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ギャル子、デコる  作者: 金剛寺 兎丸
3/23

ギャル子、スッ転ぶ

 

 本当だったらキャッ!みたいな感じで転びたかった。

 女子力高い感じで行きたかった。

 でも現実は甘くない。

 割と顔面から行った。





>絵比奏度 03

 ギャル子、スッ転ぶ




 何か森自体がじめじめしてるせいか、ぬかるんでた所にローファーがはまった。

 振り向いたりとかしてたのがいけなかったんだと思う。

 こうさあ、片足引っ張られてるみたいな感じで体が傾いて、割と顔面から行った。

 ぎゃ、みたいな、我ながら酷い声が出て、近くの太い木にデコからがつーんとかち当たって。

 ガチ目に割れるかと。マジで。

 てか心持ち的には割れてた。


 で、追ってた奴がついにウチの事を食べようとしてるんじゃないかと、びびりながら振り向くじゃん。

 もうウチはダメかな、最後にスイフェス行きたかったな…ってシリアス全開、心のなかでBGMかかってるし。

 ウチ的にはクライマックス、コムタクとかが引き留めに全力疾走してくる感じのノリな訳よ。

 走ったのウチだけど。


 それで、そしたらさ、プリン、立ち止まってた。

 こっち見てた。

 やべーわ、こいつ顔面から転んだわ、しかも奇声あげてたわー、みたいな。

 めちゃくちゃ哀れんだ顔してた。

 萎えぽよーみたいな。

 めっちゃ見覚えのある顔だったわ。

 具体的に言うと、割とついさっき見た気がする。

 だって転んだの、今日これがはじめてって訳じゃない。

 そう、ウチは思い出した。




“ちょ、アミ、前見ないところぶべー”

“へーきへーき”

“そー言って前に溝に落ちたじゃん”

“水流れてなかったからノーカンっしょ”

“よゆーでアウトだわ”



 帰り道、ニコイチのミサと一緒だった。

 駄菓子屋のゆきばーちゃんとこ寄って、ヨーグルット大人買いして。

 それかじりながら、帰ってた。



“でさー、今週のさー”

“あー、またえー…レストランの話?”

“アストランティスな、ガチ目に絞めるぞ”

“ごめんって。でそのアスト…がどーしたの”

“姫が出てきた”

“姫ー?”



 何か朝から機嫌が悪かったミサのテンションが鬼で、彼氏の五股を報告してきたとき並みだった気がする。

 あれもちょーヤバかったけど。

 とりあえず、せっかく薬局で買ったジェルネイルしてたのに爪噛んでるし。

 うちんとこ、周り田んぼで山で川、なド田舎だから、なかなか入らないのに勿体なーって思ってたような。



“媚びてる系の姫が出てきて、主要キャラが皆惚れちゃって”

“ヤッバ、じゃあ王子も?”

“ころっと”

“…あーでも、姫っしょ、王子が惚れるのは仕方なくね?”

“でもあれ絶対性悪なんだって!媚びまくり!用もないのに絡みまくり!”

“僻みウケる”

“3-C姫川雛世系、ほええー、ひなできないかもー…リツくんーっ”

“リツ様に近付いてんじゃねーぞ粛清、…理解した。鬼ヤバ”

“なー”



 アストランティスは、恋愛系の話じゃなくってーとか、もっと世界を救う壮大な話でーとか、アミのテンションヤバくて。

 ついウチが心底嫌い苦手とする相手の名前を出されたせいで、ウチもテンションが上がって。

 二人してチャリ押しながらヨーグレット一箱半消費して、うぇーい!ってなって、ふらついて。

 体制崩したウチが、すぐそばの農業に使う水がめっちゃ流れてる側溝に盛大に。



 ぼちゃん。



 あのときのミサ、マジで残念なものを見る目だった。

 言ったじゃん、的な。助けるそぶりなかったし。

 自分だってクッソノリノリだったくせに。

 で、反射的に目をつむって、でも少しも痛くないし濡れないしで恐る恐る目を開けたら、森のなかだった。

 そんでもって気が付いたら目の前にプリンが居たんだっけ、多分。

 我ながら繋がりがイミフ。



「おあえ」



 …うわ、ヤバい。

 ボーッと回想してたら、目の前でプリン、しゃがみこんでた。


 どすん、って足音に体が跳ねる。固そうな皮膚に黄色いつぶらなひと、…意外と可愛い顔してない?

 いや気の迷いだわ。ないわ。冷静になれ、ウチ。

 それから、ぐ、っと顔を近付けられて、手を伸ばされて。

 さすがに怖い。首とか絞めるのかな、それとも生きたまま頭からがぶっといっちゃう系?

 どちらかと言えば殺してから食べてほしいけどぶっちゃけどっちもサイアク。

 うげ、手が、額に、



「なかま」

「…え、」

「おあえ、鳴いた。ながま」



 誰がプリンだよふざけんな。

 …どころでヨーグルット食う?





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