どちらにせよ見られている
藤白美夜美が目を覚ますと、土の天井だった。上半身を起こすにつれ、思考が働き出す。ここはどこだ?
土で出来た部屋のようだった。形は2対3くらいの長方形で、一方の短辺にベタ付きするようにベッドがある。藤白はそこに寝かされていた。ベッドに腰かけながら藤白は考えた。なぜ私はここにいるのだろう。思い出そうとするが、頭に靄がかかったように記憶は不確かだった。ココアを飲んでいたことは覚えているのだが……。
わからないことは棚上げして、わかることだけを考えよう。藤白は現状把握に努めることにした。藤白は思考の切り替えが人より早かった。
身体に異常はない。全裸ではあるが、乱暴された形跡はない。精神的にも問題はない。記憶があいまいではあるが、そのうち思い出すだろう。しかし服はどこだろう。さいわい、部屋のなかは真冬だというのに暖かく、凍える心配はなさそうだ。が、誰の家とも分からない場所で全裸というのは心もとない。
第一、なぜ全裸だったのだろう。ここが誰かの部屋だとすると、私は運ばれてきたということになる。つまり、その誰かが全裸の私を運び込んだか、運び込んでから全裸にしたのだ。どちらにせよ全裸を見られているわけだ。許すまじ、誰か。別に見られて減るものではないが、ただで見せていいものでもない。私はわりにいいスタイルをしていると自負している。その身体をただで見たからには、なんらかの折檻は必要だろう。覚悟しろ、誰か。
現状把握を終えた藤白は、次にどうすべきかを考えた。1つはドアから出て周囲を伺うこと、もう1つはここにとどまり、誰かが来るのを待つこと。藤白は迷わず前者を選んだ。先ほどから尿意に襲われており、波は静かに確実に押し寄せてきていた。
藤白は足早にドアまで移動し、ノブをつかんだ。ちょうどその時、ドアの向こうから、ノックの音がした。
「あ」
藤白は少し漏らした。