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辞めたバイトを思い出し。R4-8-8  作者: 君月 満
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バリアandスメル その②

 前述した門構えから玄関に至る行程を経て、ようやく到着した現場でも問題というか特筆すべき事柄がある。それは、ドアを開けるなり、この玄関内のperfume…いや…smell…そう、smell。が、実にbad。もうこれは、海のモノ、山のモノとも言えず、具体的に言うと古い木造臭、コンクリ臭にカビ臭、ゴム臭、土嚢臭、灯油臭、ゴミ臭、排泄臭、汗臭、唾液臭、栗の花臭、に加えて、酸味も甘味も苦味も塩味も旨味も含まれた「何か」を両手で大胆に揉みしだかれ抜き、得られた熟成濃縮の一滴が蒸発し、僕の鼻腔に全突撃してくるような、なんて言うのか……これはド級の派手な「イチモツ」であって、更にそれは各配達先に訪問する度に様々な角度の違いをみせるマイクタイソンみたいなsuper hard puncherなのである。場合によっては息を止めて業務を熟さなければならないし、もし一息でも吸い込んだら神経を直接鷲掴みされるような即○死に至る程の必殺仕事人みたいなkiller smellにもしばしば遭遇するから常にスキは見せれないのである。

 しかし、ただただbad smellばかりでない。何というか哀愁のある、何処か懐かしく、そして優しく思われるsmellに出会う場合もある。それは配達後の運転にまで影響を与えるような、諭されるような優しい気持ちになれる、good smell。いわば「美臭」もある。これぞまさにperfumeだ。と、思われる現場もある。だけど、なぜなのか…なぜ大半はハッキリ言うとクサいのだろうか……。と、考えを巡らす。たどり着いた答えとして、お年寄りのお客様がその大半を締めている事が原因だと思われた。お年寄り…年季…そう…これは年季臭なのだ。玄関フード内の防臭なんて大体はしないことから、これは何十年と蓄積された生活臭の賜物であって、そのように考えると僕は「許し」の境地に浸れるのであった。

 そんな配達を一件。また一件。とこなし、ピンク色の相棒と現地に向かい続けるのであるが、その度に僕は、各ご家庭の日常生活、居住者の人生を垣間見るようで、揺れる車内で自分勝手に感慨にふけるのであった。「生きてるね……うん。みんな頑張って生きているんだ!」…と。


                     続く

 

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