数えるくらいしかいない
風呂に浸かりながら、藤白は昼間のことを思い出していた。リナヴェルナが驚愕の表情を浮かべた、あの儀式。
本来、あの儀式は魔力容量を簡易的に測るものだという。ライカの葉は魔力に敏感なため、魔力容量に比例して灰になる。平均は、リナヴェルナの広げた幅から想像するに20センチから30センチくらい。しかし藤白はすべてを燃やし尽くした。灰になるとかそういうことではなく、塵ひとつ残さなかった。それどころか炎の精霊を形づくった。藤白が想像で生み出したものが、リナヴェルナが認識できるくらいに実体化していたのだ。だからリナヴェルナは空へ逃げた。焼き殺されるかもしれないと思ったからだ。
そんなことができる人間は、この世界に数えるくらいしかいないんじゃないか。
リナヴェルナはそう評した。藤白は、それがどういうことかよくわからなかった。それよりも、この能力は果たして元の世界へ帰るために役立つのだろうか。それが気がかりだった。
「明日、少し付き合ってくれるかな」
風呂上がりの藤白に、リナヴェルナが声をかけた。
「どこに?」
「測魔士のところへ」
「わかった」
やけに聞き分けがいいとリナヴェルナは思った。藤白なら、理由を聞くと予想していた。そしておそらく、ごねるだろうとも。
「きっと街へ行くんでしょ? 情報を集めるのに持ってこい」
「なるほど」
「いいでしょ?」
「まあいいよ。君は顔が割れてないからね」
「まるでリナは割れてるみたい」
「その通り」
リナヴェルナは無表情で応えた。
「私は指名手配されているんだよ」