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白狐の自由な旅路  作者: 猫宮るな
4/12

その4。

 O-Hへと初めてログインして来た場所の近くの森でモンスターを倒して回っていたシャノワールであったが、戦っていても消費するものもないので長い間森の中でモンスターを狩っていたのだった。


 現れるモンスターは額に角が生えた真っ白な兎しかおらず、そのモンスターから落ちるドロップアイテムも兎の肉しかなかったのだった。その肉も食べることはしないので貯まっていく一方であった。


 角兎をずっと狩っているシャノワールであったが、倒し方は血喰らいを使った一撃ですべて倒しており、どう見てももっと強いモンスターのところに行った方が効率はいいのだが、自分の身体の変化を確かめるため角兎を相手にやっていたのだ。


 角兎の動きは素早く、攻撃を当てる練習にはぴったりなのである。しかし流石に長時間やり過ぎたのか、


「シャノ、流石に飽きてきたわ」


 という黒姫の言葉でようやく違ところへと行くことにしたのだった。


「でもここがどこで他の場所にどんなところがあるのか全くわからないからね。一回街に戻るか、それとも適当に移動して見るか」


 悩んだ末にそう言えばメッセージで情報をまとめているところがあるのを思い出したので、そこをとりあえず見てから決めることにした。


「みんなのことだし、何かしらの情報はもう載っているでしょ」


 そうして見てみると、シャノワールは予想していた通り、色々情報がすでに書かれていた。しかし書いていたのは一人だけであったのだが、まぁあのメンバーであればそんなもんだろうと思えてしまうのが微妙なところであった。


 そこに書かれていたのは先ほどの町がジャルカという名前で、あまり大きい町ではない。特にこれが有名というものもなく、ただ普通の町であった。町の周りは大きな山脈と森、川があり、豊かで普通に暮らす分には良い町である。


 しかしシャノワールからすると、


「面白味のない普通の町ということか。それなら用はなさそうだね」


 と言った印象になってしまうのだった。まぁ彼女たちは冒険をしにこのゲームへと来ているのでそういった印象になってしまうのは仕方がないことである。それにそういう印象の町だとプレイヤーたちも少なくなってしまうので、商売をするのにもあまり向いていなかったりする。


「他のみんなもあの町には居付くことはないだろうし、私も別の町を目指すことにしようかな」


 他にも書かれていたことはこの場所は地図の端っこであり、それも一つの勢力内の端の方に位置しており、山脈を越えると別の勢力に変わるというそういった場所であった。


 近くに敵同士がいるのであれば、争っているのだから戦闘が近くで起こっていてもおかしくはないのだが、この山脈のおかげでそういったことには陥っていなかった。この山脈にはレベルの高いモンスターがたくさんいるらしく、山脈自体もかなり標高が高いので超えるだけでもものすごく難しいことなのだ。


 それならば違う位置から攻めていった方が良いということで、ここら辺では一切に戦闘はなく平和な町となっている。


 シャノワールはその情報を見ると戻るのも面倒になり、どこか別の町を探すことにしたのだった。移動に関しては歩きでも良かったのだが、


(さっきは黒百合が悲しそうにしていたからな)


 ということで黒百合に乗って移動することにしたのであった。


「黒百合、近くの町まで乗せて行ってくれない?」


 その言葉を聞いた黒百合は、すぐにシャノワールの目の前に現れて、乗りやすいようにし姿勢を低くするのであった。ついでに言うと黒百合の尻尾はすごい速さで振られていたのであった。


「百合はまだまだ子どもね!」


 黒百合の様子を見ての黒姫の言葉は誰も拾うことはなかったが、その大きさも相まって幼く見えてしまう黒姫が言うのかと思ってしまうのだが、それは言わぬが花というやつであろう。


 黒百合に乗って北へと向かったシャノワールであったが、黒百合のレベルが下がり走る速さも落ちたが、それでも十分速いペースで走っていた。ほどなくして森を抜けて次の街へと辿り着いたのだった。歩いて向かっていたらこんなにも早く着くことはなかったであろう。


 見つけた街はジャルカよりも二回りほど大きいようで、いくつか大きな建物があることが外からでもわかった。街を囲うように外壁もあり、中に入らなくともたくさんの人がこの街で生活しているとわかるような街であった。


