは僕の本職では無くて飽くまでバイトなのだから……。」この仕事に取り組む事に、色々な考えを感じ、「改めてキチンと向き合わなければ」と思えた瞬間でもあった。続

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