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ギャル子、デコる  作者: 金剛寺 兎丸
5/23

ギャル子、お宅訪問する

 

「プリンってさー、実はお城の王様だった系?石油王?石油王なの?」

「ちがう」



 誰だって、案内された先に城があるとは思わないじゃんね。

 マジでビビるわ。





>絵比奏度 05

 ギャル子、お宅訪問する





 お城ってさ、多分女子なら一度は憧れたことがあるんじゃないかと思う。

 お姫様ごっこーとかしたべ?絶対。

 それで姫が大量発生して、皆布やらエプロンやら引きずってドレスーってして、みたいなの。

 絶対あると思う。

 ウチは幼稚園にばーちゃんの風呂敷持ってって、渋い柄だったせいでみよこちゃんはにんじゃねー、って言われてキレた覚えがあるし。

 姫だっつってんだろ。


 …で。でだよ。

 今ウチは、城にいる。

 でもちょっと、ウチが小さい頃に想像してたお城では、ないかもしれない。


 空にどーん!って突きだした塔的な物は白や青じゃなくて藍色…黒?

 丘の上にそびえてるけど、周は見るからにこう…毒の沼地、って感じ。

 お城のデザインは格好いいけど、トゲトゲしてるし、ゴツゴツしてる。悲しいのはウチの語彙力。

 そしてさっきまでは、薄暗い森の中でも空の色がくっきり分かるくらい晴れてたのに、今や曇天。

 ぶっちゃけ、あー…。



「悪者の城っぽくね?」



 この一言に、尽きるのだ。



 悪者っぽい。

 何かすっごく、悪者っぽい。

 少なくとも正義の味方ではなさそー。

 あーでも、プリンもここに住んでるんじゃんね?てことはまあ、すごく悪い所でもないのか。



「プリンさー、ここに住んでるんしょ?何してるん?」

「そうじ」

「へー、あ、じゃーここで働いてるんだー。お城で働くとかかっくいー」

「でへ」



 あ、でも笑い声はあんまりかっこよくはないな、プリン。

 てかフツーに笑った方が良いと思うべ、絶対。


 紫色で、ぽこぽこと良くわからない蒸気を上げる液体が溜まった堀にかけられている、吊り橋的なものをわたりながら、ウチはふっと足元をみた。

 ローファー、どろっどろ。

 ルーズソックスも泥が散ってる。

 …うーわ。

 プリンのここでの仕事が掃除だと知ってしまったがために、余計に気になってきた。

 一応乾いてるから足跡をつけるようなことはなさそうだけど、うーわ。

 最初は内心さんざんdisったけど、プリンいーやつだったし。

 流石に仕事を増やすのはねー、ダチだしねー。



「ここってさー、ちなみに誰が一番なの?」

「いちばん」



 中はものすっごいどよーんとしたくらーい空気だったけど、内装自体は結構凝ってた。

 お城の門を抜けて、玄関まで割とあったし。

 ライオンのドアノブ?とかはじめて見たし。

 プリンは明らかに目的地があるみたいで、そこを右に左にどんどん進んでいく。

 ウチはとりあえず背中を追いかける。




「ほーらー、キング的なの、居ないの?ここお城じゃん?」

「あぅ、…あー、おーさま」

「そう王様」

「しんだ」

「マジかよ」



 思いの外重いネタ踏んだかも。

 隣にならんで顔を覗き込んだ先のプリンは、なんとも言えず哀愁を漂わせてた。

 ちょ、ごめん、謝るからそんな悲しそうな顔(っていっても強面は強面だけど)しないでーって。

 スマイルスマイルー、きゃぴっと行こうよ。

 ごめんって。


 大きい広間の中央階段を上がって、赤い絨毯がしかれた廊下を進んで、ウチらは結構お城の深いところに今居る気がする。

 一応突っ込まずにはおいたけど、下半身透けてる人とか骨だけのやつとか、たまにすれ違う人は人外パラダイスなうだったりもする。

 確かに、ここならプリンも目立たないわー。

 てかあきらかにウチが目立ってるわー。

 もーちょっときれいな格好していたかった。


 ウチがきょろっきょろしてる間にも、プリンの話は進んでた。



「おーさま」

「うん」

「いなくなった」

「つらたん」

「おでたち」

「なえぽよ?」

「はらへる」

「…ん?」



 プリン、めちゃくちゃ真剣な顔だった。



「おうさま、おでたち、めし、くれる」

『………ぉ、……るぞ………』

「え?」

「おうさま、しんだ。となりのぐに、ぼうえぎ、やめた」

『………たるぞ、…こそ、来たるぞ……!』

「ぼうえぎ、やめた。めし、たりな」

「ちょっと待ってちょっと待って、プリン、ウェイト、待って、さっきから二重音声ひどいよ」




 明らかになにか聞こえてきてるんですけど。明らかに声被ってるんですけど。


 具体的には、この廊下の先のやたらでっかい大きな黒い扉の向こう側から、近所の農家の妖怪ばーちゃんの声ににたしゃがれたわりにまじ元気!って感じの声が被って聞こえてるんですけど。

 あ、プリン立ち止まった。

 マジか、ここ目的地か。

 明らかにやばばばなバイブスガチだよ、やめとこーよ。



「ばばさま、げんき」

「えー?」

「なか、はいる」

「…ここ変な声してたところじゃーん。何しにはいんのー?」

「ばばさま、しゃべる。…あいざつ、する」

「えー…」



 渋るウチをぐいっぐいプリンが推す。

 うわこいつ、この短時間でウチに慣れたな。


 流石にプリンと力比べしたらウチがぺしゃんこまっしぐらなので、諦めて、ウチは扉に手をかけた。

 あ、今度はライオンじゃなくて蛇だ。

 趣味わる!



「…えー、たのもー、ウチは」

「今こそ来たるぞ…!我らの新たなる魔王様が…!!!!!」




 扉を開け放った先、部屋の中、祭壇。

 その前に立ってる、ばーちゃんと、若い兄さん。

 ばーちゃんが持ってる杖が指差す先、ウチ。

 プリンをみる。ばーちゃんをみる。ばーちゃん首を振る。

 ウチを指差す。ばーちゃんをみる。ばーちゃん頷く。




「…何をとち狂ったことを言ってるんだ、ばば様」




 若干腹立つけど、そこの堅物そうな兄さんに、ウチも大賛成。

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