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深く沈み込むんだ

藤白がリナヴェルナと暮らし始めてから2カ月が過ぎた。少しずこの世界ーーアズルナーの風習や文化を学んだ。


アズルナーは地球でいう中世くらいの文化レベルだ。蒸気機関に始まる技術革命は起きていない。第1次産業しかないようだ。貴族と平民に分かれ、平民は税を納めている。この辺りは地球と同様だ。


異なっていることは、魔法という概念が存在することだった。精霊との契約を経て使えるチカラのことだ。まるっきりファンタジーの世界だ、藤白は思った。

「それは私でも使えるの?」

「どうかな。魔力は誰にでもあるものだけど、アイダナエの迷子にもあるのかどうか……」

リナヴェルナが言うには、魔力は人によって容量が違う。それを正確に測るには、測魔士に頼むしかないという。測魔士は、魔力を数値に置き換えることができる職業のことで、ある種の方感覚的な才能がないとなれない。リナヴェルナは説明した。

「だが簡易的に調べる方法がある」

「なに?」

「外に行こう」


リナヴェルナに連れられていった先は、森の拓けたところだった。大きな木がなく、短い草が生えているだけだ。まるで円く木だけ刈り取ったようだった。リナヴェルナは腰をかがませ、なにかを拾い上げた。それは枯れて紐状になった葉だった。

「なにこれ?」

「ライカの葉という。元は細かな葉だが、枯れ始めると縒り集まり、1つの紐のようになる」

以外に長い。2メートルくらいはありそうだ。

「端を持て」

言われるがまま、藤白はライカの葉を持った。

「目をつぶって集中しろ。このライカが燃える光景を想像するんだ」

藤白は目を閉じ、燃え盛る紐を思い浮かべた。

「した」

「もっと深く。炎はどういう動きをする? どんな形をを作る? 温度は? 色は? 風は起こる? 深く、深く沈み込むんだ」

言われた通りに炎をイメージした。周囲の音が遠ざかる。目の奥が締まり、暗闇に落ちていく感覚。すると想像の炎が急に大きく動き出し、形を作り始めた。まるで蛇のように蠢き、紐に巻きついていく。動きは藤白に制御できない。炎は意思を持っている。それはもはや蛇ではなく、業火をまとった巨大な龍だった。吹き荒れる炎に応じ、風が巻き起こる。身体が飛ばされそうになる。


私は焼かれるのだろうか。


どこか冷静な自分がいて、龍と藤白を見下ろしていた。それは不思議な感覚だった。私は焼かれるわけにはいかない。藤白はそう思った。私は帰らなけれはならない。龍はいまにも藤白を飲み込もうとしていた。


冷静な藤白は藤白のなかに戻り、意識は統合された。虚ろな目に光が宿り、龍を見据える。燃え盛る瞳が藤白を睨みつける。眼光だけで射殺されそうな睨みだった。しかし藤白はたじろがなかった。そして心の底から、龍に対して命令した。


平伏せ、と。


すると龍は四肢を地面に付け、頭をたれた。そのまま藤白へ頭を向ける。藤白が右手を上げ、龍の眉間に触れた。とたんに龍は掻き消えた。右手のなかに。そこで目が覚めた。


藤白は地面に立ち、想像のなかと同じ右手を上げた姿勢をとっていた。頭の中が痺れていた。いったいどういうことだったのだろう。リナヴェルナを探して視線をさ迷わせた。藤白の上空20メートルほどのところにいた。


「結局なんだったの?」藤白が聞くと、リナヴェルナは恐る恐るといった感じで降りてきた。


「ミヤビ……君……」

「で、私は魔法を使えるの?」

「……使えるよ」

「ふーん、どれくらい」

「世界を支配できるくらい」


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