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第五話

「で、結局なんのためにこんなところに連れて来たんだよ。」

 僕は、前にいるダイに声をかけた。


「なんとなく」

 ダイはこちらをふりかえらずに、ボソリと言った。ダイがそのように、はっきりと言葉を出さないのは珍しかった。なんだか様子が変だ。


 今日はお互い、「なんとなく」とか「特に理由はないけど」とかばっかり言っている気がする。


「懐かしいよな。肝試しとか......」


「お前は儀式のことをどうおもっているんだ?」

 ダイは、僕の様子見の言葉を遮るように言った。


「うん、まあ肝試しは楽しかったよね。」

 ダイの声色があまりに真剣だったので、ダイの言う儀式が明日のことを指しているのは分かっていたが、はぐらかすように言った。


「確かに、お前の言う通り、無意味だ。徹底的に無意味だ。何の価値もない。あんなこと、ずっと自慢している奴らはクズだ。」

 ダイが言った。


 僕は驚いた。ダイがはっきりと儀式について批判めいたことを言うのは初めてだった。


「その通りさ。」

 僕は言った。


 ダイならきっと、心の中では、儀式について僕と同じように考えているんではないかと思っていたので、本音が聞けて嬉しかった。悩んでいるのは僕だけじゃない、そう思うと嬉しかった。


「だけど、お前の悩みもクズさ。儀式と同じくらい。それが俺は言いたかった。」

 ダイがこちらを振り返り言った。僕の目をしっかりと捉えながら。


 頭をガツンと殴られたよな衝撃を感じた。そして、二人の間には、沈黙が流れた。昔、ここで出会った時のように、完全なる無音の中に僕たちはいた。その無音に、僕はからみとられたように、なんの言葉を発することもできなかった。


 やっと、「どういう意味だよ」と言おうした時、「もう、遅い帰ろう」とダイが言った。


 それから、ぼくたちは家に帰るまで一言もしゃべらなかった。ダイと話そうと、横になろぼうとするたびに、ダイは歩くスピードを微妙にあげた。結局、ずっと僕はダイの背中を眺めていた。だがその背中は何も語ろうとはしなかった。親友の考えていることがまったくもって分からなかった。


 家に帰ると、もう寝る時間だった。風呂には入っていたが、妙に目が冴えていて眠れそうになかったので、シャワーを浴びた。水が流れる音を聞きながら、頭の中ではダイに言われた言葉が反芻していた。どういうことなんだろうか。ダイも儀式は無意味だと言った。僕も同じことを考えていた。だが、ダイは僕の悩みはクズだと言う。考えれば、考えるほど意味が分からなかった。ダイはいったい何が言いたかったんだろうか。 

 

 ベッドに入っても、ダイの言葉は頭から離れなかった。だが、考えているうちに、瞼が重くなり、眠りについた。

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