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ギャル子、デコる  作者: 金剛寺 兎丸
21/23

ギャル子、と万天落ちし時輝ける(以下略)

 

 ウチ、魔王じゃん?

 一応現段階では、魔王なうじゃん?

 くろぽよは、魔王をやっつけたいわけじゃん?

 ウチ、殺害予告されてる的な?

 やばばば。






>絵比奏度19

 ギャル子、と万天落ちし時輝ける(以下略)






 くろぽよはウチに色んな話をしてくれた。

 くろぽよはめっちゃ強いこと。

 魔族的にすごい偉い存在であること。

 魔王様よりすごいのに、魔王様が上にいるのは気に食わないこと。

 人参は嫌いなこと。

 どちらかといえばペガサス肉が好きなこと。


 ペガサスってあれじゃんね?姫が乗ってたなんか羽が生えた馬のことじゃんね?

 あれ食べれんの?食べていいもんなの?

 割と可愛い顔してたしウチは無理ぽ。



 ウチがくろぽよと初めて会ってから3日、くろぽよは毎日ここに来る。

 ぶっちゃけすぐ飽きるっしょ、的なこと考えてたのに意外と粘り強い。

 確かに粘り気のある身体してるもんね。

 餅つきしてる時の感覚的このもちもち感。

 もちもち、もちもち。



「…お前、そのこねる腕は褒めてやってもいいぞ」

「え、マジ?ちょーうれしー」

「なんかこう、無駄に肌ツヤが良くなるんだよな…凝りも取れたし…手放し難い…本当は城内探索するつもりなのについ来てしまう」

「何そのヤバイ効果、てかウチがそうなりたいんですけど」



 確かにくろぽよ、はじめて会った時よりもっと艶っつやになったよね。

 なんか黒いスライム、って感じだったのがぷるんぷるんになってこう、黒い水信玄餅って感じ。

 太った?とか思ってたのバレたらやばたん。

 …うわ、なんか美味しそう。



「しかし魔王のヤツ現れないな…」

「くろぽよさー、魔王様殺すのやめよーよー…」

「お前、またその話か!言ってやったのにまだ信じてないのか?お前は殺さないから安心しろ」

「いや殺されるんだって、さくっと」

「さくっと!?」



 ウチの言葉に、お前まさか魔王におどされてるのか!?名前でも奪われたか!?ってくろぽよはテンション上がりまくりだった。

 割と今、お前を殺す!って脅されてるんですけど。


 でもくろぽよって、ウチ、てか魔王様?を殺そうとしてる事除くと割とイイヤツなんだよね。

 偉い人だって言ってるし、プリンに聞いてもちょーやばたんに偉い人だって言ってたのに、ウチのこのノリを許してくれるし。

 なんだかんだ愚痴を聞いてくれたり、話も面白いし。

 昨日なんてイヤミを言ってきたドラピッピから庇ってくれたし。



“お前、こんなところで油を打っているとは余裕だな”

“…や、ウチ休憩時間ですし”

“その時間を使って地理のひとつでも覚えようとは思わないのか?全くだから、”



 珍しく中庭に現れたと思ったらいつもの調子で説教かまそうとしてきたドラピッピ。

 膝のくろぽよは見えてなかったみたいで、猫もかぶってないし絶好調。

 ぶっちゃけ今すぐ猫拾ってきてって感じ。

 どこに捨ててきたの。

 なえぽよ。

 で、うちが反応するより先にぽん、ってはねて見せたのがくろぽよだった。



“…おい鬼守、なんだこいつ”

“んー?あ、くろぽよはじめましてな感じ?こっちのオールバックバリバリに決めてるのはドラピッピって言ってー”


“…!ご挨拶が”遅くなり申し訳ありません。我が名はドライトッド・ガリレー、ここの城で魔王様の側近として働くものの1人です、暗黒を統べるものよ”


“遮らないでちょドラピッピ、…って暗黒がなんて?てかウチドラピッピのフルネーム今知ったんですけど”

“…ああ、ガリレーの倅かよ。今こいつは俺様の相手をしてるんだ、問題ねーな?”

“…は、何の問題もございません。世界の深淵を知るものよ、あなたのご意思のままに”

“なんか名前変わってない?”

