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いち
ーーーチリン、と扉を開いた音が鳴る。
「こんにちは、可愛らしい魔女さん」
透き通るような、凛とした声が薄暗い店内に響いた。私はため息を漏らし、その声の主と対峙する。
「また性懲りも無く私の店に来たのね。生憎だけど、人間風情に売るための商品なんてこの店にはおいていないわ。来世で鬼にでも生まれて、それから出直しなさい」
私は一息で言い切り、くるりとマントを翻して店の奥へ戻ろうとした。しかし、声の主は焦る様子もなく、背を向けた私に対して、冷静に話しかけてきた。
「まあまあ、そう怒らないでよ。それに、そんな事を口にはしていても、僕を力ずくで追い出そうとしないあたり、客として認識しているんだろう?」
ーーーチッ
「あは、女の子が舌打ちだなんてよくないよ?」
軽薄な笑みを浮かべてソイツは私に笑いかける。相変わらず、相変わらず腹立たしい。面の皮が厚いのか?神経が図太いのか?きっとそれはどちらも正しい。しかしそれが尚更私の心を荒ませる。