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10 季節は飛んで8月ですわ(セイラ視点)

「まあ、随分思いつめたお顔をなさってカイン様いかがいたしました?」

「セイラ、実は最近ミレーヌが誰かに意地悪をされてるらしくてね、話を聞いてきたところなんだ」

「ミレーヌ様が、そうですか。それは早く解決するといいですわね」

「うんそうだね」


 ついに自作自演をなさってきましたか、それとも本当にどなたかにいじめを受けているのでしょうか?


 あら、ごきげんよう皆様。セイラでございます。

 私の感覚では随分久しぶりなのですが、皆様の中ではそうでもないかもしれませんね。

 時間の感覚というものは人によって違うもの、一秒が何時間にも感じたり、何時間が数秒に感じたりすることも間々ある事です。


 さて、以前私が皆様とお会いしたのは4月の初めだったかと思います。今はそれより時間が幾分経過いたしまして、暑さの厳しい8月になりました。

 え?いきなり時間が飛んだ?その間のことはどうしたって?

 特に取るに足らない出来事しかありませんでしたわよ。


 講義を受けたり、魔物退治で遊んでり、さらに講義を受けて学友との友好を深めたり、魔物討伐で遊んだり、パジャマパーティーをしたり、訓練で遊んだり、生徒間の交流を深めたりいたしました。

 そうそう、ラウニーシュ神国第2王女のメンヒジル様ともお友達になりましたわ。

 カイン様狙いかと思っていたのですが、それは姉君のヌルガ様だったそうで、メンヒジル様はそれを止めようと一緒にいただけだったそうです。

 なんといいますか、実はケーテ様に負けず劣らずの私ファンだとかで、お二人の熱弁する私の武勇伝に思わず苦笑してしまいました。


 さて、ミレーヌ様のほうですがこの数か月間で程よくお友達もできて、程よく学業を修めていらっしゃるようです。

 本当に、良くも悪くも普通の伯爵令嬢と言ったところなのですが、カイン様と親しく接する場面が多々あるとのことで若干目をつけられているご様子ではあります。

 ただ、講義が同じときに必ずカイン様の横に座ったり、食堂にお誘いして二人で召し上がったり、何かにつけてお傍に侍っているので、それはまあ悪目立ちしていらっしゃいますね。

 私との関わりは、残念ながらありません。

 そもそも同じ講義を受けておりませんし、学ぶ学舎も違いますので遭遇するとすれば、昼食をとるために使用するカフェぐらいでしょうか。

 それでも、ミレーヌ様は食堂を使っていらっしゃることが多いらしく、カフェで食事をいただく私とは接触がないのですよね。

 確かに、カイン様とミレーヌ様が仲良さげに歩いているお姿は見ますが、別に嫉妬心などは起こってきませんね。

 まあ、これには寮でのカイン様の行動に原因もあるのですが、カール様が怒る前に止めないといけませんね。


「いじめというのは具体的にどのようなものをされているのですか?」

「教本が墨で汚されてたり、破かれてたり。訓練服が汚されたりボロボロにされてたり、今日は頭から泥水を掛けられたんだって」

「まあ、それは何というか通常の財政でしかないミレーヌ様のご実家には痛手になりますね」

「そうなんだよね。新しいものを買うのは別にかまわないけど、その請求額が実家に行くわけだからね、まあ何があったか問い詰めてくるだろうね」

「だからカイン様がご相談に乗ってるんですのね」

「うん。学内とはいえね、一応僕の幼馴染が被害者だし、目撃者を探すように指示とかは出して、ミレーヌの友たちになるべく一人にさせないように言っておいてるんだ」


 なるほど、ミレーヌ様にお友達がいるのであれば手堅い対策と言えますわね。


「情報収集にはカール様の手のものをお使いになってはいかがです?」


 実際今在学している12公爵家の者の中で情報収集に長けているのはカール様、正確にはその手勢にある隠密部隊。


「そうだね、もうちょっと大きな騒ぎになったらそうしようかなー」


 カイン様がそうおっしゃっるので私は素直に「わかりました」とだけうなずいた。

 玄関先でお出迎えしておりまして、話しているうちに気が付けばカイン様のお部屋の前まで来てしまいました。


「ではカイン様、私はこれで」

「ちょっと寄っていって?」


 いつにないお誘いに驚きながらも笑みを浮かべてうなずく。

 別にこういったお誘いは初めてのことではありませんし、婚約者なのですから特に二人っきりで部屋にいても責められるいわれはございません。

 まあ、多少カール様たちから言われている「節度ある行動」に引っかかるかもしれませんが、一応節度は守っておりますので問題ございませんね。


 カイン様の部屋はあまり元の状態に手を入れておらず、質素な飾り気のない部屋ですが、応接間にも幾つも本棚が置かれていますが、続く居間にはその用途を無視して本棚が並ぶ書室になっております。

