文芸部の部長は変な人
思いついたので書きました。
少し長いと感じるかもしれませんが、最後まで読んでいただけると幸いです
僕の名前は明。
文芸部所属の一年生だ。
この部は創立から存在する伝統深い部活だが、残念ながら部員は幽霊部員を含めて五人しかいない。幽霊部員を除けば僕と部長だけである。
部長について話そう。
部長の名前は高山綾。長い黒髪で、いかにも清楚な外見とはうらはらに。
「はっはっはっ! 私がこの学校のボスよ!」
高校生にもなって未だに中二病が治っていない人である。
「部長は一体何のボスなのですか?」
と聞くと、部長は。
「学校を支配する人間という意味よ。漫画の世界によくある、圧倒的な力を持つ生徒会、いえ教員かしら。主人公たちの意見を否定する存在ね」
「質問が間違っていました。誰にとってのボスなんですか?」
「そんなナンセンスな質問。この学校の全校生徒が、己の人生において主人公なのよ」
「あーはいはい」
ダメだ。会話できているのに、意味が分からない。
「さて、明君。一緒に文芸部を繁栄させましょう!」
そうやって僕の高校生活がはじまった。
部長とかれこれ一か月は共に過ごしてきたが、分かったことがいくつかある。
「ちなみにですが、部長は何が出来るんですか?」
「なんでも出来るわよ。その気になれば、教員を賄賂で動かすこともできるわ」
「賄賂に屈しない人だったらどうするのですか?」
「親か子供を脅迫に使えば良いのよ」
「なるほど」
そんなことできるわけがない。
別のある日のこと。
「高山さん。あの、良かったらこれどうぞ!」
「高山さん。好きです。付き合ってください!」
そんな光景を幾度と見たことがある。
男子からも女子からも好かれているみたいだ。その数はもはや全校生徒と比喩してもいいほどに。
「流石、私。ボスは人望があり、部下から好かれる存在だからね」
部長がそう言ったものだから。
「あんた、今。全校生徒を部下呼ばわりしたぞ」
「それはつまり、明君も私のことが好きということね」
「前言撤回。全校生徒、一人除くとします」
「照れちゃって。私の右腕のくせして」
どうやら部長の中で僕は右腕らしい。
さて、どうやったら部長はまともに戻ってくれるだろうか。
僕はただ文芸部で静かに本を読み、本を書き、そうやって高校生活を過ごしたいだけなのに。
その日は酷い雨だった。
「明君。すごい雨よ。傘は持ってきているのかしら?」
「いいえ」
「なら、これを使えば良いわ」
そういって、僕に傘を貸してくれた。
「部長はどうするのですか?」
「だって、私。この学校を支配する人間よ? 雨ぐらい、どうってことないわ」
「理由になっていません」
「大丈夫。大丈夫。右腕の体調管理もボスの勤めよ」
「ボス関係ないと思います」
「ようは気持ちが大事なのよ」
さいですか。
申し訳ない気持ちがあったが、部長は折れないことを知っていたので、僕は渋々と傘を借りた。
ただ、部長がこれからどうするのか気になった僕は生徒用の玄関に隠れて部長を待ってみることにした。
部長は、誰もいないことを確認したのち、憂鬱そうに雨を眺めて、ため息をついた。
「はぁ、疲れた」
そんな部長の姿を僕は初めて見た。
ちょっと部長が好きになった。
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