“今後も休憩時間?だっけか?には借りるからな”

“ご随意にどうぞ、真理に最も近きひと”

“ねえ”



 …あれ、ウチ庇ってもらったけど割と最後までガン無視決められてない?

 気の所為?じゃなくね?

 てかドラピッピも中二病マッハだったし。

 十字架のアクセとかいる?


 …あ、もしかしてドラピッピが黒のスーツに黒シャツ合わせてるのもそれなのかな。

 うわー、今気がついたし。

 ぶっちゃけドラピッピ、いくら顔とスペックが良くても中二病はないわー…。

 いや、否定はしないけど。

 好きにしたらいいと思うけど。

 でも浮くべ。

 ウチの育った田舎なら速攻浮くべ。


 …この場合ドラピッピはぶ、部下に当たるわけだから見守ってた方がいい系?

 ど、どうしよう、二つ名が欲しいとか言われたら。

 ウチ考えらんねーしそーいうの。

 助けてミサ、やばたん。

 …あ!



「…ドラピッピと話してる時にくろぽよってさー、なんかいろんな名前で呼ばれてたじゃーん」

「…ん?ああ、まあ、俺様は凄いからな。名前はいっぱいある」

「その名前さ、一個頂戴って言ったらくろぽよおこ?」

「…はあ?」

「一番気に入らない奴でいーからくれない?」

「…お前、正直者にも程があるぞ」



 ぶっちゃけさー、名前思いつかないなら、もらっちゃえばいいんだと思うんだよね。

 ドラピッピがそーいう趣味なら、お前は今日からなんちゃらの名を継ぐがいい…みたいな感じで行けるくね?

 手抜きじゃないし、エコなだけだし。

 ドラピッピだって鬼盛りのドラピッピとか嫌じゃん。

 くろぽよも名前はいっぱいいらないじゃん。

 双方しあわせ。

 あ、ウチ天才じゃね?



「…そうだな、まあ、いいか」



 くろぽよはもっちもっちと二三回はねて、ウチに向き直った。

 赤い、宝石みたいな目がキラキラしてる。

 やばいわー、おめめ超ぱっちりぢゃん。

 カラコンなしで赤とかやばたん、てかこのサイズに合うカラコン無さそう。



「じゃあまあ、よさそうなやつをやろう、感謝しろよ」

「わーいくろぽよありがとー!マジ神!やばばば!」

「でもって魔王から俺様に主人を変えるといい!」

「あっそれはいいでーす」

「…、…。手を出せ」



 …手?

 何?名前書いた紙でもくれんの?ぶっちゃけ教えてくれたら十分なんですけど。

 でもまあ、長かったら忘れるか。

 ウチは素直に手を差し出した。

 くろぽよって、どういう仕組みかわからないけど、このもちもちボディから何でも取り出してくるからすごい。

 絶対入らないだろ、ってのも出てくる。

 本人曰く、食べてるんだって言ってたけどそこはわからない。

 え、つまり出してる時って吐いてるの?

 リバース的な?



「…よし」



 くろぽよはやがて、うちの手をもちゃ、っと半分ほど飲み込ん、え?

 え?ウチの手飲まれてない?

 ねえ飲まれてない?

 片手が黒いボール状になってるんですけど。

 痛くないけどナニコレ。

 え?


 真っ白になったウチをよそに、しばらくしてくろぽよはぽん、っとウチの手を吐き出した。

 出された手の甲には、なんかシャレオツな黒い模様。

 紋章?



「じゃ、お前には万天(ばんてん)落ちし時輝ける御名(みな)の者、の名前をくれてやる」

「は?」

「でも普通名前が欲しいなんていうか?お前どんだけずうずうしいんだ、俺様じゃなければ死んでるぞ。…俺様は!お前を買ってやってるからいいけどな!ふん!」

「…は?」

「しかし名前を譲り渡せること、よく知ってたな。深淵の書にも書いてなかったってのに…やっぱりお前にもそれなりの才覚があるのか?魔力ゼロって感じの割にやるじゃねえか」



 あ、これウチが思ってる名前じゃないやつだわ。

 やばばばばば。

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