友人の葬式
掲載日:2020/10/31
スーツを着るのは久しぶりの事で、なんだか慣れなかった。
今朝電車に乗っている時ですら、友人はまだ世界のどこかで生きているのだろうと思っていた。
友人の死に顔は美しかった。
棺桶の中で目を閉じている友人は、今にも目を覚ましそうだ。
しかしピクリとも動かない友人が、ただ昼寝をしているだけでは無いと気づくのには少し時間がかかった。
無意識に涙が出てしまう。
後ろから女性の声がした。
「あの、兄の友人ですか?」
友人の妹だ。
初対面でも分かるくらい、目や眉の形が似ていた。
返答に少し戸惑ったが、涙を拭う。
「はい、そうです。」
「あの、兄が付き合ってる彼女がいるって言ってたんですけど、連絡先とかわかりますか?」
「…わかりません。」
私はまた嘘をついた。
彼を友人だと嘘をついた。
未だに言えないのだ。
彼は私の恋人であるということ。
墓場までその嘘を背負う彼を、私は見ていられなかった。




