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38 価値観の違うガールズトーク(セイラ視点)

 ミレーヌ様がカイン様の婚約者になったことは、学園中に広まり、恐らくは学園の外の貴族社会にも広まったのでしょう。

 つまり、それは同時に私がカイン様の婚約者を外れ、別の方の婚約者となったことも広まったということでもあります。

 王族に関わるからと留学生の方々と接しておりましたが、残念なことに公な理由がなくなってしまったため、その役目はミレーヌ様が負うことになります。


「それだと申しますのに、皆様どうなさいましたの?」

「妾は友人との時間を大切にしておるのじゃ」

「アタシもそうヨ」

「わっちはミレーヌ様とは気が合わないのでありんす」

「私はセイラ様が王妃になるからお慕いしていたのではありません、セイラ様だからお慕いしているのです」

「と、従妹が申しますので。私もミレーヌ様のような方は少し・・・。お付き合いをなさっているのはヌルガ様ぐらいではございませんか?もっとも、ヌルガ様は下心がおありのようですが」

「そうでありんすね。ヌルガ様は側室の座を狙ってるのかもしれないでありんす」

「あらまあ」


 実のところ、ミレーヌ様やカイン様と私の接触に関しては、この方々や12公爵家の方によって今も離されている状態が継続しているのです。

 ミレーヌ様の態度が尊大になりつつあるということなので、私としては全く構わないのですが、周囲の方々が心配なさっているのですわ。

 中でも最も面倒なのが、神々ですわね。

 前回行ったばかりだというのに、またしばらくあちらで過ごさないかとおっしゃってくださるのですわ。

 まったく甘い言葉で誤魔化そうとなさってますが、いえ誤魔化す気すらない気もしますが、そのしばらくというのが、人間の世界での数年間になりかねないのはわかりきっておりますわ。

 ミレーヌ様が正式に王妃になったころには返してくださるでしょうが、学業は留年もしくは中途退学という扱いになってしまいますもの、そのようなことをこの平和な時代にするなんて無様な真似、12公爵家の者がすべきことではありませんわ。


「この国の側室は確かに子を産む権利を与えられておりますが、次期国王になれるのは王妃が産んだ子のみですわ。ヌルガ様は側室になって何をなさるおつもりなのでしょうか?」

「わっちが思うに、建前は国交の円滑と友好を目的としているけど、本音は義務の少ない側室になって権利だけを使いたいというところでありんすなあ」

「まあまあ、我が国の側室は籠の鳥ですのに、もの好きでいらっしゃいますのね」

「王族に取り入るのは国から指示を受けていることヨ。どこの国も似たような指示を受けているはずネ」

「そうじゃな。しかしこの国において重要なのは王族よりも12公爵家であろう。妾は12公爵家の方々に取り入る様にと言われておるぞ」

「アタシもそうネ。王族はついでヨ」

「わっちはこの国には旦那探しに来てますからなあ、そういう指示はとくになかったでありんすよ」

「わっ私はそんなことを関係なくセイラ様をお慕いしております!」

「私は指示はもちろん受けていますよ。建前って便利ですから喜んで受けました」


 皆様、素直というか腹黒いというか悩みどころですわね。

 まあ国の指示を受けて私と親しくしていると言われましても、とくに気にもしませんけれど。


「皆様大変ですわね、国を出ることのない私どもにはわからないのでお気持ちを察することが出来ず申し訳ございません。けれども、どのような理由であれ、こうして皆様と過ごせる時間があるのはうれしく思いますわ」

「人たらしじゃな」

「こういうところがセイラ様ネ」


 呆れたような視線を向けられてしまいましたが、なぜでしょうか?

 それにしても、ミレーヌ様は留学生の方とこんなにうまくいっていないご様子ですが、大丈夫なのでしょうか?ご結婚為されば人間関係などほぼなくなるというか、完全になくなるので気にしていないのかもしれませんが……って、ミレーヌ様はまだそのことをご存知ではないかもしれませんわね。


「でも、わっち達とはうまくやれてないのやけど、おのことは仲ようしてるようでありんすよ。アイトリーはんにも馴れ馴れしくして…」

「エーギロス帝国の第3皇子ガイナック様も、随分と親しくしておるようじゃな。彼は王位をほぼ望めぬ身であるがゆえに、王族とのコネを作りたいのかもしれんな」

「ガイナック様……」


 そういえばずっと接触がなかったので忘れかけておりましたし、他の留学生よりもこの国の一般貴族の子息と仲良くしているのでお話ししたことも一度ぐらいしかないので……ええ、本当に忘れておりましたわ。


「影が薄い男じゃ。冷たそうな第一印象を受けるが、話してみれば純粋で素朴な男じゃ。王位に就くことを毛嫌いしており、将来は各国を飛び回る外交官になりたいと言っておったな」

