2 朝の弱めの光が好き
とっても悩んだ、詫び百足orzrzrz
月明かりの無い雲のかかった夜空を飛んでいる。
王都から飛び立ち、体感としては数十分だろうかそれくらいの時間が流れた頃。
「そろそろ、ストイルの上ですね目的地まで半分です」
アトがそう言う。
反応はしない、している暇はない今は、この後確実にするであろう戦いのために集中し考えないといけない。
戦いは集団戦、圧倒的に多い魔物を相手にしないといけなくなるだろう、数的有利を取られているが代わりに一匹一匹はそこまでだろう、魔物は群れている数が多い程弱いという性質があるからだ。
イメージしろ囲まれながら戦う自分を、思い出すは6年前、食う寝る時も奇襲をかけられたあの時を、食べながら戦い吐き戻しても戦い続けた時のこと、それがあったから食べながら戦う事が出来るようになった事もありました。
寝不足で戦い続けた事を思い出せ、あの時の何故自分は起きているのだろうという悟りめいた冷静さから来る、広く情報を処理だけの無の心を。
街中を半ケツで戦った事を思い出せ、人のトイレ中に襲ってきやがって、人の目が有れば襲えないだろうと大通りに逃げたのに、俺はあの時どんな状態でも戦うための強い心を得た。
武器もないあの状況を思い出せ。
体調不良の状態で戦った時を思い出せ。
敵に酒を飲ませれて酔っ払って戦った時を思い出せ
逆立ちした時。木箱の中に入った時。猫と戯れた時······。
そしてそれらは全部集団戦だったということを思い出せ。
イメージはできている、自信もできてきた、勝てなくはない
俺はそう思う。
「ありがとうございます」
ここは、私の村にあるほぼ物置部屋と化しているが一応貴重な宝を保管する地下室。何故ここに私がいるかというと。
「さぁ、その指輪を渡してください」
目の前にいる男、魔物共と一緒に現れたこの男は、口調こそ丁寧だが黒いローブで身を隠し唯一隠れていない顔には、悪魔を模したであろう仮面を付けている。
この男は魔物と共に村に現れ手当り次第に村人を殺していった、私が生きているのは運が悪かったからだ、男の目的は今私が持っている指輪、この指輪は、願いの指輪と言われていて、指輪に込めた魔力に応じて叶えられる願いがより強大なるらしい。最後に指輪が使われたのは百何十年以上昔で、しかも指輪の情報も何処にも漏らしてはいけないという掟がある。なのにこの男は指輪の事を知っている、何故か。
一つ思ったのは兄が話したという可能性だ。6年前に家出した兄が酒の席で話し回った結果、酔っ払いの話を信じたという烙印を背負いながらも村を襲撃した。有り得る…かもしれない。
いやありえないか、いくら兄といえど指輪を話せばどうなるかぐらいわかるだろうし、なんなら指輪なんて覚えていないという方が兄らしい。
「何を考えているのですか?」
ああ嫌だ、何故私がこんなことになっているのだろうか、どうせ指輪を渡せば私は殺される、分かりきっている、ならどうするか。
思いを馳せるは兄だ、風の噂ではかなりの強者になっているとの事だ指輪で呼び出す?この状況で?すぐに戦闘態勢に入れない可能性が大きい、なら逃げるか?逃げた先で兄に助けを呼ぶか?いや逃げたくはない、何かこの男一矢報いたいという復讐の気持ちがある。
どうする……。
「決めた」
「はい?」
指輪に願いを込めようとすると、指輪が光を放つ。
「使いましたね」
瞬間、体の感覚が失われ、落下する感覚に襲われる、切られたみんなと同じように、願いはどうなるだろうか、指輪は光っている、私の意識は薄れていく、まだ、願いを、叶えて、くれる、の、な、ら。 あ、に、た、す、け、て…。
