プロローグ
目の前の猿のような姿をした敵パルチザン級がアサルトライフルの弾を受け赤い血を吹いて倒れる
私はそれを確認してすぐにそこを離れる、直後先ほどまでいたところをビームが通った
スナイパー級の攻撃だろう
私は機体を加速させ、離れたところにいる眼球に銃口と小さな足を取り付けたような敵に近づく
スナイパー級は遠距離から一方的に攻撃できるが、近接武器は持っていない
私は機体の右手に装備されているロングソードでスナイパー級を切り裂いた――――
「目標ノ殲滅ヲ確認シミュレーション終了シマス」
という合成音声とともにシミュレーターのハッチが開いた
私はヘッドセットを置くとシミュレーターから出た
直後、背後から声をかけられた
「お疲れ様です隊長」
「ん?ああ、アルレウス中尉か」
振り返ると二十歳前後の青年、レイリー・アルレウス中尉がいた
「どうぞ」
そう言って中尉は水の入ったボトル渡してくる
彼は私が隊長を務めている新地球連合軍第42独立中隊『青い閃光ブルーフラッシュ』
の中でも最古参に当たる人物でよく気が利く
そして隊長とはいえ年下である19歳という私の命令何も言わずに聞いてくれる人物だった
私は礼を言ってボトルを受け取った
「そういえば隊長は街に行かないんですか?次はいつになるか分からない休暇ですよ?」
そう、一昨日から中隊全員に休暇が出ているのだ
理由はこの前の戦闘でボロボロになった機体の修理のため
そして現在9人しかいない中隊の補充要員来るからだ
「まあな...それに行っても何をしたらいいかわからない」
「そうなんですか?」
「ああ、それよりもお前はいいのか?」
「はい、特に用はありませんし
・・・そういえば明日でしたね
補充要員がくるのは」
「ああ、・・・また、任官して間もない者たちだろうがな・・・」
「・・・・・何人生き残るでしょうね・・・」
「・・・全員だ
全員で生き残れるようにするんだ
私たちの力で」
「そうですね
全員で・・・全員で生き残りましょう!」
「その意気だ
じゃあ私は格納庫に行ってくる」
「はい、では・・・これからもよろしくお願いします
カトル・ラファーム大尉」
「こちらこそ」
そう言い残して私―――カトル・ラファームはシミュレーターデッキを出た
――――格納庫――――
整備兵が行き交い、多くの鉄の巨人、『ハード』が並ぶ格納庫を私は歩いていた
『ハード』それは今から27年前に発動された『プロジェクト・ワン』
と呼ばれる対イニミークス計画、通称ナンバリングプロジェクト、その第一計画によって開発された
人型兵器である
約16メートルの高さを誇るその巨人はパルチザン級との近接格闘戦を想定して作られた兵器だ
今では各国でも研究、開発されている
「おやっさん」
私はその中でも全身が青と灰色で塗装された機体を見上げていた顔に傷のある男性に声をかけた
「おお、嬢ちゃんか」
「どうですか、私の機体は」
「ああ、今ちょうど終わったところだ」
「そうですか・・・いつもありがとうございます
おやっさん」
「なに、いいってことよ
これが俺たちの仕事だからな」
そう言って豪快に笑う
彼とも長い付き合いで私が入隊してすぐにあった人物だ
面倒見の良い性格で誰にでもフランクに接する中隊付きの整備主任だ
「もちろん他の奴らの機体の修理も終わってる
いつでも出撃できるぜ」
「ありがとうございます」
私はもう一度お礼を言い目の前にある青い機体NEFM-14WAを見上げた