「そうなのですか」


 大変な事とは思いますが、この学園でその礎を築ければよいのですが、ミレーヌ様とばかり親しくするとその夢は叶わないかもしれませんわね。


「もっとも、アイトリー様もガイナック様も迷惑そうヨ」

「そうですわね。近寄られる気配を感じるとすぐに逃げているようですわ」

「あらまあ」


 ミレーヌ様、小説の中ですとこの時期というか婚約になってからは、カイン様と仲良くしつつ周囲に認められていく時期ですのに、皆様のお話を聞く限りでは認められているとは思えませんわねえ。


「皆様はミレーヌ様が次期王妃になることをどう思っていらっしゃいますの?」

「この国の王妃もしくは王配は外には出ぬゆえ、どうでもよいな」

「そうネ。ミレーヌ様と仲良くなるぐらいならセイラ様と仲良くなるヨ」

「「同じくですわ」」

「わっちは素直に言って気に入りまへん。アイトリーはんはわっちが狙ってるお人やのに横から突くような真似をして、礼儀が成ってないとしか言えないでありんす」

「あらまあ」


 これは残念ながら諸外国からの印象は良くないとしか言えませんわね。カイン様自身が諸外国からの印象は…なんともいえませんし…。

 外交官と12公爵家が表に立つから王族は国内のことにのみ目を向ければいいとはいえ、これではあまりにも、情けないですわね。


「ところで!セイラ様の新しい婚約者ってどういう人ネ?」

「ヴェルナー様ですか?そうですわね……、大きな得物を得意とする方で、特に大斧をお使いになるのですが、押し切るというよりもその繰り出すスピードで断ち切るという戦法なのです。魔力も多く、炎系の魔法を得意と為さっております。一面を燃やす炎魔法は壮絶と言ってもいいほどに、まさに業火魔法と呼ぶにふさわしいものでして、得物に魔法を纏わせるのは苦手なのですが、炎の魔法で熱した武器で相手を焼き切れば再生も難しく」

「ストップ!ストップヨ!」

「…はい?」

「セイラ様、そうではない。例えばどのような顔立ちだとか、性格はどうとかそういうものを聞きたいのじゃ」


 ペレト様とアルスデヤ様に言われてきょとりと首をかしげてしまう。今まさにそれをお伝えしたと思うのですが、説明が足りなかったのでしょうか?


「えっと……精悍な顔立ちの方で、マリオン様に向ける笑顔は子供のようにかわいらしくて、えっと……猛々しく戦う方です」


 容姿と性格というのはこういうことでよいのでしょうか?このような短い説明ではヴェルナー様の良いところがわからないと思いますが。

 そう考えながら皆様を見ると、何とも微妙な顔をなさっていらっしゃいます。


「あの、何かおかしなことを言いましたでしょうか?」

「セイラ様、マリオン様の元婚約者と婚約したことを、やはりお気になさっているのではありませんか?」

「いいえ」


 ケーテ様が恐る恐るという感じで尋ねてきたことに、即答で否定すると皆様のお顔がさらに微妙な感じになってしまいました。


「親友の婚約者を取るような結果になったことを、なにゆえに気にせぬと申すのかの?」

「まあアルスデヤ様、このようなことになってしまいましたが、12公爵家の人間として私たちは義務を全うすることこそが大切なことですわ。ヴェルナー様を嫌っているわけもございませんし、二人でマリオン様たちのお目覚めを待つのも良いかと思っておりますわ」


 そういうと、アルスデヤ様が深くため息を吐き、ほかの方も呆れたような顔を向けていらっしゃいますね。

 どうかしたのでしょうか?


「ああ、気にするでない。妾達の常識ではの、子供を作る行為を望む望まざるどちらにせよ、重要な事ととらえておるのじゃ」

「そうなのですか」


 子供を産むのは重要ですが、その過程は、そういえば気にしたことはございませんわね。

 というか、そんなに重要な事なのでしょうか?種を胎に仕込むだけなのですから、重要なのはその後のことですわよね。研究が進めばその行為すら必要なく子を孕む様にできるかもしれないという話もございますが、神の領域に足を入れるのか、それとも神の領域を冒涜するのか…。悩みどころですわね。


「ま、まあセイラ様の常識がズレてはるのは知ってましたし、今更でありんすな」

「そうですわね」

「わかっていても、聞くと衝撃ですわね」

「セックスは快楽と同時にお互いの思いを確かめる重要な、神聖な儀式ヨ!セイラ様も一度セックスすればそれがわかるヨ!」

「と申されましても、私はヴェルナー様をちゃんと好いておりますし、ヴェルナー様も私を好いていてくださいます。そこのどこを疑うというのでしょうか?」

「ウッ…そ、そうじゃないヨ」


 といいながらも、ペレト様はそれ以上何かを言うこともなく、隣に座っていたアルスデヤ様に慰められるように肩を叩かれている。


「皆様はいろいろ考えていらっしゃいますのね」


 そのような事を考える暇があるのなら、鍛錬したほうがよっぽど有意義ですけれども、なんとなくこの場でこのことを言ったら皆様からまた微妙な視線を向けられてしまいそうですわね。

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