「残念だ、残念だが死に際というのはなんとも美しいのか、特に白く神秘的な髪の君はより美しく感じたよ。さて指輪だが、うーん思っていたより魔力が少ないな。今使われたからか?だが何も起きていないとなると、少し慎重に動くとするか」
「そろそろですね」
「……」
「聞きいてますか?」「……」
「アーーーオチルーーワーーー」 「……」
「なんなんですかもう!」
「…少し静かにしてくれ」
「いやもう着きますよ!3、2、1、はいほら!」
「もっと丁寧に着地できないのか」
「静かにしてください、文句は受け付けておりません!」
文句があるから改善が出来るという事をこやつはご存知ではないようだ、まあ今回に関しては俺にも一応非があるからな大人なんだ俺は、今ならなんでも許せそうだぜ。
「ほれ、これやるよ」
俺は財布をアトに投げる。
「え?結構入ってないですかこれ」
「ああ配達料だ、釣りはノーツにでも渡しといてくれ」
「いやいや今お返ししますよ」
「いやそんな重りいらねぇから預かっててくれよ」
「あ そう言うことですね分かりました、その、すいません戦えなくて」
「あ?何言ってんだ」
「いやその私も リウもノーツさんとクロウさんみたいになれてたら、」
「やめとけ、戦えるやつなんて大なり小なり気が狂ってないと出来ないもんだからな」
「……」
村に向かって走り出す、後ろは見ない、生きて帰ろうとは思っていない、後ろを見たらその覚悟が揺らいでしまうだろうから。
村に着いた、そこらじゅうに魔物がいることが聴こえてくる、呼吸、足音、鳴き声様々な音を俺は感じ取った。
片手に逆手で短剣を持ち、足音を限りなく小さくする。
魔獣進行は災害だ、群れた魔物が、人を求めて進行するそして他の群れと合流していき川のようになっていくものだ、だが災害ではあるが対策の仕様はある、群れる段階か、合流し始める前に潰す、そのためにこの国では莫大な時間と予算を使って、群れをいち早く見つける技術を作り上げた、だというのに今回は感知出来なかったとでも言うのだろうか、そんなことは無い先週だってどっかで討伐隊が出てったはずなのだから。今回に限ってなんてありえないはずなんだ。
感情に流されるな、流れ着いた先は地獄だから、たとえ目の前で見知った奴が喰われていても、たとえ一緒に生活していた親だとしても、冷静にならなければ死ぬ。冷静に敵を殺していればいい、戦いにおいて俺が大切だと思っていることだが、今以上に実感していることはないだろう、魔物を殴り、首を跳ねて蹴り倒す。一連の流れを俺は限りなく速めるそうでないと体の震えが止まらないだろう、これはおそらく武者震いでは無いなにかを押さえつけてただ機械的に繰り返すだけだ。
ある程度時間が経つとそこらじゅうにいる魔物に気づかれ始めてきていた、仲間の匂いか、俺の匂いを嗅ぎつけて魔物たち来る。
「来いよ」
魔物の首を跳ね、群れに首を蹴り込み、首の無い胴体を踏みつけて指を立てて挑発する。
「早く来いよ、じゃねぇと武者震いが止まんねぇだよ!」
吠えた、これは挑発だ、決して感情には流されてはいない。
周りの魔物が少し止まった、そして一匹の魔物が飛び出したのを皮切りに一斉になだれ込んでくる。
戦いは多い方が勝つ、だがそれにも例外はあり大人と赤子ほど実力が離れていれば、多かろうが関係も無く、ましてや魔物には戦いにおいての作戦なんてあったものではない、ジェンにとってはこの程度の魔物は赤子の大群の手をひねる事に等しかった。
だが、「痛えなこの!」
数時間の戦いによる疲れから来る油断は一撃一撃と傷を付けていく、魔物は減ったがまだ百は軽くいる、そんな戦いが終わったのは朝日が登る頃だった。
ありがとうございます。
願い事は正確に。