 流石に寝室には入ったことはございませんのでわかりませんが、着替えもそこでしなければなりませんので、流石にそこには本は控えめだと信じております。


 応接室のソファに座ろうとすると、カイン様がいつものように自分の股を開いてそこに座るように言って手招きなさいます。

 まるでそうするために作られたかのように奥行のあるソファは2人で座っても十分で、後ろから密着する体勢をカイン様は随分とお気に召しているようです。

 時折遠慮なく胸を揉まれるのですが、まあ婚約者ですし人前ではないのでよいでしょう。


「はぁ、やっぱりセイラの胸ってやわらかいし弾力あるし、揉んでて気持ちいいね」

「はあ、そうですか?私はいつも言いますが削れてくれればいいと思ってますわよ?」

「あははー。そんなことしたらアルスデヤ様たちが号泣するんじゃないかなー」


 留学生で親しくなった4人は随分と私の胸をお気に召していらっしゃるご様子で、折に触れては胸の弾力を確かめていらっしゃいます。


「肌もすべすべだしー」


 そう言ってスカートをめくって太ももを撫でてくるカイン様に、これは節度ある行為なのかと一瞬考え、やはりまだ大丈夫だと結論付ける。

 要するに最後まで行為をしなければいいのでしょうし、人前で肌を見せる行為をしなければ問題ありませんわね。


「ほんとーに、セイラってこういうのに抵抗ないよねー」

「はあ」

「他の男にもさせちゃうわけ?」

「え? っ!?」


 急に強く握り締められた胸と爪を立てられた足に、何か気に障ったことがあったのだろうかと首をかしげてしまう。


「他人の異性にこのような真似はさせたことはありませんわ」

「セイラの他人ってどこまでが範囲なんだろうねー」


 相変わらず強い力で胸を握ってくる手にどうしたものか考える。

 私にとって家族とは12公爵家の者全員と言える。けれども、なんとなくこの場では言ってはいけないような気がするので黙っていると次第に手の力が抜けていって、通常の力で揉むというか撫でる動きに変わった。

 優しくなでられ、ガーターストッキングの間に指を入れられてくすぐられる。首筋には唇を当てられて軽く吸われる。

 小説ではこの時点でもう二人の仲は微妙なものになっているはずなのですが、そのような気配は感じませんわね。


「んー、ずっとこうしてたいけど。怒られそうだしね」


 そう言って手を離したカイン様に、これで終了なのだと感じてソファの座る場所を変える。カイン様の前ではなく横に座る。


「ところでミレーヌ様へのいじめの件ですが、犯人に目星はついてますの?」

「んー、まあミレーヌも犯人は見てないっていうからねー。本当かはわからないけど、ミレーヌをよく思ってない生徒は多いし」

「あら」


 ご自分のせいかをご自覚なさっているかはわかりませんが、状況把握はなさっているようですわね。


「まあ、その中から犯人を探すのは厳しいね。それにやることが小さすぎてね。ミレーヌも精神的ショックを受けたって泣いてるけど、その割には翌日にはケロッとしちゃうんだよね。代えのものが届いたとか言ってね。あの涙はなんなのさーって思っちゃうよね」

「前向きになっていらっしゃるのではないでしょうか?」

「そうかな?んー、セイラがいうならそうかもね」


 小説の中でもヒロインはタフでしたものね。きっとこの世界でも強い精神力をお持ちなのかもしれませんわ。

 自作自演のいじめでしたら、割とすぐ判明してしまうと思いますが、さて、いかがなものでしょうか?

 すぐに私のせいと言わないのはよかったですわ。


 もし言っていれば、私が全力でお相手しましたもの。


「でもさー、教科書を破ったりって校則に反する行為だよね」

「そうですね、生徒の学習を阻害してはいけないという項目に当てはまりますわ」

「そうだよねー。校則破りには厳しい罰則があるのにね」

「そうですわね」


 そうなのですわ、細かい校則には校則の重要度に合わせて罰則がございます。小説の中のセイラはその罰則を覚悟していじめていたのでしょうか?

 そうだとしたら、随分と度胸のあるかたですわね。

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