 まだ街まで少し距離はあったが、黒百合の姿を見て警戒されても嫌なのでここからは歩いて向かうことにしたのであった。


「ありがとね、黒百合。街中ではまた影に入っていてね」


 黒百合はシャノワールを乗せて走れたことで機嫌が良くなったようで、今回は悲しそうなそぶりを見せることなく、シャノワールの影の中へと入って行った。


「さてと、それじゃあいこっか」


「何か面白いことがあるといいわね」


「面倒事は勘弁して欲しいけれどね。そう言えば身分証とか持っていないけど、大丈夫なのかな? まぁなるようになるか」


 そんな楽観的な考えで、街の中へと入るための門のところへと歩いて行った。


 街に入るためには外壁の間に作られている門を通り抜ける必要がある。その門は昼間には開けっ放しになっており、暗くなった夜には門は閉じてしまい街中へは入ることは出来なくなってしまう。


 当然のことながら怪しい人を街中に入れないようにと門番というものがいる。門番は街の兵士の人が行っており、昼の明るい時間は外で立って中に入る人の確認を行っている。夜では近くに門番用の小屋があるのでそこで夜勤をこなしているというわけである。


 シャノワールが門のところに行くと門番に止められたが、幸い他の人はいなかったので並ぶことはなさそうである。


「身分証とかそう言ったものはないのですが、入ることは出来るのでしょうか?」


「もしかして、異邦人の方ですか?」


「異邦人? ああ、そうですそうです」


(そう言えばそんなこと書いてあったね)


 このゲームの中ではNPCはプレイヤーを異邦人と呼ばれるようになっている。元から住んでいるNPCは原住民と呼ぶようにと公式に書いてあったことをシャノワールは思い出した。


 NPC呼びは不快に思われる呼び方のようで、好感度などといったものが下がってしまい色々と不利益を被ることになってしまうのだ。こういった話は他のゲームでも当たり前のようになっているため、シャノワールも当たり前のことだと考えているのであった。


 NPCであろうと一人の人として接しろというわけである。


「そうか。それならこの水晶に手を当ててくれ」


「これは?」


「これは異邦人かどうかを判断してくれるものでな。身分証を持っていない異邦人にはこうして確かめさせてもらっているんだ」


「そうなのですね。わかりました」


 そして言われるままシャノワールがその水晶に手を置くと、水晶の中心部分が明るくなった。


「大丈夫そうだな。それじゃあ入っていいぞ」


「こんなに簡単でいいのですか?」


「ああ、異邦人にはこんな門はあってないようなものだからな。これくらいの確認でいいんだよ」


「なるほど」


(確かに私も簡単に外壁を越えることは出来るしな)


 そう言った理由でプレイヤーたちには簡単な手続きだけで終わるのであった。しかし身分証を持っていた場合はそれを見せればいいだけなので、一番楽なのは身分証を作ってしまうことである。


 身分証にも色々種類があるのだが、今は置いておくことにする。


 こうしてシャノワールは無事に街の中へと入ることが出来たのであった。門番にシャノワールの頭の上に乗っている黒姫のことを一切触れられることはなかったが、門番が異邦人にはおかしな格好をする人がたくさんいるということを知っていたので、いちいち頭に小さな女の子が居ても気にすることはないのであった。


 黒姫が動いたらまた違ったのだが、特に何もすることなく大人しく座っていたので何も起こらなかったのだった。


(ちょうどいいから私が知った情報をメッセージに書いておこうか)


 そんなことを思ったシャノワールは街に入ってすぐのベンチに座って、メッセージに書き始めた。


 書く内容は森がどんな感じだったか、どんなモンスターが出て来るか。その先に街があること、街の大きさや見た目を書いて、中に入る時の身分証のことなどを書いておいた。


 それらの情報はまだ一切書かれていなかったので、シャノワールが書くこととなってしまった。少しは貢献しているところを見せておかないと、色々と面倒なことを言われる可能性もあるので、書いてないのであれば載せておく方が良いのだ。


 協力することとなった八人だが、決して仲良しというだけの関係ではないので、時にはあら捜しのように何かと理由を付けて協力しろと言ってくる仲であるのだった。


「メッセージに書いたことだし、とりあえず街の中を適当に歩き回ってみますか」


「シャノ! 早く色々見てみましょう!」


 ずっと大人しくしていた黒姫だったが、シャノワールのやることが終わったことがわかると、我慢ならないといった感じでシャノワールの耳を引っ張りながら急かした。


「黒姫、耳は引っ張らないでよ。わかったから、黒姫様の仰せのままに行きましょうか」


 シャノワールと黒姫の二人はさらに街の奥の方へと歩いて行ったのだった。



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