バリアandスメル その①
刻むぜ2025大吉
ピンク色のボロ車は効きの鈍いフットブレーキを強めに押し込む事でようやく停車。素早くフロントライトを「off」そしてシフトレバーを「parking」に、これまた素早くぶち込み散らかす。到着した眼前の配達先。それはいわば大事なお客さんの「ご自宅」となる訳だが、世の中色々な人が居る。色々な人が居れば、おのずと色々な生活模様がある。それは時折「門構え」そして「玄関」の何たるかによって否応なしに強制力を持って伺わせられる…思い知らされる。「何が言いたいの…?」と、読者のあなたはおそらく思うだろう。ではここで、至極端的に申し上げると……「深夜の門構えはめちゃコワイ」そして「玄関スメルあるね…うん…あるね…ah」の2点で表せれる。玄関と言っても実際は北国の住宅によくある「玄関フード」をここでは指しており、大半はこの玄関フード内に置き配する訳だ。
まず、「一戸建ての門構え」について言うと、何でか分からないが、これはマジで怖い。大抵のご自宅が醸し出している昼間の「来てよ〜」「よく来たね〜」みたいな「welcomeな雰囲気」は深夜の門構えにおいては全くもって皆無だ。むしろ、「来んなコラーッ!」みたいな、もしくは張り詰めた「ビリビリ電磁場」のような「目前にあるも視覚認知が不可な結界」のような、深夜の門構えは人を寄せ付けない「バリアな雰囲気」が満載である。そんなバリアを僕はその都度「うっ…」とちょっとだけ気合いを入れて通過せねばいけない。でなければ当たり前だが、配達が出来ないからだ。以下にそのタイプ別の実例を述べさせて頂く。
①は玄関ドアのすぐ前にコンクリートの四角柱が両端にあって、その片方に表札がついているタイプ。これは個数が1番多いパターン。各所にある街灯や路面灯からの明かりがあるため安心安全で、ストレスレベルは「大丈夫」である。配達を熟すにはふふん?と言ったぐらいにして余裕すらある。
②は門構えから玄関が視認されるも通路に飛び踏み石があったりして沢山歩かないと玄関に到着出来ないタイプ。これは作り的には①の類似パターンであるが、途中庭の植木のため路面灯の明かりが薄らまばらで、明かりが届かない範囲もあることが既に怖く、やや早歩きになり暗闇を緊張感を持って進まなければならず余裕はない。ストレスレベルは「ちょっとね…そこの影は何?…何も無いよね?」で、疑心暗鬼。肛門を強めに閉めて不意な事態に備えなければならない。
③は門構えから玄関の視認が不可で漆黒の暗闇しかそこにはない。足元も行く先の状況もよく分からない上に頼りの光源は自らのヘッドライトのみと極めて心細い。狭い視界で玄関を探さねば配達コンプリート出来ない。ようやく到達した玄関には何故か日本人形、デカ目のタヌキの置き物などの人型の置き物系があり、ストレスレベルは「あ!うあぁ…orz」である。声にならない声がでる。恐怖心が脳天から天空に轟く。魑魅魍魎との戦い。肛門どころか全身の穴という穴を強く強く閉めて備えた上にMAXでキレなければならない。
④は門構えから玄関の視認不可、漆黒の暗闇は当たり前で、更に曲がりくねったイビツな手作り風のコンクリ階段が40m程ある。見上げれば輝く星空、眼下には綺麗な夜景が見えて、アレ?俺…登山してんだっけ?と目的を見失う程の高低差を移動しなければならない。ストレスレベルは「達観」で、むしろ全身の脱力が求められる。百花繚乱。明鏡止水。風林火山。耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ。命を差し出す覚悟が必要であるが、余所見や後ろは決して振り向いてはならない、ただただ目的地に向かって早足で暗闇を突き進め。
⑤は番外編。そもそも門構えが無くて暗闇で自宅の表札を探す所から始まる。深夜に右往左往している様は傍目が完全に不審者で通報されるリスクが生じる。隣接に空き家もあり、極限の恐怖で直視不可。そして、この段階で半泣き。発汗と怒りと焦りと不安が入り混じる。ようやくそれらしき玄関を見つけても表札がない場合もある。ストレスレベルは「ガンツ」で、名作GANTZの世界線で強豪他者どもが戦闘してる中、それを掻い潜りバイト宅配していると想像して貰えれば足りる。無論ガンツスーツは装着している。
⑥はおまけ。初回配達については殆どギャンブルであり。そのギャンブル配達にも勝たなければならない。と言った「運」も必要。
以上「門構え編」についてはこれら前記した内容がその全てである。 続く
2025の冬が始まった
冬の入り口にある神聖
龍が飛び去り蛇が来た
蛇…蛇はニョロニョロ曲がりくねるも
その道先に見えるは何たるかな